広葉樹の森を巡る現地研修会、2日目の様子をお伝えします。

 

【1日目:24日(火)】

■オーダーメイドの集成材メーカー

最初に訪れたのは、町内で集成材製造を手掛ける日本木材工業様。
国産材、輸入材を含め多くの樹種を取り扱い、
オーダーメイド、小ロット受注生産で造作材を製造しています。

製品にする前には、職人による材料の見極めが欠かせません。

フィンガージョイントで接着していきます。

手作業による、小回りの利く工場をいかして、
こんなチャレンジも。

近年は地域材の需要も高まっているそうで、
これから国産広葉樹をいかした製品づくりにも期待が高まります。

 

■FSCの北の砦、製紙用チップ工場

次に、町内で生産される広葉樹の90%以上を消費する、製紙用チップ製造工場、

新北菱林産株式会社(岩泉工場)へ。

視察している間にも、
次々に、トラックやフォワーダ(地元の人はTW(テーダブ)と呼んでいます)で
広葉樹原木が運び込まれてきました。

岩泉町産のFSC認証原木を使用しているため、
出荷されたチップは、最終的にFSCミックス製品として、
ティッシュペーパーや印画紙などになります。

チップ⇒パルプ⇒紙へと。

この丸太一本から、ノート約1冊ができます。

FSC認証のティッシュ、箱の裏には岩泉町の地図も!

「岩泉町の木からできたティッシュと知ったら、大切に使う!」
参加者のみなさまも、普段使っている紙の源流を知り、感銘を受けていました。

地域の林業を支える大口需要としての
製紙業の重要性を再認識しました。

 

■FSCの北の砦、製紙用チップ工場

岩泉町内最後の視察先は、
製材、パレット加工、おが粉、堆肥製造までを手掛けるトーア木材株式会社様。

針葉樹のみならず、冷凍庫でも割れにくい広葉樹パレットも製造。

きのこ栽培の菌床用のおが粉は、育てるきのこの種類に応じて、
広葉樹の中でも細かく樹種が分けられています。

さらにはニーズに応じて、おが粉の目の細かさも数種類あります。

 

針葉樹、広葉樹ともに、木を最後までいかしきり、

多岐にわたるニーズに応え、商品を生み出す。

 

西日本などで一般的な製材所とは異なる、きめ細やかさに、
参加者の皆様も驚いていました。

 

■驚くべき多様性、広葉樹の原木市場

矢巾町へ移動し、最後の視察先は、
盛岡木材流通センターです。

東北地方では、針葉樹は大型工場への直送化が進むいっぽう、
広葉樹は多様なニーズがあり、入札で取引されています。

全国でも有数の広葉樹の市場。

ちょうど市日の前ということで、非常に多くの原木が集まっていました。

ほかの市場ではなかなかお目にかかれない樹種に、

参加者は興味津々で、用途や価格について質問していました。

 

一口に「林業」や「木材」といっても、日本国内でも多様性があり、
奥深い世界であることを実感します。

また隣接するアカマツの市場も見学。

「南部赤松」といわれ、日本有数の地松のブランド産地ならではの、
貴重なアカマツの原木を見ることができました。

 

今回は、広葉樹をテーマに二日間の研修を行いました。

現在の人工林資源や政策から、どうしても針葉樹にばかり目が向きがちな日本の林業界ですが、
広葉樹資源も着実に育ちつつある中、

今後、環境に配慮した森づくりや、海外との資源獲得競争、そして木材産業としての差別化を考えれば、
「日本林業の未来」としての広葉樹資源に視野を広げ、育林や生産体制の整備に取り組むことは、
将来の林業の発展にかかせないものでしょう。

 

今後も弊社では、林業木材業に対する視野を広げ、可能性をさぐる研修会を開催して参ります。

明日のビジネスと、明日の森づくりのために、学びを実践に変えながら、邁進して参りましょう!

 

最後に、お世話になりました岩泉町の皆様、盛岡木材流通センター様、参加者の皆様に、

感謝の念を述べ、締めくくらせていただきます。

 

誠にありがとうございました!

