昨年度に引き続き、京都府立林業大学校「経営高度化コース」の講座を弊社が務めさせていただけることになりました。

 

平成最後の経営高度化コースでありますが、今回、1月25日(金)は全5回を予定している本コースの第1回目の開催ということで、和知(京丹波町)にある京都府立林業大学校を訪れました。森林組合をはじめ、林業事業体から参加された15名の受講者と実践を交えながらマーケティング、マネジメントをはじめとした「経営力」を学ぶことに特化。確かに、2019年は、森林経営管理法案(森林環境譲与税)等が話題をさらっておりますが、この森林経営管理法の経営然り、森林経営計画の経営然り、この「経営」とは何か。本来あるべく本質的な「経営」とは何か。異業界で当たりまえの経営力というものをどう捉え、どう我々の自力として付けていくか、それが、経営高度化コース(社会人コース)で重視をしているところであります。

 

全5回の概要は次の通りです。

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第1回:マーケティング基礎(課題解決、価値創造)

第2回:マーケティング応用(広報広告、販促営業)

第3回:マネジメント基礎(経営管理、組織運営)

第4回:マネジメント応用(人材育成、日々練習)

第5回:まとめ(プレゼン発表)

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特に、第3回、第4回は昨年度の経営高度化コースには無かった項目であり、より組織、人材等に特化した内容となっています。(今後の本ブログでの開催レポートをお楽しみに!)

 

さて、それでは今回の講座内容を少しご紹介です。

 

 

マーケティング=的を絞る

初回ということで、参加者の皆様から自己紹介をいただき、弊社のビジョン、弊社の事業紹介等をした後にマーケティング基礎として、3C、消費の3要素、地と図の関係(ライフスタイル)をクイズを交えながらご紹介しました。クイズをやることで自らが考え、自分で書き、反芻します。これらのビジネスフレームを知ることで、自社の経営がスムーズになり、課題が明確になっていきます。

 

そこから、企業経営とは何か、マーケティングとはそもそも何なのか、マネジメントとは何かを紐解いていきます。誰でもわかるように説明していくのが売りだえる本講座。まず、マーケティングとはニーズを見極め的を絞り、顧客創造(獲得)をするこになります。そして、その顧客創造のためにも、自社の「やりたい理念」と「とりたい利益」を明確にし、商品サービスを規定し、商圏を定めるということが重要になってきます。この業界、売り先の売り先は分からない木材。売ったら終わりという木材。これでは絶対に利益が生み出されません。

 

また、自社の競合、業界の競合はどこかを知ることも重要です。ライバルは時代によって変わります。現在は、スマートフォンが普及し誰もが瞬時に情報を得られる時代です。多くの消費者が、スマホと向き合っている時間がいかに多いか。であれば、ライバルというのは隣の製材所(木工所)というだけではなく、顧客が多くの時間を割いて使っているスマートフォンの時間がライバルであり、顧客の時間をどうやって獲得するかということが大事になっているともいえるのです。木のある空間、木のある時間、森と共に過ごす時間、非日常の創出、見込みのお客様といつどこで出会うかを計画していくことが肝要です。

 

今回の講座では、自社にあり、他社になく、顧客が求めている、自社の「強み」となるものが何なのかを見つけることが重要であることをまず、ワークショップを通して、参加者の皆様には学んでいただけたことと思います。また、改めて、林業業界の「顧客」の定義が重要になります。確かに、顧客の種別(カテゴリー)が多様な、森林組合や林業事業体。単に、丸太を各種販路に売るだけではなく、山林所有者とのコミュニケーションも顧客管理の一つです。得意な顧客カテゴリーに、特異なサービスを「お客様へ」と提供する。そこからがスタートです。

 

 

経営理念、戦略、戦術、戦闘

皆様は、自社の

①理念(ビジョン、ミッション、社是、社訓 等)

②戦略

③戦術

④戦闘

の4つを説明できるでしょうか?

社員の皆様は特に、理念(ビジョンやミッション)について、説明することが出来るでしょうか?

 

貴方の組織は何の為にあるのか?

貴方は何の為に働くのか?

