数日でぐっと秋を感じさせる涼しさになり、晴れ間から差し込む陽の光の温かさが心地よい、10月23日(水)。

長野県松本市は信毎メディアガーデン1階ホールにて、

一般社団法人ソマミチのトークイベント

「松本で生きる。松本をつくる。~山と暮らす、その誇り。~」を開催しました。

 

 

 

 

各地から100名以上の来場者とカラマツで彩る会場

当日は、地元松本の方だけではなく、関東圏など広くから120名程の方にご来場いただきました。

事前にご予約いただいた方、既にソマミチ会員になっていただいている方はソマミチ手袋の特典付き。

今後も森林、屋外イベントがありますので、その際には皆さんと一緒にこの手袋を付けて作業したいですね。

(早速、本ブログ最後に、ツアーのお知らせもあるので是非チェックしてください。)

 

 

また、当日の会場にはソマミチメンバーの活動を代表する製品やパネルの展示を行っていました。

 

↑ソマミチの理念、メンバー、活動風景、施工事例等をまとめたパネル

 

 

↑グリーンウッドワークの作品

 

 

↑カラマツT&Tパネルの壁材

 

 

↑松本市産アカマツのヘリンボーンの床・壁材

 

 

↑アトリエm4の前田大作さんが手掛ける家具

 

実は、今回の展示の他にも、信毎メディアガーデンの1階フロア内に普段から設置している什器は、ソマミチの提案でカラマツが使われているんです。

 

 

11名によるトークリレー

それでは、当日のトークの様子を少しだけ、ご紹介。

トークイベントの内容の詳細はソマミチのFacebookページにて、当日のライブ映像が観れますので興味がある方は下記リンクからご覧ください。

https://www.facebook.com/somamichi/videos/2474706712759381/

 

 

まず、冒頭に弊社古川より、イベントタイトルにもある「松本に生きる、その誇り」をテーマにお話をしました。三つの「ガク都」(「岳都」「楽都」「学都」)で生きる、その誇りとは何か、らしさとはなにか。参加者の皆さまにも考えていただくオープニングトークとなりました。

 

 

 

企業組合山仕事創造舎の香山さんからは地理的条件から松本の自然、カラマの利用の歴史などをお話しいただきました。日本の中でもカラマツは北海道、岩手、長野を中心に分布しており、特に長野県の気候は良質なカラマツが育つ環境にあり、昔は電柱用として育てられてきたカラマツは、現在は一部建築材にも使えるまで育っていることがよく分かるお話でした。

 

 

林友ハウス工業株式会社の竹腰さまからは、ソマミチT&Tパネルを開発するまでの経緯やメリットをお話しいただきました。カラーバリエーション豊富なT&Tパネルですが、カラマツは国産材の中でも塗料の色ノリが良いというメリットを活かして誕生しています。

 

 

アトリエm4の前田さまからは、ご自身が制作される家具のお話や工房、市内の店舗内装のデザインのお話をしていただきました。なんと、自邸兼工房も全てカラマツで建築されており、家具から建築まで、幅広いカラマツ利用が強く印象に残るお話でした。

 

 

山の辺建築設計事務所 の宮坂さまからは、南相木村営住宅など最近の松本周辺での施工事例をご紹介いただきました。前田さんのカラマツ家具を展示した内覧会の様子などもご紹介いただき、顔の見える関係でのカラマツの活用、暮らし提案の姿が、会場の皆様には見えたのではないでしょうか。

 

 

♯classicの山本さんからは、神奈川の湘南エリアでの施工事例を元に、湘南での暮らし、家づくりにおいて潮風にも強く、デザイン性にも優れたカラマツの外壁材がお施主様の一つの選択肢として選ばれていることを紹介いただきました。海が無い長野の木が、サーフィンなどマリンスポーツも盛んで普段の暮らしでも海と近い湘南の暮らしに溶け込んでいる様子からカラマツの可能性を感じていただけたのではないでしょうか。

 

 

設計事務所ランドシャフトの堀越さんからは、ソマミチのこれまでのツアーやイベントの様子をご紹介いただきました。なぜ、ソマミチがイベントを行うのか、イベントを通して何を伝えたいたいか、会場の皆さんに知っていただけたのではないでしょうか。

 

 

 

ソマミチの理事メンバーの他にも、
ソマミチ理事のお施主さんで実際に、カラマツを店舗などで利用されている
明神館(松本市内にある温泉宿)の斎藤さん、
村山人形店(会場近くにある人形店)の村山さんからは、
ご自身の事業の内容に合わせ、どのような経緯でカラマツを使うに至ったか、
実際にカラマツを使った内装や什器の色合いや経年変化の良さなどをお話しいただきました

 

 

 

最後には、代表の原さんから、

「本日、皆さんのクロストークで紹介した内容は、ほとんどが松本の風景です。
ここにあるもので、このようなマチづくり、地域づくりが出来る。
これは日本だからこそ可能であり、しかしながら木を伐ることが自然破壊と言われることもありますが、
適切な自然の利活用は、災害なども軽減します。
大難を小難に、小難を無難に、無難を無事に生きることが可能な日本だからこそ、
皆さんと沢山の自然資源を利活用していきたい、世界に発信できる松本をこれから作っていきたいと思います。」

という素晴らしい締めのお言葉で今回のイベントはクローズしました。

 

 

参加者の声

・近頃のソマミチのイベント、パンフレットなどの内容があか抜けていて、実に好ましく思っています。

 

・ソマミチを通して松本の里山や松本の暮らしをもっと好きになりたい。自分と木の利用についてどんなことが出来るか考えたい。

 

・カラマツは有効活用しにくい木材と思っていたのですが、活用方法の多様性が有り驚いています。

 

・「ソマミチ」という名前からワクワクする言葉で情報発信しているな、と思っていました。チーム活動の内容が、新しい時代を感じさせるカタチで、これからの動きもとても興味あります。今日はありがとうございました。

 

・どの取り組みも魅力的でした。プロの集団かつ、各々の仕事が活かされていて相乗効果になっている面白さを感じられました。

 

・長野県外に住んでいた際に、山林、製材、建築をトータルサポートしている会社に勤めていました。そこで地産地消の家づくりをする想いに共感し、木の地産地消、国産材のことをみんなにもっと知ってもらいたい、触れてほしい、そして次世代にも木を繋げていきたいという想いがあります。わけあって現在は自然豊かな松本に移住してきたのですが、木に対する自身の想いをどういう風に表現すればいいのか、伝えていけばいいのか、自身が出来る事は何かなど、ぐるぐると考えている状況です。自身と同じような想いの人が集まるソマミチさんと今後繋がり、想いを共感し動けたら嬉しいです。ソマミチタウン、作っていきたいです。