Posted by admin on 火曜日 11月 24, 2015 Under pick up, すべての記事, 国産材ビジネスセミナー(東京), 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪), 講演&研修 報告

今年で7回目となりました、

経営実践研究会×国産材ビジネスセミナー 合同現地研修会。

11/23-24の二日間、今回は「広葉樹林業」をテーマに、岩手県を巡りました。

 

■岩手県の林業

岩手県の素材生産量は、

北海道、宮崎県につづく全国3位(1,370 千㎥(H26))であり、

アカマツの生産量は全国1位(191千㎥)

カラマツは第2位(322千㎥)

広葉樹第2位(280千㎥)

を誇っています。

 

ボリュームとしても多く、
また全国的に生産量の少ない樹種を多く産出しているのが特徴です。

 

■岩泉町

日本三大鍾乳洞である「龍泉洞」や、酪農で知られる岩手県岩泉町。

森林率93%を誇り、そのうち60%以上が広葉樹に覆われて、製紙用チップを中心に広葉樹の素材生産が盛んにおこなわれています。

その森林で、2003年にFSC(R)森林認証(グループ認証)を取得し、
現在、森林認証と広葉樹をいかした、新たな地域木材ブランドの構築に取り組んでいます。

 

町のシンボルマウンテンは、「宇霊羅(ウレイラ)山」。

アイヌ語で 「霧のかかる峰」という意味で、
そびえたつ岩肌と、たなびく雲が神秘的な光景です。

 

今回の研修会では、総勢24名のメンバーで、

この岩泉町および広葉樹の取り扱いが豊富な、
盛岡木材流通センター(岩手県森林組合連合会)を訪ねました。

その様子をお伝えします!

 

【1日目:23日(月祝)】

■60年生カラマツ林&広葉樹林

盛岡駅からバスで移動すること1時間半、
岩泉町の小川地区にある、カラマツ&広葉樹施業をされている、
南澤氏(林業会社経営)の森林へ。

冬になり、カラマツも広葉樹もすっかり葉を落としていましたが、
すっと伸びる樹形がよくわかります。

 

「自分は72歳、このカラマツ林は60歳、干支が同じです」

という南澤氏が手をかけて育成されてきたカラマツ林は、
樹高35mにまで成長しました。

順調に生育した理由の一つが、周囲の広葉樹林。

これが防風林の役目も果たしています。

 

広葉樹は植林はせず萌芽更新を利用しながら除伐を行い、
目的とする樹種を残して育てるという施業を行われています。

林床では以前、葉わさびの栽培をしたこともあり、
どこからか種が運ばれてきた、クワの木などが見られました。

(クマの糞から芽生えたのかもしれません?)

 

明るい広葉樹林やカラマツ林の空間を
多面的に活用した林業の可能性を、垣間見ました。

「目標は、100年生のカラマツに育て上げること。
需要は変わっていくので、市場も見ながら、お金に変えていきたい」

 

補助金や政策に寄らない、
コンセプトを貫く林業経営の在り方に、ヒントがあります。

 

■龍泉洞とFSC認証材

ここで観光タイム。
岩泉町に来てかかせないスポットが、日本三大鍾乳洞の龍泉洞です。

あの、宇霊羅山のふもとにあります。

 

実は、この龍泉洞の床板は町内で生産された
FSC認証カラマツが使用されています。

よく見るとあちこちに、FSCマークが・・・!

 

地域の観光産業をも支える、
林業・木材産業の存在感を感じていただけたでしょうか。

入り口の看板でもFSCをアピール。

 

参加メンバーで、記念撮影!

 

■岩泉の森づくり100年ビジョン

タウンメッセージに「森と水のシンフォニー」を掲げる岩泉町。

岩泉町役場林業水産室の今村氏より、町として取り組んでいる森づくりのビジョン、
そして計画中の地域木材商社についての構想をお聞かせいただきました。

 

森の恵みをモチーフにしたシンボルマークを掲げ、
広葉樹施業の研究と実践、
需要と生産のマッチングに取り組まれています。

参考URL http://iwaizumi-forest.jp/

今回の研修は、岩泉町役場様の全面的なご協力で開催されました。
引き続き、役場の皆様にもご同行いただきました。

 

■FSC認証取得の地域工務店

次に訪れたのは、東北では初めて、
建設業としてFSC(COC)認証を取得した、
株式会社西倉工務店です。

認証材をはじめ、地元の木材にこだわって施工されてきました。
倉庫には、近隣で生産された杉やカラマツ、
土台にはクリなど、適材適所に利用されています。

建築のみならず、多種多様に活用できるのが、木材の面白さです。

枝を利用したノベルティなど、
木をいかしきる、そして楽しさを伝える取り組みを拝見しました。
震災復興で人手も材料も足りない状況とのことですが、
地域に技術があり、地域で木材が手に入ることの重要性を改めて感じました。

