あるライターの方が川上村を来訪されていて川上村の山守らと、よもやま話でのこと。
私が何となく思っていたことを、A氏がス~っと言葉にされました。
「農林漁業の6次産業化ということについて思う事があるんですよ。付加価値化、サービス化して儲けていこうっていうことに関しては、何も悪いことではないし、そういう時代になったのもよくわかります。ただ、それを認めているということは、そもそも素材価値を認めていないということでもあり、本当に素晴らしい野菜、本当に素晴らしい、木材、それはそれで、素晴らしい一次産業としての商品力であり、何も、加工(2次)・サービス(3次) を自ら(あるいは連携して)行う必要はない。素材生産者自らが6次化というのは、負けを認めることにもなる。1次産業自体で勝負することから逃げることでもある。殊に、林業であれば、時流(マーケット)に合わせた、山づくり、木づくり、育林&造材こそ林業の旨み。よい木を創ろう。それが山側にきちんと利益が落ちることであり、6次産業化を田舎にいて全部を自前でやればいいということだけではないと思うんだけど・・・。」
とはいえこういう声もあるでしょう。林業は、農業、漁業と大きく異なり、素材価値だけでは、一般の方々が手に届くところまでの利用価値までは高められません。また物流を考え得ると、如何に川上(山林)側で、歩留りをよくし加工力を高めるかはビジネスのキーとなり、6次化までではなくとも、地域に応じた1.5次加工(例えば、乾燥まで)とか、2次加工の状況で勝負できる、価値訴求も重要です。しかしながら、時流に合わせた商品を作ろうとし、その加工力を高めようとすればするほど、如何に素材力(安定品質、安定供給)が大事かは、加工者側にとっては極めて重要なわけですし、それを一般の方々に感覚で理解してくれるような商品提供をしていくことが重要となるでしょう。ゆえに、改めて、林業に置ける素材力とは何かをA氏は説いていたのです。
続けてA氏はこういいました。
「さらにいえば、日本の森を守るとかデカいことを、言う人は信用できない。あくまでも立方あたり1000円高く売ることだけでいい。あくまでも自分の関わる山のことだけのことでいい。それができずに、何を語るのか。僕らは林業を崇高なものと思っているけれど、だけどそこを偶像化して、遠い世界のものとして過大に美化するものではなく、あくまで一本でも高く、儲けることが日常にある。だから、その先の製材所、加工品が何を求めていて素材のどこで勝負するのかを日々考える。それが林業。」と仰るAさんの言葉を聞いて、
~素材が時代を創る~というTORAYのメッセージを思い出しました。
私はこのように語らう時間が好きで、学生時代に24才、地域づくりインターンで、奈良県川上村に来て、27歳まで、ぷらぷら林業家を訪ね、自由に歩いてきたことを思い出しました。こういう方々の話は、いつもワクワクする。こういう人たち(すなわち自分が出会った人)と、と仕事をする、未来を創る。今日約束して、明日やる。それの繰り返し。で、最近それが自分の中でも怠っている部分があり大いに猛省したシーンもありました。
もう一度、自分に厳しくいきたいと思います。
<問い>
・6次産業化は、1次産業(素材業)の諦めか?
・時流(マーケット)に合わせた育林&造材こそ林業の旨みであろう。
・俺が日本の○○を!よりも、私の顧客、幾分かの利益。
皆様、いかがでしょうか。
(地域再生・森林再生コンサルタント古川大輔日記 2015.05.12より編集)
代表取締役 | 代表コンサルタント 古川 大輔 Daisuke Furukawa
twitter: @daisukefurukawa
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地域と森林林業専門コンサルタントとして全国の産地を飛び回ること十数年。会社のミッションは、森林や林業、山村の問題解決ではなく「価値創造」です。そんな志を共有できるお客様・そして未来のビジネスパートナーとの更なる出会いを目指して、古川の考えや、先輩方から教わった学びを言葉にお届けします。