 

 

 

さいごに(次回ツアーのお知らせ)

【↓お申込みフォームはこちら↓】

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSduLhWbP8GEj3NUY4BjV7zvIAyT_6WQ-l2hwXVD7Znd89l0kQ/viewform

 

詳細は、ソマミチのFacebookページにて掲載しますので、

Facebookページもチェック&フォローをお願いします。

【↓ソマミチFacebookページ(イベントページ)はこちら↓】

https://www.facebook.com/events/436422813737044/

 

 

それでは、また信州松本にて、皆様とお会いできること、

一緒に松本の風景を作っていけることを楽しみにしています。

 

 

 

 

 

 

 

Posted by wpmaster on 水曜日 10月 23, 2019 Under — ちいきの地域, pick up, お知らせ, すべての記事

移動中の高速道路で大粒の雨に降られましたが当日の目的地、新庄村に到着してみると雨もぴたっと止み所々晴れ間ものぞいて秋の気配を感じる爽やかな気候となった8月30日。

今年度第4回勉強会を開催しました。

 

(色づいた稲穂:8月も終わりに差し掛かり、新庄村特産のヒメノモチも収穫の時が近づいています。)

 

今回は前回の勉強会で皆さんとディスカッションを行い、詳細を詰めた本プロジェクトのロゴマークの仮決定版の発表と勉強会メンバーを中心に構成されるチームがこの先展開してゆく活動についてミニビジネスという観点からアイデア出しを行っていただきました。

 

勉強会の役割とは?

「勉強会」、各地や社内でもよく行われていることだと思いますが、皆様の中で勉強会というとどのようなものをイメージするでしょうか?

新庄村のように、地域の林業関連業者が集まり、その地域の森林林業の課題や現状を把握し将来どのような森づくりを行うか、共通理念を定め、その理念に向かって取組を進めていく場合、勉強会において以下の3つの機能(役割)を参加者の皆さまに活用いただきたいことをお伝えしました。

1.村での情報共有の場

2.お悩み相談の場

3.ビジネス提案の場

 

これまでも多くの地域をコーディネートさせていただいておりますが、地域内の同業者、隣接異業種の皆様は交流が深いと思いきやそうでもない、という地域は少なくありません。

また、地域内外からゲストを招き講座を行うことで他地域事例からの学びや自社経営の悩みについて相談(質問)機会を設けること、自社だけではできないことをチームで実施するビジネス提案を行う機会を設けることが勉強会では可能です。チームとしての以前に「個」の経営強化につなげることも勉強会にとって重要な要素です。

 

 

ついに、ロゴマーク完成。解禁間近!

昨年から、新庄村の森林ビジョンは何かということから、森林ビジョンを体現するためのチームの1つの顔ともいえるロゴマークについて参加者の皆さまとワークショップを重ねてきました。

更に、前回の勉強会からは、村内の道の駅のロゴデザイン作成や現在も村内のまちづくり事業に携わるデザイナーにご協力いただき、ロゴマーク及びビジョンのデザイン化をしていただいています。

 

今回の勉強会で、ロゴマークが確定し、今後はコンセプトブックの作成などに移っていきます!ということでロゴマークをお披露目したいところですが、解禁まで今しばらくお待ち下さい。

今回のロゴのポイントだけ、ご紹介すると

・汎用性を高くするフレキシブルデザイン

・村全体のブランディングに繋げられる(道の駅のロゴとの整合性等)

・新庄村の山、木、水がテーマになっていること

となります。コンセプトブックの紹介と同時にロゴマークも解禁される予定です。公開まで、お楽しみに!

 

 

チーム作りと情報発信体制~弊社事例をもとに~

今後本プロジェクトをチームとして展開していくにあたり、皆さんに具体的なイメージを持っていただくために弊社がコーディネートに携わる3地域の事例をお話しました。

1.長野松本:一般社団法人ソマミチ

2.岩手岩泉:岩泉の明日の林業をつくる会

3.愛知豊田:一般社団法人ウッディーラ豊田

 

これまでも弊社ブログやSNSでもご紹介してきた事例ですが、改めて今回勉強会の参加者の皆さまには具体的にどのように情報発信をしているか、理念と利益の体現のためにどのような活動/イベントをしているかを中心にご紹介しました。具体的な他地域事例があることで、今後の新庄村での活動がイメージしやすくなったのではないでしょうか?

次に参加者の皆さんからそれぞれが取り組まれているイベントについて情報共有をいただきました。各林業事業体様も子供向けのイベントであったり、林業機械の展示であったり村民や住民へ向けたイベントを毎年開催されていることがわかりました。

また、木工に取り組まれている方もおり、今月末に行われる新庄村のトレイルランニングの大会のメダルを作成しているとのことで、既に動いている魅力的な活動が新庄村には多くありますが情報発信についてはそれぞれが個別に行っている場合が多いことも分かりました。

 

現在の時点で様々な活動をしておられる方がいらっしゃる新庄村の可能性と今後の展開に期待が膨らむとともに、チームとして統一デザインで情報発信をすることで個々の活動において相乗効果を生み出すことが出来るでしょう。

 

 

5つの視点からみる「ミニビジネス」アイデア

林業活性化において、素材生産の体制や木材利用の直接的な対策は重要ですが、雇用や移住定住など地域全体の暮らし、経済を顧みた際には素早く始められる小さなビジネス、ミニビジネスの存在も重要となります。

勉強会の後半では、今後チームで取り組む、ミニビジネスに向けて5つの視点

1.直近のトレイルランニングにむけて出来る事

2.“〇×〇”のコラボで出来る事

3.小さく始められること

4.短期的にできること

5.中長期的にやりたいこと

 

からアイデア出しを行いました。

 

思考の幅を広げ、初めの一歩を小さくすること、さらに具体的な事例を見て、触ることで様々な意見やアイデアを発想しやすくなります。ということで、弊社のオフィスから全国各地のクライアントの皆様の木工事例を持参しました。皆さん実際に手に取って、会話をしながら木を触りながらのアイデア出しを行いました。

 

 

現在村内で取り組んでいることをベースに様々なアイデアが出てきました。

<トレイルランニングにむけて>

・カホンをブブゼラのように応援に使えないか?

・大会の参加者の名前を木札に書いてみたら面白いのでは?