 

■300年生きる家具を

次に、おもに岩手県産の広葉樹を使って
家具製造を行っている、岩泉純木家具有限会社を訪問しました。

製材業から創業されたという工房では、
一つ一つ、職人の手で作られる家具の製造行程を見学しました。

樹種により異なる特性を熟知し、
お客様のライフスタイルや嗜好に合わせて、
適した樹種や加工を提案されています。

工房に掲げられた経営理念に基づき、
木の命をいかすものづくり。
若手の職人も育成されています。

新調したばかりという作業服には、
岩泉の森のシンボルマークが。

これからは、町内の広葉樹をつかった家具づくりにも
積極的に取り組まれていきます。

 

■講演会:岩泉の明日の林業をつくる会

岩泉町内の林業木材業関係者でつくる
「岩泉の明日の林業をつくる会」との合同勉強会を開催し、
研修参加者と合せて総勢60名以上の参加となりました。

はじめに、基調講演として株式会社ワイス・ワイス代表取締役の佐藤岳利さまに
ワイス・ワイスの取り組みについてご紹介をいただきました。

今回、佐藤氏には特別ゲストとして、
社員様とともに、二日間の研修会にご参加を頂きました。

現在、国産材や顔の見える木材での家具を数多く手掛けられている佐藤氏は、
実は7年前にも岩泉町のFSC認証林を訪れていました。

岩泉町が新たな挑戦を始めたタイミングでの、再会という形となりました。

 

岩泉町を訪問した2008年以前にも、家具や店舗空間を手掛けられてきた佐藤氏。
しかしその背景にある違法伐採や木材加工の労働環境を目の当たりにし、
これからの方向性を模索している中での、岩泉町との出会いでした。

その年を境に、顔の見える木材と作り手に特化した商品開発、
製造工程や素材仕入れの切り替えに取り組んでこられました。

結果として、生産者、販売者、顧客との良好な関係が生まれ、
利益率も高まっていった実績をご紹介いただきました。

これからの時代の
顔が見える製造、流通の可能性を大いに感じるご講演でした。

 

次に、岩泉町の森林認証取得をサポートされた
アミタ株式会社の小川直也氏より、FSC認証とは何か、
改めて基礎知識についてレクチャーを頂きました。

戦前までは、地元の木を調達して建築や燃料に使うのが当たり前でした。
しかし木材流通が発達するにつれて、調達の利便性は向上したものの、
トレーサビリティが脆弱になってきたという背景があります。

どこから来た木なのか、誰が加工した木なのかが分かれば、
ユーザーは愛着を持って大切に使う。

誰が使う製品なのか分かれば、作り手も想いを込めて作る。

その顔が見える流通が難しくなった現在において、
FSC認証をはじめとする森林認証は、
トレーサビリティを証明し、流通をつなげるひとつのツールにもなりうる。

森林の適正な管理のみならず、
流通をつなぐ効果や可能性についてご教授頂きました。

 

■懇親会

この現地研修会は、
開催地の林業木材業を肌で感じ、
新たな知識や経営のヒントを得るのみならず、

現地の方々や参加者どうしの交流も、大きな魅力の一つです。

 

勉強会の後は、恒例の懇親会。
こちらも出席率が高く、60名あまりの大宴会となりました。

地域の特産品である岩泉ヨーグルト等も堪能しながら、
参加者のスピーチが続き、大いに交流を深めました。

初日から密度の高い研修となった研修会in岩手。
2日目につづく・・・

 

Posted by admin on 月曜日 11月 23, 2015 Under pick up, すべての記事, 国産材ビジネスセミナー(東京), 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪), 講演&研修 報告

 

ブラック、グリーン、ブルー、ブラウン・・・
絶妙に色が混じり合い、まるで宝石の原石のようですが、
これも実は、木材(黒柿)です。

挽いてみて初めて分かる、森の中にころがる原石。
気候や土壌、DNA、様々な条件が重なって出来上がる逸品です。

育った森の景色まで、見てみたくなるものです。

 

Posted by admin on 月曜日 11月 16, 2015 Under pick up, すべての記事, ちいきのgraffiti~写真集~

 

経営実践研究会[大阪]×国産材ビジネスセミナー[東京]
合同現地研修会2015 開催決定!!