 

これまで何度も業界関係者の集うセミナーで、弊社代表が登壇の機会を頂いてまいりましたが、

おそらく全てを説明できる方は1割程度しかないといったところだと感じております。

ビジョンは、理念、コーポレートメッセージ、夢、ミッションに現れ、

戦略は目標(ビジョンに沿った数字)、

戦術はマネージメントであり何を作って売るか、どう作って売るか、

戦闘はオペレーションであり日々の実務実動(製造、販売など)を示すことを「有名企業の事例」や、弊社コンサルティング先の「業界の事例」を具体的にお伝えしながら、受講した皆様に経営のヒントを提供いたしました。

 

なお、今年は、毎回宿題があります。

必ず、その宿題が自社の課題解決に直接反映さえるように工夫した講座を展開しております。

 

現在、全国で20近い林業大学校が設立されています。常々思うのが、受講生のマーケット(希望人数)と、卒業者のキャリアとのギャップがどうあるか。各地がドメスティックに各都道府県だけで囲むのではなく、本当にあるべく林業事業体(カッコイイ林業事業体)の創造とその持続的な発展を支援することで、「学校」の意味が明確になります。林業の持続性、経営の持続性、人材の募集と内的発展については、日々の経営努力の先にあると思われます。楽しく、厳しく、講師側ではありますが、受講者様と共に、よき未来が創造出来れば幸いです。あと4回、よろしくお願い申し上げます。

 

 

参加者の声

【K森林組合 O様】

「経営のルールを理解しないまま、経営に手をつけることは、運転免許を持たないまま車を運転するのと同じである」という言葉が印象に残った。マーケティング、マネジメントの考え方や実践方法などを今後学びたい。そのためにも、もっと実例を知りたいと感じた。

 

【H森林組合 I様】

経営理念から考える戦略、戦術を自組合でも考えていきたい。そのためにも、どのように職員全員に理念を広めていくかを深堀していきたい。また、今までの組合の考え方を変えられるようなことを5回を通して学びたい。

 

【F森林組合 S様】

消費の3要素は初めて知り、顧客に求められているものを知るということに対して印象が残った内容であった。様々な企業のロゴマークやコーポレートメッセージ事例を見て、自組合でもロゴマークや、コーポレートメッセージを作りたいと感じた。

また、残り4回の講座を通して、森林所有者、森林組合、行政の関わり方や、地域にとって森林組合の意義とは何なのかを学んでいきたい。

 

【林業事業者役員X様】

自分は、経営力に自信があったが、改めて、何の為に林業をしているか、その理念(ミッション)=自分の言葉が足りなかったことが、強く身に染みた。これがあると、人材育成、営業拡大も見えて来る。今日は、楽しかった!

 

【木材関係業者 N様】

自社の顧客を改めて洗いだし、何が顧客のメリットなのかを根本的に考えていきたいと感じた。また、これからの講座を通して林業・木材業にマーケティングを落とし込む方法を学びたい。(もっとたくさんの民間事業体に、是非とも、参加してほしい!!)

 

 

終わりに

2019年に入り、新庄村でのワークショップ、長野県でのフォーラム登壇、今回の京都府立林業大学校の講座と、今年もありがたいことに既に全国各地で講演のご依頼をいただいております。

講演のご依頼やご相談等ありましたらお気軽にご連絡ください。また、これまでの各地での講演については以下のURLからご覧いただけますので是非ご覧ください。

https://chiikino.jp/blog/?page_id=193

 

 

 

 

 

 

 

 

Posted by wpmaster on 金曜日 1月 25, 2019 Under pick up, すべての記事, セミナー報告, 未分類, 講演&研修 報告

 

 

1月21日、長野県安曇野市もくりゅう館にて、

森林フォーラム「これからの森林経営と林業創生を考える~マーケティングの視点からみた林業創生と人材育成~」が開催され、

弊社代表の古川が講演を致しました。

 

長野県は県の面積に対し、森林が占める割合が実に78%に相当(高知、岐阜に次いで全国3位)する日本有数の森林県。「日本のへそ」とも言われる長野県はまさに「林業の中枢」を成しております。

 