 

<短期的に>

・杉玉づくりワークショップ

・音の鳴る応援グッズ

 

<中長期的に>

・カホンを加えた金管バンド

・6歳になったら机を作ろうプロジェクト

・ふるさと納税の返礼品に使えそうなもの

 

<小さく始める>

・目に触れる名札やバッジ作成

・ノベルティとして配布可能なもの

・普段使いできるもの(Tシャツなど)

 

<〇×〇>

・トレラン×サウナ

・森林セラピー×サウナ

・麻×杉玉

 

個々ではできないこと、思い付かないこともチームで考えれば実現可能に!アイデアは出して終わりではもったいないので、まずはやってみよう精神で、今後は実行に移していく予定です。

 

 

さいごに

第1回の勉強会から積み重ね、今回の勉強会が第4回。昨年度から数えると7回の勉強会が終了しました。

今回でチームの形や方向性が固まりましたので、これから皆さんの目に触れる形で活動できるよう準備を進めていきます。

次回は9月の下旬頃に中間報告会という形でロゴマークやチームのお披露目、今後の取組について関係者のみだけではなく村民の皆様も対象にご報告します。新庄村の本プロジェクトがより良いチーム作りができますよう弊社一同全力で動き、サポートして参りますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。新庄村のこれからの動きに、是非ご注目ください!

 

 

 

 

 

Posted by wpmaster on 金曜日 8月 30, 2019 Under — ちいきの地域, pick up, すべての記事, 講演&研修 報告

<新庄川と笠杖山(通称:新庄富士):雲一つない青空と空気が心地よい>

 

梅雨前の貴重な快晴となった6月13日。

新庄村で第2回目の勉強会を開催しました。

 

今回は先月開催した今年度1回目の勉強会を基にして、新庄村の森林ビジョンの全体像を深めていくことが目標です。

(1回目の様子はこちらから→https://chiikino.jp/blog/?p=10026

そのため、新庄村の森林のゾーニングイメージの深掘りと確定に向けて弊社より事例紹介、その後参加者の皆さんとワークショップを行いました。

ゾーニングとは一般的にまちづくりや都市計画で用いられる土地利用の区分のことです。

弊社では、森林のゾーニングについてその当該地域の森林ビジョン(どうありたいか)という全体最適のもと、利用と保全の2つの視点で目標林形を考え、また所有者の意向を確認したうえで今後の森林活用の区分け(イメージ)を共に考えていきます。

まずは、弊社代表古川より高野山の事例についてお話させていただきました。

 

 

ゾーニングのイロハと関係人口

 

覚えやすい(印象に残る)、親しみやすいゾーニングや、ゾーンに対するネーミングにはどのような特徴があるでしょうか?

 

その答えの1つとして、「3つの○○」など数字を使ってまとめていくことが挙げられます。今回事例としてお話させていただいた高野山の場合、5つのゾーニングがされています。

 

実際に5つのゾーニングは、

・仏法僧の森

・高野六木の森

・木の文化伝承の森

・彩の森

・共生循環の森

 

となっており、

高野山ならでは、仏教にゆかりのある仏法僧という鳥をシンボルとした動物を守る「仏法僧の森」、杉、檜、高野槙、樅、栂、赤松の「高野六木の森」、文化財利用のための超長伐期の「木の文化伝承の森」、広葉樹の混交林である「彩の森」、人工林経済循環の「共生循環の森」。その土地ならではの特徴を反映したゾーニング例を紹介させていただきました。

 

他にも岡山県西粟倉村の「百年の森林構想」

吉野林業の地、奈良県川上村では「NEXT500」

という理念と目標林形に基づいてゾーニングが進められている事例をご紹介させていただきました。

 

 

 

続いて、ゾーニングや森林ビジョンを誰に向けて打ち出すのか、という視点で「関係人口」についても古川よりお話させていただきました。もちろん、森林のゾーニングやビジョン設計は所有や地形や林齢などの地理的条件も反映させ、内的にどういった森づくりをしたいかという想いが重要になります。一方で、対外的なメッセージとして誰に何を伝えたいかという視点も重要となります。

総務省やスローライフをテーマとした雑誌『ソトコト』の編集者による関係人口の定義も引用しながら、弊社が考える「7つの関係人口」について説明させていただきました。「新庄村へどのような方に来て欲しいのかについて具体的にイメージして、新庄村のファンを増やそう」というメッセージを参加者の皆様にお伝えしました。

 

 

3つのワークショップ

 

前回のワークショップにて出しあった新庄村の特徴的なスポットを地図上に落とし込み、大まかなゾーニングを弊社で設定した資料を使い、今回は3つのワークショップを行いました。

 

まず、1つ目ワークショップは新庄村の地図上におすすめポイント、良いところを示していくものです。前回不参加の方もいたため、改めて前回のワークショップのまとめを見返し、追加するスポットを出し合っていただきました。

 

今回のワークショップの目標は2つ

1.村の良いポイントを増やすこと

2.そのポイントへの想いを描いていくこと

です。

 

3チームに分けてワークショップを進めていきましたが、

じっくりと考えながら進めるチーム

「あーそうなの!」「確かに」と進めるチーム

落ち着きつつも深く話していくチーム

三者三様のチームでワークがすすめられていきます。

 

各チームから出されたアイデアはどれも特徴的で新庄村の生活の様子が気になるようなものばかりでした。

・野菜を売り歩くおばさん

・3つの神社の鎮守の森

・スローライフでなくてアクティブライフの新庄村

・木材チップ置き場に出るカブトムシの幼虫

・象徴的な9つの山

など一見、これは何?と思うようなキーワードもありますが、詳しくお話を聞くとすべてに物語があり、新庄らしさを感じます。

 

また、1回目の勉強会後に、実際に山へ確認をしに行ってみましたという声がありました。

航空測量のデータとGPS装置をもって山に入り象徴的なスギを探してきましたという報告もありました。新庄村では航空測量によってスマート林業に向けた活動が進んでいます。測量データやGPS装置の新しい使い方と発見がこれから広がりそうです。さらに、前回のワークショップで出された森の中にある「B29の監視塔」については、物語があるようで、戦時中、信頼ある選ばれた若者二人が朝晩交代で24時間監視にあたっていたということ、その信頼と働きぶりから好意を寄せられることも多かったようで、“監視塔に立った人はモテる”というような物語を作ってはどうかという面白いアイデアも出てきました。

 

2つ目のワークショップは森林のゾーンごとに名前をつけていくものです。

このゾーンはこんな森になってほしいなという想いやこんな人に来て欲しいという想いを浮かべながら森林のゾーンに名前を付けていきます。

 

 

ここでも皆さんの林業家、セラピーホストとしての本領発揮!