※定員に達しましたので、募集を締め切りました。ありがとうございました。

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2015年11月23日(月祝)-24日(火)IN 岩手県
“日本林業の未来がここにある”
針葉樹だけじゃない、「広葉樹林業」を見に行こう!!

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毎年恒例の現地研修会、第6回となる今年は初の東北、岩手県に決定!
将来の日本林業のスタンダードとなり得るか?
今回のテーマは「広葉樹林業」。

国内でも数少ない広葉樹林業、そしてFSC森林認証を活かした
森づくりに取り組む、岩手県岩泉町を中心に訪ねます。

川上から川下まで、多様な主体により展開される「トータル林業」とは?

 

■視察先
①岩手県岩泉町
・岩泉町の森林100年ビジョン
・針葉樹、広葉樹がおりなす風景
・広葉樹が集まる、製紙用チップ工場
・木を活かしきる、パレットからおが粉まで
・多種多様な樹種を扱う、集成材メーカー
・FSC認証取得の地域工務店
・東京でも人気、木をいかす家具工房

*現地プレーヤーとの交流会、勉強会あり!
*日本三大鍾乳洞の「龍泉洞」、絶品ヨーグルトもあります

②岩手県盛岡市
・盛岡木材流通センター
豊富な広葉樹取扱い量を誇る原木市場へ!

 

■日程(予定、訪問先の状況により変更の可能性あり)

【11月23日(月祝)】

9:30いわて花巻空港  または 10:00盛岡駅 集合

岩泉町内カラマツ人工林 視察

龍泉洞観光

岩泉町役場・森づくりビジョンの説明

㈱西倉工務店 視察

岩泉純木家具㈲ 視察

町内事業者と合同勉強会 *町外家具メーカーのゲスト講演予定

懇親会

宿泊(ホテル龍泉洞愛山)

 

【24日(火)】

08:00 出発

日本木材工業 視察

新北菱林産㈱ 視察

㈱トーア木材 視察

昼食

(移動)

盛岡木材流通センター 視察

17:30盛岡駅 または18:00いわて花巻空港  解散

※集合・解散場所等は、ご希望に応じて調整いたします

 

■費用

受講料 21,600円(税込)
※交通費、宿泊、飲食費等の実費は別途ご負担ください。

■定員 20名(先着順)

■お申込み
1)お名前
2)ご所属
3)携帯電話番号
4)メールアドレス
5)現地までの交通手段(予定)

を明記のうえ、info@chiikino.jpまでお送りください。

※定員に達しましたので、募集を締め切りました。ありがとうございました。

※申し込み〆切: 11月2日(月)
※定員を超える場合、経営実践研究会および国産材ビジネスセミナーの受講生を優先的に受付します。ご了承ください。

※航空券等、集合場所までの移動チケットは、ご自身でご手配ください。

 

参考:

◎行き
(航空機)
7:35 名古屋小牧 ⇒ 8:45 いわて花巻 FDA351便
7:55 大阪伊丹 ⇒ 9:20 いわて花巻 JAL2181便

(電車)

7:36 東京 ⇒ 09:52 盛岡 はやぶさ3号
6:04 東京 ⇒ 09:19 盛岡 やまびこ41号

◎帰り
(航空機)
18:45 いわて花巻 ⇒ 20:20 大阪伊丹 JAL2190便
18:50 いわて花巻 ⇒ 20:15 名古屋小牧 FDA358便

(電車)
17:50 盛岡 ⇒ 20:04 東京 はやぶさ28号
18:15 盛岡 ⇒ 20:32 東京 はやぶさ30号

 

★参考リンク
・岩泉町 http://www.town.iwaizumi.iwate.jp/
・IWAIZUMI forest http://iwaizumi-forest.jp/
・龍泉洞 http://www.iwate-ryusendo.jp/

 

 

※過去の現地研修のレポートはこちらから
・2014年 九州筑後川流域・日田地域 https://chiikino.jp/?p=3508
・2013年 飛騨高山 https://chiikino.jp/?p=2161
・2012年 四国林業遍路14箇所巡り https://chiikino.jp/?p=948

Posted by admin on 月曜日 11月 2, 2015 Under — セミナー、研修、講演のお知らせ, pick up, お知らせ, すべての記事, 国産材ビジネスセミナー(東京), 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪)
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