今回の講演では、総勢100名近い行政、森林組合、民間林業者の方々にお集まりいただき、「マーケティング」という視点からの林業創生、活性化について学んでいただきました。

 

開催挨拶 長野県林務部長 山﨑様より

 

長野県林務部長 山﨑様より開会のご挨拶。

来年度よりはじまる森林経営管理法、森林環境税についてお話いただき、、年々関係が希薄となっている「森林」と「所有者」の問題を解決する一手として、長野県も多くの人が森づくりに参画しながら、森を活かす支援をしていきたいという力強いお話をいただきました。

 

古川講演~持続可能な経営マーケティングとは~

 

 

弊社代表 古川よりマーケティング視点での森林経営についてお話をさせていただきました。

 

トータル林業、フリースタイル林業

 

「林業者は業界を知りすぎてしまっている」

前例踏襲、仕方ない、こういうものだろう…

衰退が続く林業業界の根底にはこうした呪縛が存在するのではないでしょうか。

 

既存の枠組みに囚われない「フリースタイル林業」「トータル林業」で良いじゃないか。

 

例えばラーメン業界を例にあげると、「醤油ラーメン」もあれば「味噌ラーメン」も「塩ラーメン」もあるわけで、

経営者(店主)が好きなものを表現した結果、その集合体としての「ラーメン業界」が存在し、林業もまたいろいろな形があって良いということをお話させていただきました。

 

既存の素材生産という枠組みから、加工・販売、異業種とのコラボレーション、引いては地域づくり・コミュニティづくりまでを含めて「林業」と定義づけすることでマーケットも広がり、新たな業界の可能性が拓けてくるのではないでしょうか。

 

マーケティングとは

 

企業の倒産理由の66%は「販売不振」によるもの。

マーケティングの父フィリップ・コトラーはマーケティングのコンセプトを以下のように説いております。

 

‐今日のビジネス界が直面している中心問題は商品の不足ではなく、顧客の不足である。

‐マーケティングとは企業の顧客製造部門である。

‐マーケティングの目的は販売(セールス)を不要にすること

‐マーケティングの対象は3つ

①よい顧客

②よい資金(投資家、ファンド、金融機関)

③よい人材(社員、パートナー)

 

販売不振、物が売れない理由を考える時に、自社の商品やコストについて考える視点は当然重要ながら、

商品を買うのは「顧客」であり、自社の製品・商品が「過剰生産」となっている視点に立ち返り、「顧客を創造する」というのがマーケティングの基本的な考え方です。

 

さて、林業の世界における顧客とは。

原木市場?製材工場?バイオマス工場?山林所有者?行政(補助金)?

既存の販路では顧客の数は限られ、パイの奪い合いでは限界がありますし、各事業体、戦略によって異なるもの。

前述の通り、「トータル林業」「フリースタイル林業」の視点を持ち、新たな市場を創ることは、すなわち新たな顧客を創ることに繋がります。

 

経営とは?価値観とは?

 

「経営が分からずに事業をやるのは、運転の仕方を知らずに自動車を運転することに等しい」

 

「事業を営む」と「会社を経営する」は決して同義ではないのですが、多くの林業経営者の方々は素材を生産し、

木材を卸す事業=経営とはき違えてしまっているケースが多く存在するように見受けられます。

 

「経営」という土台があり、その上に「事業」は成り立ちます。

資金調達、運営管理、マーケティング、財務会計、情報収集、人事採用…

経営の要素は多岐に渡りますが、これらを理解せずに事業を進めることは、運転の仕方を知らずに自動車を運転すること、無免許運転(違反)に等しいのです。

 

そして、会社経営の礎を創るものは「理念」であり、「理念」を創るものは経営者の「価値観」であり、「情熱」。

情熱とは「好き×憤り」の方程式、そして自身の過去の原体験から生まれるものです。

 

「好き」は持続的に人や物事と向き合い続けることのできる動機付けとなり、

「憤り」は行動を起こすため、課題や試練と立ち向かうためのエネルギーとなります。

 

自身の持つ「情熱」を「理念」に。

そして、その「理念」を「経営」に。

 