「ここは経済林。あそこは里山空間!」

と実業での経験から10年後100年後の森のことを考えていきます。木材市場や流通の専門的な雑談もはさみながら少しずつ形になっていきます。

 

ワークを経て様々な名前が付けられました。

・カメレオンの森

・バイオマス油田

・木材金山(新庄銀座)

・水生甲虫の森

・源流/水ゾーン

・可能性ゾーン

 

など具体的なゾーンの名前が多数上がった他、学校の校歌や紋章から紐解けることがあるのではないかという切り口も生まれました。

 

3つめのワークショップは発想のアウトプットタイムです。

このワークショップでは、新庄村の森林を象徴するシンボルマークをつけようということで皆さんにロゴマークのイメージを書いていただきました。

まず、参考として過去の弊社クライアント様の事例や三菱マークの成り立ち、麒麟ビールのマークに隠された秘密などマークの作り方とこめられた意味を紹介しました。

 

ここでもユニークな発想・アイデアで様々なマーク候補が誕生しました。

・源流のブナ林や水滴を描いたアイデア

・森の形を擬人化したアイデア

・有名企業をパロディーしたアイデア

・特産のヒメノモチから伸びるイメージ

・森から生産、生活とつながるイメージ

 

発表では、イラストを描くことが苦手な方でも、言葉でイメージを伝えられており、3つのワークショップを通して、皆さんが考える、新庄村の森林のイメージが明確になったのではないでしょうか?

 

 

さいごに

 

第1回、第2回と勉強会・ワークショップを開催し、参加者の皆さんからは多くのユーモアと発想を出していただきました。今後は、素晴らしいシンボルママークやビジョンをご報告できるよう、新庄村内の別事業でデザインをされているデザイナーの方とも協力して作りこんでいきますのでどうぞご期待ください。

 

次回は、7月中下旬に第3回の勉強会(ワークショップ)を開催します。さらに新庄村の森づくりについて新庄村の皆様と検討を深め、具体的なアクション、ゾーニングへと落とし込みビジネス構想へとつなげていきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

Posted by wpmaster on 木曜日 6月 13, 2019 Under — ちいきの地域, pick up, すべての記事, 講演&研修 報告

 

リノベーションされた駅舎が著名な敦賀駅。
屋根付き歩廊の天井は、スチールと木材のハイブリット構造でありました。
明るさを保つために、所々へトップライトが配置されている点もデザインのこだわりですね。

 

 

 

不燃や防腐加工の技術が加えられ、木の温かみが加わった空間ですね。
平屋建て風の”かつての木造駅舎”に変革の加わった、新・木造駅舎。
これからも増えていくのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

Posted by wpmaster on 月曜日 7月 31, 2017 Under — ちいきの地域, pick up, すべての記事

 

島根県奥出雲町にて、第2回起業アドバイザリーのため訪問させていただきました。この地域では、16名の地域おこし協力隊が活動中ですが、その中から卒業後に起業を目指す方々6名に対し、弊社代表の古川が起業アドバイザリーを務めさせていただいております。今回は、2カ月前からの進捗を報告いただき、新たなビジネスモデルの構築と、さらなる付加価値化のヒントを提供しながら、今後のビジョンと課題を共有しました。

 

ミニセミナーを開催

 

 

今回はまず、地域おこし協力隊員と、行政で協力隊担当の職員の方々を対象に、「地方創生×ローカルベンチャー~地域を熱くし、事業を厚くするチャレンジ~」と題したミニセミナーを開催しました。

 

◆ 講演のメニュ

【1】“協力隊”制度の活かし方 移住・交流から起業まで

・行政に必要なマーケティング発想

・任期中にやっておいたほうが良いこと

【2】地域で起業するということ
・地域ビジネスの定義は何?

・シェアビジネス、持続可能ビジネスのウソとホント

・暮らし方と儲け方の両立ポイント

・起業の意味、経営の意味とは何か

・お金より大事なこと

 

 

オススメ書籍の一文を紹介しながら進んだ講演ですが、参加された協力隊の方々からは、「他社との差別化を考えていく上で大変参考になりました。売りモノ・売りカタの戦略を立てていきたいと思います。」「理念重視のボランティア活動⇔利益重視の事業の狭間でどこのポジションを目指すか、上がり下がりある波を越えていくこと。自分のやりたかったことに、改めて気付きました。」「新しい気付きもありますが、忘れていたことや、ずっと気になっていたことをふと思い出す時間になりました。」といった感想をいただきました。

 

 

奥出雲町内を散策

 

 

アドバイザリー終了後は、本業務をコーディネートいただいている宍戸さん(一般社団法人スクナヒコナ 副理事)に、奥出雲町内をご案内いただきました。名勝・鬼の舌震の近くでお蕎麦をいただいた後は、出雲・鉄山御三家の一つ、絲原家(松江藩元鉄師頭取)の記念館を訪ねました。踏鞴(たたら)製鉄の成り立ちや道具の解説、それを統括してきた絲原家の歴史や骨董品の展示を通じて、奥出雲で技術継承されてきた、製鉄の歴史を学びました。16代続く名家の歴史を知ると、「たたら製鉄」という産業を基盤に家を興しながら、時代に応じて次のビジネスを展開し、地域の資源利用と雇用の拠点を作ってこられたことが分かります。

 

そして、たたら製鉄からは、持続可能な自然資源利用を学ぶことができます。製鉄には燃料となる薪資源が不可欠ですが、世界の大規模鉱山を見ると、精錬等への熱エネルギー利用のため周辺の山林を一気に伐採し、荒野となってしまった地域がほとんどです。しかし奥出雲のたたら製鉄では、30年単位での計画的な輪伐によって、持続可能な資源利用と製鉄が行われてきたため、現在でも豊かな山村風景が広がっています。土砂を流して砂鉄を採った斜面は、その後棚田に整えて活かし、荒廃しないペースで伐採した木は薪として精錬に使い、それによって出来た鉄製品は、地域資源として地域外へ出していくことで、外貨と外交を獲得してきたということですね。住まいと仕事の場が一体となった、絲原家製鉄所の絵図を見るとは、その地域にある資源を持続的に活かし、生業を持ったコミュニティの姿がありました。

 

 

 

 

なお、林業では「山の神」を祀るのと同じく、製鉄、鍛治にも守護神「金屋子(かなやご)」がお祀りされていました。ちなみに、金屋子神の御神木は、桂の木だそうですよ!祠を見守るように、青々とした桂の木が植えられていました。出雲方面へお出掛けの際には、一尺一寸角(33㎝)のケヤキの大黒柱で建てられた本宅、美しい庭園、散策エリア等、林業や植物、建築がお好きな方には、見どころ満載な絲原記念館へぜひ。

 

 

 

次回

 

