本当は自信があるのに、ついつい弱気になってしまう。ビジネスの営業において、何かを人に薦めるのにおいて、何においても相手の気持ちを優先しすぎることで、弱気になってしまう。お客様に逃げてもらいたくないから、ちょっと引いてしまう。自分の伝えたいこと、自分の強引さがないがゆえに、確固たるゴールへと近づけなくなることが大いにあります。恋愛も似ています。ある打合せで感じたことがありました。お客様(お施主様)には、迷っている背中を押して欲しい瞬間が必ずあります。あるいは、ゴールまでの摩擦(阻害要因)を取り除いて欲しい瞬間もあるでしょう。営業では、「背中を押す」と「摩擦を取る」、この2つの作用とバランスが一番難しいのです。
例えば、相手に対して慎重になりすぎて自社の「欠点」を必要以上に多く伝えてしまえば、顧客の「夢」は小さくなってしまいます。まずはじっくりとヒアリングを重ねて、お客様の決断を阻害している摩擦が何なのかを知り、相応しい説明をすることで、予算(価格)以外のお客様の摩擦(購買を拒む阻害要因)を取ることです。例えば、決済権限が別の人にある。例えば、合意形成のプロセスに困難がある。例えば、世間の声が怖いとか。それをよくきき、その阻害要因を取ってあげる聞き手になることで、一歩前に進むのです。そしてその後こそ、グっと背中を押して決断を促すタイミングを計るのです。この順序はあらゆる営業本に書いていますが、“いつ”が相応しいタイミングであるか書いていないものです。当然ながら、自分と顧客との「空気」でしか分からないからです。しかし、やはり背中を押すためには、直近の強引さも大切なのです。まずは、ヒアリングを重視し、阻害要因(摩擦)を取る行程を経て、そして、その後”弱気じゃいかんのですよ!”と背中を押すこと。今後の営業支援の内容に盛り込んでいきたいと感じた、営業打合せからの学びでした。次は、背中を押すとはどういうことか、お伝えいたします。
ある化粧品売り場での出来事
営業について「背中を押す」と「摩擦を取る」の話をしたところ、知人のAさんからメールをいただきました。それは、彼女が顧客として化粧品売り場へ買い物に行った時のエピソードです。
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「ちょうど昨日、弱気の営業を受けました。化粧品を買いに行ったのです。化粧水と乳液の商品サンプルを使って、まぁまぁ好印象だったのですが、“これは買い!”とまでは思わなかったため、売場のビューティーアドバイザーさん(以下、BA)に相談して決めようと化粧品屋さんに行ったんです。
知人Aさん「先日のサンプル、良かったです。これにしようかなーと思うのですが、もし他にオススメ商品があったら、そちらも試してみたいんですけれど…」
BA「ありがとうございます。他を試していただいても、コチラをご購入いただいてもどちらでもいいですよ。お客さん次第です。」
知人Aさん「・・・」
う~ん、これは相談した甲斐がなかった!サンプルが良かったんだから、購入する背中を押してくれるとか、他にどんな悩みがあって引っ掛かっているのか相談に応じてくれるとか、何等かのアクションが欲しかったです!どうせなら、高額商品のサンプル渡して、「夏のダメージを受けているようですね。こちらの商品は、保湿はもちろんのこと、ダメージを補修して肌のツヤが戻りますよ!」等と言ってくれたら、試してみて「高いけど、こっちのほうが良かった、買います!」と、高い商品を買ったかもしれないのに。結局、買うのをやめようかと思いましたが、その場で一人で冷静に考えて、前回サンプルをもらった化粧品を購入しようと、自分で決断しました。
お客様にとっての先々のメリットを考えれば、何等かのアクションが取れるものです。お客様自身よりも、商品に対する知識を持った営業サイドの方が、対お客様へのメリットを把握しやすいですよね。それならば商品を購入することで顧客にメリットがあることを伝え、結果的に顧客が商品を購入し「買ってよかった!」となる関係性こそお互いにハッピーであり、それが営業の目的ではないでしょうか。営業に限らず、人間関係は、何でもそうかもしれません。自分のアクションがきっかけで、相手の未来をハッピーにできたら、自分もハッピー。勉強になりました。ありがとうございました!
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化粧品売り場で顧客体験した、知人Aさんからは、こんな返信をいただいたのでした。
営業は、「○○を押す、××を取る」のタイミングが大事
購入への背中を押すのは、誰のため? 自分の営業実績を上げることも、もちろん大切です。しかし、顧客のニーズに応じて、相応しい強みを持つ商品を紹介していけば、お客様も営業サイドも双方が幸せになれるということ。せっかく持っている商品知識を活かせば、営業とは、自分のアドバイスを通じてお客様に喜びを届けられる、楽しい仕事なのです。
(地域再生・森林再生コンサルタント古川大輔日記 2007.10.16より編集)
代表取締役 | 代表コンサルタント 古川 大輔 Daisuke Furukawa
twitter: @daisukefurukawa
blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記
新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前支援、高野山・高野霊木プロデュース、経営実践研究会の実施等を行い、全国の林業木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山金剛峯寺境内案内人。