産出額、市場規模について~長野県の林業の実態を知る~

 

会社経営をする上で、自身の業界を知る、地域の現状を知るという視点が非常に重要です。

「長野県の木材生産の産出額知ってますか!?」という問いかけに対して、会場では首をかしげる参加者も多く、業界の現状を数値でご紹介させていただきました。

■日本

【産出額】

林業生産額 4405億円(木材生産2135億円、栽培きのこ類2270億円)

漁業生産額 1兆236億円

農業生産額 9兆3053億円

【比率】

林業(原木)1:漁業5:農業44

■長野県

【産出額】

林業生産額552億(木材生産46億、栽培きのこ類506億)

農業生産額2,420億円

【比率】

林業(原木)1:農業53

※平成28年度 農林水産基本統計データより

 

数値で見ると改めて林業という市場が他の産業と比較し小規模であることが分かります。

重要なのはこの数値を見て、林業経営者がどのように受け取り、行動を起こすか。

 

数百年、数千年前から私たちの生活と密接に関わってきた森林。

数十年、数百年の時間をかけ先人たちの想いを継ぎ、育ててきた木。

これが大手企業1社の利益で回ってしまうという現実。

 

改めて業界を知るということが、前述の「憤り」にも繋がるのではないでしょうか。

 

平澤林産有限会社 平澤様 ~社内教育、安全管理の徹底~

 

小休憩をはさみ、第二部のパネルディスカッションでは、

長野県伊那市の林業経営者、平澤林産有限会社の平澤社長より自社の経営についてお話頂きました。

 

「林業において最も重要なのは無事故であること。事故が平然と起こるようであれば、林業なんてやらない方が良い。」

 

林業における労働災害の件数は他の産業と比較して、圧倒的に高く、平成29年度では約40人の方が命を落とされています。

(林野庁ホームページより:http://www.rinya.maff.go.jp/j/routai/anzen/iti.html

 

県内一の社員教育の徹底を自負されている平澤林産では、安全管理に対する教育が徹底されており、この10年で起きた事故は1回。

(※打撲程度の軽い怪我のみ)

林業は、マーケティング第一ではなく、あくまでも、一番はやはり安全性であります。

そんな平澤林産様は、安全管理のみに限らず、社員に憩いの場を提供したり、またドローンを活用し安全かつ効率的に森林調査を行う等、活発に取り組まれており、パネルディスカションの前にご講和をいただきました。

 

「社員の環境整備(安全管理、教育、育成)が整っている会社が最後には勝つ!」と力強い言葉。そして、

平澤社長の強い理念、前述の「経営」という土台を意識して事業を営んでいることが強く伝わってきました。

 

 

パネルディスカッション~弊社代表 古川より~

 

パネルディスカッションでは古川より講演内容にあった「経営」「マーケティング」という考え方の具体的なアクションについて、

詳しく解説をさせていただきました。

 

まず経営にはいくつかのフレームがあり、それを知っているかどうかが重要であり、4つ、5つで構わないので、

経営者が自分事化でき、自社に当てはめることのできるフレームを知っていることが重要になります。

 

例えば「3C(顧客:Custmer,自社:Company,競合:Competitor)」というフレーム(考え方)があるが、それだけで自社の「強み」は見えてきます。

 

3Cのうちのひとつ、競合(ライバル領域)を考えた時、

例えば、林業では、A材、B材、C材というが、A材(製材用)のライバルは外材だけでなく、より広義的な見方をすれば鉄骨でもあるわけです。

 

B材(合板用)も、C材(チップ用)も、ライバルは異素材にもあるはずで、ライバルがどこにいるのか、

この視点を自身の業界のみの狭義的な視点で見るのではなく、異業種・異業界も含めた広義的な視点で捉えることが市場で生き残ることに繋がっていきます。

 

最後に、経営とは理念と利益の設計力。

マーケットニーズをとらえ、ライバルにない独自の商品力(製造力、サービス力)…

そして、それを売るための販促(広報、広告)、営業力(提案、対人)…

また、それらを、実行していく人材と組織(チーム力)、財務(資金繰り、管理会計)、固定客化…

そして、それを日々廻していく目標設計力とPDCAマネジメント。

 