第3回は9月頃の訪問を予定していますす。次回も経営アドバイスの個別面談を行うと共に、公開型ミニセミナー第2回を開催する予定ですので、協力隊の皆さまはもちろんのこと、奥出雲町(行政)の方々もお誘い合わせの上、ご参加いただければ幸いです。

 

それでは、引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

Posted by wpmaster on 火曜日 7月 25, 2017 Under — ちいきの地域, pick up, すべての記事, 講演&研修 報告

 

 

吉野林業発祥の地、奈良県吉野郡川上村。

 

弊社の支援先である吉野かわかみ社中発足から間もなく3年目へ突入する節目を前に、今回は近隣地域との繋がりから、吉野林業と川上村について辿るツアー「産地巡礼」の様子をお届けしています。前編・中編と終えて、いよいよ川上村の山林へ。旅気分でご覧ください。

 

歴史の証人へ会いに行く

温泉で昨日の疲れを癒し、目覚めの良い朝は、早起きをして山へ。日本最古の人工林と言われる400年生の山林を目指します。その山林は、川上村下多古地区にあり、通称「歴史の証人」と呼ばれます。江戸時代初期に植林されたといわれる約3,700㎡の山林は、現在は村有林として管理されています。

 

 

 

山道を1時間ほど歩いて出会える巨大な吉野杉は、推定樹齢395年が3本、257年が7本、さらに檜は257年が42本、まさに歴史を見てきた証人のような高齢樹が現存しています。人工造林約500年の歴史がある川上村の中でも、最古の人工林であり、文化財修理に適した木材を供給し、研修林としても活用しようと文化庁が定める「ふるさと文化財の森」にも登録されています。

 

 

村有林前に立てられる看板

 

村有林までの約1時間の登山中にも、吉野林業ならではのいくつかの発見がありました。まずは、山の境界を示す「書付」。道中では、所有者の異なるいくつかの山林を通り抜けます。林相を見ても大きな木が林立するもの、若くて細い山林など見て違いが分かりますが、その山の所有者を示すために、境界ごとに山林の所有者情報を示す「書付」が、太い木に記されています。

 


山の境界にある書付

 

続いては、吉野林業ならではの密植林。まるで竹林のように、細くまっすぐに伸びる若い杉林ですが、狭い間隔で植林することで、林内が適度に暗くなり、出てきた枝は光不足で枯れ、自然落下します。将来的に無節の材を収穫することを目的とした吉野ならではの施業です。全国平均で杉の場合、植林本数は1ヘクタールあたり3,000~5,000本と言われるところ、吉野林業では、8,000~10,000本を植林することからも、その特異性がわかります。

 

 

吉野林業の密植林

 

最後は、歴史の証人の森で見つけた、ムササビの巣穴。この木は以前、伐採する計画がありましたが、この森はSGEC認証( Sustainable Green Ecosystem Council、和名:『緑の循環』認証会議)を受けており「林内に野生動物が相当数生息し獣害の恐れのある場合、その森林の成長及び生物多様性に及ぼす圧力を軽減する防護手段を講じなければならない」といったルールがあるため、ムササビのために伐採が行われなかったというエピソードがあります。

 

樹上にあるムササビの巣穴

 

たった1時間程の登山中にも、いくつもの面白い発見に出逢いました。そんな川上村の村有林では、建築士を対象とした視察ツアーを開催したり、都市部の学生が修学旅行に訪れたりと、新しい視点から人を迎え入れる流れができています。

 

 

源流の村の朝市を訪ねる

 

新しい人の流れと言えば、欠かせないのが、源流の村の朝市です。川上村には2013年から10人以上の地域おこし協力隊が赴任していますが、その中で「地域の資源を活かした仕事づくり」をテーマにしたプロジェクトに取組むのが、この「やまいき市」です。村内で生産された源流野菜を集荷し、また、「源流の村づくり」の理念を体現するために、紀の川(吉野川)流域から仕入れた野菜を、毎週土曜日の朝から販売しています。

 

やまいき市 ホームページより引用

 

 

 プレミアムな産地をつくる

弊社では、一般社団法人吉野かわかみ社中の構想策定から設立支援、経営支援を通じて、吉野林業の振興をサポートしています。今回は、周辺地域から吉野林業を辿るレポートをお届けしてみましたが、いかがでしたか?林業産地の下流地域を訪れてみると、吉野杉そのものではなく、源流の村のファン、サポーターとなる関係者の幅広さに気付きます。林業を生業とする川上村から、周辺地域とのかかわりを見ると、また少し違った視点から、吉野材や風景、歴史、源流の村の資源等に気付き、様々な新しい提案をこの周辺地域に投げかけて下さいます。

 

はたして、「林業や地域の振興」とは、何でしょうか? 川上村と川上村吉野林業の振興を応援して下さる人々に会い、色々な表現に触れた1泊2日の旅の終わりに、考えてみたいと思います。

それは、

①地域の点を強くすること

まずは、その地域の「点」を強くし、地域1番企業を作ること。それは、地域全体を牽引するプレーヤーを育て地域ブランドを作るためにも、弊社がコンサルティング支援の上で心掛けてきた原則の一つです。

 

 ②「点」から「面」を作ること。

 

地域全体を牽引する点が生まれた次に生まれるのは、「面」のブランドです。地方創生に注目が集まる近年、地域の「点」となるプレーヤーが集い、「面」で地域のブランドを作る潮流が顕著なことは、既にお気付きの通りでしょう。弊社でも数々の地域ブランド策定の支援をして参りましたが、その際、行政区分に捉われ過ぎず、川上~川中~川下の広域的な繋がりを持ってプロジェクトを進めることの価値を、今回のツアーレポートをきっかけに、お伝えできればと思います。

 

③新たな人材の交流を作ること。

 

最後に、地域の発展や振興を持続可能なものにするには、常に交流を生み出すことです。そこには、移住定住に繋がる交流もあれば、ビジネス上の交流も含まれます。歴史ある地域に交流をきっかけとした新しい「知」が付加されることで、常に代謝の良い地域の風土ができ、廃れないブランドが確立されてゆくことでしょう。弊社では、地域おこし協力隊制度を利用し、この地域でチャレンジしたいという人材の起業支援を行っています。また、自らが起業者にならなくても、中間組織に所属して地域内の事業体を支え、地域や林業振興を担う選択肢もありますね。弊社の支援先である吉野かわかみ社中も、このような立ち位置にあります。結果、土地に縁がなかった人達と、地元出身の人たちとの新しい交流で、価値観が再設計され未来への行動が喚起されていきます。

 

改めて、今回旅した、吉野林業エリアにおいても、源流の村に何らかのルーツを持ち、敬意を表して、川上村の林業へ新たな投げ掛けをして下さるプレーヤーに多く出会いました。また、林業とは違った角度から、地域や森、山村文化の魅力を表現していく力を教わりました。