これらは独立したものではなく、全部一緒であり、これが繋がっていなければ正しい経営とは言えません。

もし一部ができないのであれば、誰かに託す、任せる、委託するといった手段を取り、経営者自身が勉強し、自分の力にしていくことが必要です。

 

それこそが経営であり、どの業界・業種でも変わることはありません。

 

参加者の声

 

・情熱=好き×憤り、まさに記憶に残りました。生ける「シカバネ」にならないよう、いつまでもある程度の情熱は以て続けていきたいものです。

 

・経営意識と事業管理に関して、フォレストリーダーを通して、教育していく必要性を感じました。

 

・生産性とマーケティングの話はもっと聞きたい。まずは、顧客がどんなことを望んでいるか、洗いざらい出してみたいと思います。

 

・価値観を作るものが何か、考えさせられました。理念と利益。まさに、やはり補助金からの脱却がテーマです。

 

・運転免許がなく自動車を運転するがごとくという話にあったが、経営の事を知らず、林業の事を考えることがいかなる誤りかを知った。改めて、何が他の地域と違うのか、他の森林とどう違うのか、掘り下げたい。

 

・行政的に選定するとそうはならないでしょうが、「顧客が評価すべき!」という見方は良い!顧客が事業体をしっかり選び、委託できれば、それがより良い!

 

・まさに、経営感覚を持った社員の育てる方法、経営感覚が低い経営を変える方法をもっと知りたい。

 

最後に

 

今回のフォーラムでは大変多くの方々にご参加いただき、林業経営について学び、考えていただきました。

衰退産業と言われる林業界ですが、まずは「経営」を知り、業界を知り、異業種にもアンテナを張ることで、新たな市場を創造し、新たな顧客を獲得することが重要です。

 

現在、衣料品や雑貨のセレクトショップで有名なBEAMSが牛乳石鹸共進社とコラボレーションし、衰退が続く東京都内の銭湯の活性化のイベントを開催しております。

(BEAMSジャパンHP https://www.beams.co.jp/company/pressrelease/detail/311

 

「アパレル×銭湯」

まさに既存の枠組み、業界の垣根を超えた取り組みです。

 

「林業×〇〇」の無限の可能性を模索しながら、全国の林業地域活性化のための支援を今後も続けて参ります。

 

林業×マーケティング×リクルートに係るご相談・講演依頼等は、お問合せフォームからお受けしています。

 

ご希望の時期や内容について、お問合せフォームからご連絡いただければ幸いです。
過去の講演実績は以下のURLからご覧いただけますので、併せてご参考ください。
https://chiikino.jp/blog/?page_id=193

 

Posted by wpmaster on 月曜日 1月 21, 2019 Under pick up, すべての記事, 講演&研修 報告

 

大阪より中国道をひた走ること約3時間。岡山県の北西部、鳥取県の県境にその村はあります。岡山県真庭郡新庄村。

日本で最も美しい村連合(http://utsukushii-mura.jp/)にも加盟するその村の雄大な森は美しく、なだらかな清流は優しく、そこで生きる人たちは温かい。人口約900人のこの村はかつて、山陰・山陽をつなぐ出雲街道の宿場町として栄え、歴史的な建造物が今もなお残り、非常にのどかで優しい田舎風景が残る地域です。日露戦争の戦勝記念に植樹されたという「がいせん桜」と名を冠した桜の名所として、春は桜花爛漫の景色が広がります。

 

弊社としては、代表古川と長くお付き合いのある関係者からご縁をいただき、昨年より新庄村の森林・林業に係る基礎調査及び地域戦略策定として村内の基幹産業を軸とした村づくりの一端を担う事業を新庄村役場や村内関係者の皆様と進めております。

今回の事業では、「村づくり」が1つのキーワードとなるため、林業だけではなく、農業、観光、福祉など村内外の関係者から広くアイデアや意見を集め、皆様と共に成果を生み出していくべく、2019年、1月10日、まだまだ正月明けの松も取れぬ忙しい時期に、総勢15名の参加者と共に、新庄村役場中央公民館にて、勉強会・ワークショップ「第一回新庄村林業活性化による地方創生勉強会~メルヘンの里からアップデートせよ~」を開催しました。

役場職員の方々をはじめ、県の森林課職員、森林組合、民間企業の方々と新庄村の地域づくり、山林に関わる多種多様な皆様が一堂に会し、「新庄村の強み」について語り合いました。

 

 

 

強みとは?・・・新庄村とは?