 

直接的に林業木材業の従事者でなくても、食や旅、観光等、様々な切り口から林業産地を応援する方々との繋がりを大切に、彼らが林業振興、山村振興の場面でも活躍できる場を作り、「面」でプレミアム産地の礎を作ること。弊社ではこれからも、このような支援を目指してまいります。

 

今回、1泊2日で吉野林業を巡った旅ですが、2017年もこのような「産地巡礼」のツアー開催を予定しています。「この林業産地を見てみたい」といったご要望がありましたら、お問合せフォームから、ご意見お待ちしています。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

旅する産地 編集室

林業木材業の選ばれる産地づくりを目指して。地域密着型支援コンサルティングを行う、古川ちいきの総合研究所の視点から私たちが出逢った林業産地の風景や物語をお届けします。

 

 

 


 

 

 

 

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吉野林業発祥の地、奈良県吉野郡川上村。

弊社の支援先である吉野かわかみ社中発足から間もなく3年目へ突入する節目を前に、今回は近隣地域との繋がりから、吉野林業と川上村について辿るツアー「産地巡礼」の様子をお届けしています。前編では桜井市を巡りましたが、続いては吉野町へ。どうぞご覧ください。

 

貯木のまち・吉野町へ

 

ランチを堪能した後は、貯木のまち・吉野町へ向かいました。

言わずと知れた、吉野山の桜の名所であると共に、吉野の山から切り出される吉野杉・吉野檜が製材される集積地でもあります。

 

吉野町内をゆったりと流れるのは吉野川。上流へ進むと行き着く先は、紀の川(吉野川)源流であり吉野林業のメッカ、川上村です。全国的にも有数の多雨地帯で知られる大台ケ原を源流に、川上村を経て和歌山県へ流れ、紀の川と名前を変えて最後は和歌山市加太の海へと注がれる紀の川(吉野川)。

奈良県内では吉野川との通称で親しまれるこの川ですが、上流の山々から伐り出された丸太は、かつては吉野川を通り筏流しで下流へ運ばれ、吉野町で製材されてきました。

 

川上村から吉野町へ続く、吉野川(紀の川)

 

遡れば、大阪城や伏見城の築城にも使われたという吉野材の歴史。その際にも丸太は吉野川を下り、都市部へ運ばれたとの記録がありますが、製材工業団地として吉野町が本格的に整備されたのは、昭和20年代。木材協同組合が発足されると、上流の集落で林業や樽丸製造業を営んでいた人々が製材業へ参画し、今日の貯木のまち・吉野町が築かれてきました。

 

表のカラフルな木の正体は?

 

吉野川からほど近くに位置するのは、吉野町の原木市場・吉野木材協同組合連合会。広い土場には月に2回、高齢級の杉檜を中心に吉野材が集まりセリにかけられます。市場を抜けて、製材工場が立ち並ぶ貯木エリアへ。足を踏み入れた瞬間、木の香りに包まれ、機械の音と働く人々の威勢の良い声が聴こえ、至る所でフォークリフトが行き交っています。煙突からは端材を燃やす煙が立ち昇って、貯木の町にやってきたことを肌で感じます。

 

たくさんの工場が集まる製材工業団地。通りを歩くだけでも、さまざまな屋号や看板があり、工場の雰囲気も変化があり、発見に満ちています。そんな中でも、異色を放つ工場が目に留まりました。小割にされた木材の木口が、なんともカラフルに着色されています。まるでアートのようにも見えますが、これは何でしょう?さっそくお話を伺いました。こちらの製材所は、坂本林業。工場を案内して下さったのは、坂本林業2代目の坂本好孝さんです。ちなみに坂本林業という社名ですが、業種は製材業を営んでおられます。ちなみに大手企業の住友林業も、主力事業は建設業および不動産業ですね。林業と山を想い、度々川上村にも足を運んでおられる坂本さんに、お話を伺いました。

 

カラフルな木が積まれた製材工場

 

 

坂本林業2代目 坂本好孝さん

 

現在は吉野町で製材業を営む坂本家ですが、元々は川上村のご出身だそうです。好孝さんの曾祖父は、川上村高原にて、樽丸の製造販売業「丸師」を務めておられました。好孝さんのお父様の代で吉野町へ移り、貯木での修行を経て製材業として暖簾分け。屋号の「龍」は、創業時、父・龍亮さんの名前から取り、約40年の歴史があります。

 

坂本家と同様に、吉野貯木の中には「先祖は川上村で林業を営んでいた」というお家は多くあります。昭和20年代に吉野木材協同組合連合会が設立され(前身の吉野材木同業組合連合会は明治35年創業)、川上村で山守を務める家系の次男、三男にあたる方々が吉野貯木で製材業を立ち上げたのです。それ故に山側と顔の見える関係を持ち、どこの山で、どの山守が、どんな施業管理をしてきたか、山守の顔を知る木のプロたちが刻印を見分け、目利きをして原木を選んでいます。

 

坂本林業もまた、原木品質にこだわった製品をつくる会社の一つ。高齢級の吉野檜を中心に製材し、化粧材を製造し、一枚板を店舗へ納材したりと、意匠的に木を用いるところへ販路を拡げています。「育った山と育てた山守、それから、伐採日と伐採者。素材にこだわるからこそ、1本の丸太に関する情報を全部分かるのが、一番理想的かもしれません。」と、好孝さんは話します。これほどまでに、丸太が育った背景を見て、素材と対話した製品づくりを続けておられます。

 

 


坂本林業の事務所

 

屋号の「龍」が目印

 

カラースプレーの理由は、木の出処を区別して木色を合わせるためでした。まず原木の仕入れ時に、木口をカラースプレーで着色します。すると、製材~天然乾燥という工程を進めても、同じ丸太から割った製品がわかり、商品束を最後にまとめることができるのです。同じ木から取った商品で束を作ることで、全体の木色が揃い、意匠的に美しい状態でお客様に届けるための工夫なのでした。

 

このような坂本さんの心遣いは、整理整頓された美しい工場の至るところに表れていました。山を想いながら、丸太を製材し、日本の暮らしへ木材を届ける、貯木の人々。源流の村を少し出てみると、外の地域にも見えない繋がりで、川上村を応援してくれているプレーヤーの存在に気付きます。では、素材を供給する川上村からできることは何か?問いかけをいただいたような時間でした。

 

Airbnb×吉野杉のゲストハウス

 

坂本林業の工場を出て、歩くこと約10分。吉野川のほとりに新しく出来た「吉野杉の家」を案内いただきました。こちらは、吉野杉・檜で作られたゲストハウス。空いている部屋を国内外の人々へ貸し出し出来るサービス「Airbnb」の仕組みを使って、宿泊客を集めています。東京を拠点に活躍する建築家の長谷川豪氏が設計を手掛け、吉野貯木の製材所が納材し、坂本さんをはじめとする吉野町の方々がホストとして活動中。新たな交流拠点づくりを通じて、今までになかった吉野材を活かすコミュニティが生まれています。吉野杉の家は、1泊9,996円から宿泊できます。AirbnbのWEBサイトからご覧ください。
「吉野杉の家」で検索すると、プランを選択できます。

 

吉野杉の家

 

こけら葺き風の屋根
外壁も耳付きの吉野杉

下市町の家具工房「市-ichi-」の椅子

 

まるで秘密基地のような空間で、机を囲む

 

 宙へ上がるような不思議な階段

 

 2階には2部屋の寝室とPC作業スペース、本棚が配置

 

吉野川を眺める縁側は、夏にはBBQも可◎

 

ちなみに、吉野杉を取り囲む大きなケヤキは、かつて筏流しで丸太を運んだ時代、この木に縄を括って筏を繋留させるために残されたそうですよ。船場で言う、ボラードですね。吉野杉の家の縁側で、目の前の川を丸太が流れた時代に想いを馳せながら、いつもと違う時間を過ごすのも、いかがでしょうか?

 

大きなケヤキに囲まれた、吉野杉の家

 

筏場跡地を示す看板にも注目。

 

林業地域の木工業

 

あえて下流地域から、吉野林業を知る旅を続けてきましたが、ここでようやく上流の村へさかのぼりましょう。造林について日本最古の歴史が残る、川上村。代々、山主が所有する山林を山守が管理し、密植、長伐期、多間伐による大径木施業を続けてきた、吉野林業のメッカです。

 

良い丸太を育て川下へ届けることを使命としてきたこの地域ですが、丸太生産のみならず、2016年から新たな取組みも始まっています。その名は、「吉野かわかみ杉こけら舎」。年輪の詰まった大径木という吉野杉の特性を生かして、社寺仏閣の屋根に用いる「杮(こけら)」の製造を始めるチームが発足されたのです。

 

特別に、こけら修行に勤しむ練習場へお邪魔しました。旧小学校校舎である木匠館の教室を利用して、県外からこけら職人の先生を招き、日々鍛錬を重ねておられます。この日は約5名が教室に集い、もくもくと作業を続けておられました。用いる丸太は川上村の原木が出荷される市場で購入した、高齢級の一等級品。直径の大きな丸太から、柾目取りできるように材を割っていきます。

 

 

 

こけら修行に励む方々は、今でも川上村にて現役で活躍する山守でもあります。山を知る彼らが、吉野杉の丸太と対話して、加工にも踏み出しているのです。ちなみに最近は、刃物の柄にテニスラケットのグリップテープを巻くのが流行っているとのこと。道具を大事に、自分の使いやすいよう工夫する姿は、山仕事をされている時と共通するのかもしれません。

 

これから納品される、こけら板

 

丸太を伐って搬出する素材生産のみならず、樽丸生産や狩猟など、山の資源を加工し複数の収益源から生業を作っていたのが、山村集落の人々。川上村では再び、杮を通じて木材加工をリスタートし、木の付加価値を高めて売っていく仕組みへの挑戦が始まりました。

 

温泉と食を味わう

 

川上村の夜、旅の疲れを癒すのは、吉野の温泉と食事です。今回は、川上村の「湯盛温泉 ホテル杉の湯」へ宿泊しました。杉の湯は、ミシュランガイド奈良2017で、快適度が最高の「非常に快適」との評価で選ばれています。ベッドを備えた和洋室には、吉野杉のフローリングが使われ、客間は全てエメラルドグリーンのダム湖を眺める作りとなっています。夕食のコース料理では、吉野杉の器へ綺麗に盛られた食事が。杉の湯へご宿泊の際には、季節折々のお料理と、山並みの景色が美しい露天風呂をお楽しみください。

川上村は、古くは大峯山への参拝者が訪れる行者宿として栄えた地でもありました。そのため、村内には大正時代に建築された旅館を始め、かけ流し温泉宿、民宿など、小さいながらも真心のこもった宿泊施設が点在しています。いずれも星空の絶景が楽しめるような、夜は暗闇の深くなる静かな場所に位置しています。

 

 

ダム湖と四季折々の風景が一望できる客室

 

 

お料理の中にも、春を感じる演出

 

川上村内の木工房でつくられた、吉野杉の器

 

吉野杉の桝で日本酒をいただく

 

  もちろんお箸も吉野杉

 

朝食の茶粥は、奈良の名物

 

朝食の器に、吉野杉。

 

さぁ、いよいよ次は、川上村の中でも最古の人工林「歴史の証人」を訪ねて。
続きは吉野林業を巡る~後編~をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

旅する産地 編集室

林業木材業の選ばれる産地づくりを目指して。地域密着型支援コンサルティングを行う、古川ちいきの総合研究所の視点から私たちが出逢った林業産地の風景や物語をお届けします。

 

 

 


 

 

 

 

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吉野林業を巡る

 

吉野林業発祥の地、奈良県吉野郡川上村。

 

弊社の支援先地域の一つである川上村では、2015年6月28日に川上村(行政)と林業4団体から成る「吉野かわかみ社中」が結成され、丸2年が経過しました。地域林業の中間組織となる吉野かわかみ社中は、小規模林業事業体各社のインキュベーション機能を持つと共に、自らの組織においても地域おこし協力隊制度を活用して職員を採用し、現在は営業、広報、森林プランニング分野それぞれに専門知識あるスタッフが集まるチームが構成されています。

吉野かわかみ社中発足から間もなく3年目へ突入する節目を前に、今回は近隣地域との繋がりから、吉野林業と川上村について辿るツアー「産地巡礼」へ出掛けてみたいと思います。林業の切り口から巡る、1泊2日の奈良吉野旅、どうぞご覧ください。

 

「山行さん」と巡る原木市

 

年1度、最も優良な材が集まる特別市「奈良の木まつり」

 

 

奈良県中部に位置する、桜井市。日本最古の神社といわれる三輪の大神神社を始めとして、由緒ある社寺も数多く残る地域です。この日は、桜井駅から車で約20分、桜井市内の原木市場「奈良県銘木協同組合」を訪れました。こちらは奈良県内に5つある原木市場の中でも、特に高単価の原木が集まることで有名な市場です。この日は、年1度、最も優良な原木が集まる「奈良の木まつり」の開催日でありました。県内に留まらず、全国から高品質な吉野材を求めて買い方が集まります。