 

弊社代表の古川より、自己紹介、会社紹介を交えつつ、「理念と利益」「課題解決より付加価値」「地域とブランド」についての基本的な考え方をお伝えし、新庄村の強みについて参加者の皆様に考えて頂きました。

強みとは「自分たちが出来て、お客様にも求められていて、他人には真似出来ない」こと。

自分たちの住む村の強みを考えていく上で、マーケティング戦略を考える際のフレームワーク、いわゆる「3C(顧客:Custmer,自社:Company,競合:Competitor)」の考え方を参加者の皆様にクイズ形式で学んでいただきました。クイズにすることで、判ったつもり、知ったつもりがなくなり、腑に落ちるように弊社オリジナルの解釈をいくつか提供しつつ、自分事化していきます。

ひとつに、このクイズでは、
‐「売り物(商品/サービス)」や「売り方(販促/営業)」を強化する思考パターン(自社:Company)
‐「顧客ニーズ」「顧客満足」を把握する思考パターン(顧客:Customer)
‐「競合」を排除する、あるいは包み込む、連携するという思考パターン(競合:Competitor)

 

上記のようなクイズにより、地域における、自分における、マーケティングに関する思考パターンが分かります。

 

人や社会に求められ、かつ他の地域には決して真似することのできない、自分たちの地域のオリジナルにこそ、強み、勝機があるということを体系的に学んでいくわけですが、3Cのマーケティング思考は、その先がポイントであります。それは、地域発、地域内の関係者発による林業(地域)活性化を目指すための基本ワークであり、地域の方々と共に帆走しながら進めてきた全国のプロジェクト事例を合わせて紹介することで、オリジナルのコンセプトを作り出し、自らの行動の源泉(誇り)にしていくことが肝要です。

さて、3C分析の考え方を学んだ上で、実際に新庄村の強みについて参加者の皆様に意見を出し合って頂きました。

 

 

ワークショップ~私たちの強みとは~?

 

5名3班に分かれ、参加者の皆様には、大きな模造紙に新庄村の強み、良さを付箋紙に書き出してもらい、グルーピング、ネーミングをつけてもらいました。出てきたキーワードとして、「がいせん桜」「ブナ林」「野生動物」「水源」「トレイルラン」といった自然環境・地域環境に関わるものが非常に多く、住民・関係者の共通の誇りとして認知されていることがよく分かりました。

また、必ず皆様が書かれていたのが、地域の特産品である「ひめのもち」

こしが非常に強く、優しい甘みのあるお餅。新庄村では昭和58年から生産がはじまり、ふるさと納税の返礼品としても多くの方々から高い評価を得ており、地域が誇る逸品ですので、是非、一度ご賞味くださいね。

おもしろ回答としては「〇〇さん!」「〇〇所長!」といった地域住民の固有名詞が登場している班もありましたが、実はこれが大事なのです。企業経営で戦略を考えるとき、経営資源の最適配分(選択と集中)という言葉がありますが、地域は「人」が少ない。いや「人」こそが資源(地域の強み)であるのです。それを堂々と言える環境作りこそが地域づくりの醍醐味であり、重要であり、またそこに外部資本・外部人材の掛け算をすることで、内発的発展をしていくというところが、地方創生の大上段を構える手前で大事なこととなります。

さて、ワークショップの方は、水生昆虫の具体的な話題もでてきて、盛り上がりまして、まだまだ何か発想が出てきそうな予感…そんなところで一時小休憩・・・。

 

 

他地域の事例に学ぶ~憧れは実は既に存在しているもの?