 

奈良県銘木協同組合

 

ここで特別に、川上村で林業(素材生産業)を営む中平林業の中平武さんに、市場を案内していただきました。彼は、外周5m超、直径約180cmの大径木伐採や、神社仏閣に使用される木の伐採経験を持ち、若手林業家の筆頭として、川上村を拠点に吉野林業を担っています。ちなみに吉野林業では、林業従事者のことを役割に応じて、山守(ヤマモリ)や山行(ヤマイキ)と呼ぶのです。中平さんも“山行さん”の一人です。

 

中平林業 中平武さん

 

中平さんの解説を受けながら市場に並ぶ丸太を見ると、木口にはそれぞれ「伝票」と「刻印」が記されていることに気付きます。「伝票」には、樹種、材積、長さ、末口直径と共に、産地が明記されていました。そして「刻印」とは、山守が所有し丸太に押印する印のこと。吉野の山守は世襲制のため、山守権と共に刻印が継承されてきました。また、多くの山を管理する山守の場合は、山によっても複数の刻印を使い分けています。つまり吉野林業を知り尽くした買い方は、刻印を見ることで、その丸太を管理した人(山守)と山の情報を辿ることができるのです。

 

真剣な眼差しで丸太を選ぶ買い方の皆さん

 

「あの地域の山の木は育ちが良い。産地と刻印を見て決める。」とある買い方が言いました。ここに集まる丸太は、どれも決して安い素材ではありません。実際に製材しないと中の状態が目に見えないからこそ、丸太の外観のみならず、森林の所在地、出荷者への信頼から予想される施業履歴を考慮して、その木を買うか否か決めるということです。これこそが、刻印の示すトレーサビリティですね。

 

刻印を見つつ山行の中平さんから、丸太に関するストーリーを教えてもらいます。「この刻印は、誰々さんとこの山やなぁ~」等と賑やかに話しながら歩いていると、中平さんの周りに人が集まってきました。「お~Aさん、こんにちは~!しかしアレ(あの木)は凄いですなぁ。どないして伐ったんですか?!」と笑顔で会話が交わされます。市場には、直径が人の背丈を超えるような巨大な丸太も並んでいますが、相手はその木の伐採者さんの様子。市の日は、買い手だけでなく丸太の出荷者も気になって様子を見に来ているようです。 “この木はいくらで売れるだろう?” “誰々さんは、どんな木を出してるんやろう”と、丸太の出荷者にとっても、原木市場はお祭りのような「非日常」のある一日なのですね。

末口直径60cm超の丸太

 

 

景色・素材厳選のオーベルジュ

 

 

取材に熱中する中、ふと原木市場近くの丘の上を見上げると、真新しい木造の建物を発見しました。

 

オーベルジュ・ド・ぷれざんす桜井

 

「あの建物は何だろう、行ってみよう!」と移動。そこで出会ったのは、2016年に開業したばかりのお店「オーベルジュ・ド・ぷれざんす桜井 」でした。オーベルジュとは、フランス語で「宿」という意味。レストランと9部屋の客間が揃った、お宿です。桜井駅近くの中心街から離れた、車がないと行けない場所で、里山に囲まれた広いレストランが私たちを迎えてくれました。

訪れたのは、初春。まだ風は冷たく、景色は冬の色をしていました。そんな季節のテーブルには、真ん中に一本のサクラの丸太が立っていました。

 

 

コースが始まると、ガラスの器が運ばれてきて、完成したのは…吉野桜に見立てた前菜でした。「どうぞお花見をお楽しみください。」の一言と共に、思わず歓声が溢れます。

 

 

一品目のアミューズ「吉野桜のお花見」

 

次々と出される料理の数々には、味わいと美しさはもちろんのこと、林業視点からも、見逃せないおもてなしに満ちていました。例えば、お花見をイメージした前菜と共に提供されたのは、お花見弁当に見立てた突き出し。お弁当箱のような器は、吉野地域の木工家さんの作品で、吉野杉の美しい赤柾材が用いられています。

 

 

突き出し料理は、吉野の木工作家が作ったお弁当箱でいただく

 

メインのお肉料理の一皿は、「味噌でマリネした五條の猪のロースト」。素材の味をワイルドにいただく山の中でのBBQも絶品ですが、上品に焼き上げられた猪肉にも、ジビエの新たな可能性を感じます。

 

 

味噌でマリネした五條の猪のロースト

 

食後のコーヒーと共に出てきたのは、和菓子が入っているかのような、小さな木箱。中には可愛らしいマカロンとトリュフの洋菓子が収まっていました。

 

 

木箱に入ったデザート

 

最後まで趣向が凝らされた数々のお料理をいただき、目もお腹も、心までいっぱいになりました。「木」という素材には、温もり・優しさという質感の他に、“加工の幅広さ”が大きな魅力ではないでしょうか。切り株や枝を丸のまま使ったり、板にしてメニューの表紙のように使ったり、あるいは木箱や器として細かく加工してみたり・・・、割る、輪切りにする、彫る、板挽きする、一度刻んでから再び組む等々、幅広い加工の可能性を秘めているからこそ、扱う者のセンスを問われる素材であるとも言えましょう。料理にも似ているのかもしれませんね。料理と木の関係も奥が深そうです。

ふとレストラン内を見回すと、食を楽しむ空間の中にも所々に木があしらわれています。

例えば、客人を迎える入口のテーブルには、輪切りの丸太。その日の料理に使う、シェフが厳選した野菜が並べられています。料理や食材のみならず、木製の建具やメニューの背表紙等の小物にも、随所に吉野杉や桧を使って、「地域産の素材」にこだわった空間演出が施されていました。

 

輪切り丸太の上に、その日仕入れてきた素材が揃う

 

メニューの表紙は、杉の薄板と和紙

 

もちろんお箸は、吉野杉

 

木格子の建具が、和モダンな空間を演出

 

オーベルジュがある立地は、大神神社や箸墓古墳(一説には卑弥呼の墓ではないかと言われる)を見渡しながら、原木市場も一望できる、オーシャンビューならぬ“ウッドビュー”。ついさっきまで居た市場の威勢良い声が聞こえそうな眺めです。

 

 

 

細やかな演出に心までいっぱいになったところで、続いては貯木のまち・吉野町へ足を伸ばします。
吉野林業を巡る~中編~をご覧ください。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

旅する産地 編集室

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Posted by wpmaster on 金曜日 6月 23, 2017 Under — ちいきの地域, — 産地ブランド・選ばれる林業会社, すべての記事