 

小休憩を終え、後半は弊社が支援を行った(行っている)他地域の事例を紹介。

今回の勉強会で最も参加者された方々の興味、集中、熱気を感じた瞬間でもありました。どのようなプレイヤーが地域にいて、どのような理念を持ち、潜在的な想いを形あるもの、価値あるものとして創り上げていったのか。3Cの要素を意識したワークショップの後だったからでしょうか。他地域の「強み」と自分たちの村との違い、また自分たちがワークショップで「強み」と思っていたことが、実は他地域にもあるのでは…そんな意識を持ち、話を聞く参加者の皆様の真剣な後ろ姿がとても印象的に残りました。そして、3Cにより、周りを見て、比較を一度することにより、ゆえに自分たちの地域の「強み」からこそ、「誇り」がうまれるものであり、自分の地域への愛着が産まれてくるものです。

 

 

ワークショップ延長戦!~まだまだあるぞ!私たちの村の強み!~

 

他地域での事例を聞いた上で、改めて自分たちの強みについて考えていただきました。

他地域の言語化(図式化)された「理念」に触れることで、見えてくる自分たちの強み。
そこに住む人にしか分からないオリジナリティ溢れる回答が続々と出て参りました。

「現役で長寿の人が多い」

「ローカルルール、人を許す器、心の豊かさ」

「チャレンジするフィールドが提供できる」

「花粉症患者が少ない」「この地域の人はDNAが特殊なのではないか」(笑)

そう、「羨ましい」や「憧れ」というものは、自分に無いものを憂う感情ではなく、実は元々持っているものを輝かせたい、もっと磨きたい、そんな気付き・渇望感から生まれるものなのだと思います。実は多くの方が気付いていないだけの素敵な魅力が、新庄村にはまだまだありそうです。

 

 

改めて数字で見る私たちの村~地域調査フィードバック~

 

最後に弊社高田より、新庄村の地域調査結果として、山林に関する市場の推移、全体の市場から見た岡山県、新庄村の林業・木材流通の現状と課題について発表しました。自分の住んでいる地域、自身が生業としているものを「数値」で見ることによって、ワークショップで見つかった強みと照らし合わせ、「本当にそうなの?」「もっと活かせる方法があるんじゃないの?」と新たな可能性を探る興味深々な参加者の姿が印象的でした。弊社として、どの地域をご支援していても思うところでありますが、林業のデータを林業界の人だけが知っているのではなく、地域の人が知ってほしい情報として、どう地域内循環・加工するべきかが、活性化のポイントであり、改めて、開かれた「集まり(コミュニティ)」の必要性を再認識いたしました。

東京が東京であるのは、人の多さではない、閉じていないということだ。

地域が過疎であるのは、人の少なさではない、閉じてしまっているということだ。

 

古川の講演でもよくお伝えする内容ですが、改めて、「外部」と「内部」のコーディネーターとして、地域の連綿たる想いを形にするというお手伝いをさせていただき責任を強く感じるとともに、懇親の場も別途にご用意いただいたことも改めて感謝とお礼とを申し上げます。

 

参加者の声

・森林組合職員 S様
「近隣の市からも、村民に何か還元できるような働き方をしていきたい。」

 

・地域おこし協力隊 T様
「ワークショップを通じて、町づくりは、自身一人だけではできないことを知れた。
私自身は都会に住んでいたことの方が長いので、外からの支援方法を自由に表現できる形をつくっていきたい」

 

・森林セラピー I様
「新庄村に来て長い時間が経っているが、山は大きく豊かになっている。しかし災害も多くなっているので、心配でもある。どのように森と関わるかをこれからも考えていきたい。」

 

・森林セラピー T様
「ワークショップを通じて、これまではダメなところに目が向きがちであったが、新たな良さに気づくことが出来た。森を使って子供たちとふれあう他地域の事例を習って、参考にしていきたいと感じた。」

 

・森林組合職員 S様
「一人一人の違う言葉、感情を大事にしたいと思う、まさに参考になった勉強会だった。品質基準の徹底だけでなく、商品のデザイン、言葉のデザイン等の重要性を学びながら、林業と改めて向き合っていきたい。」

 

・県職員 I様
「森林環境税導入等の時代の変わり目、数十年経ち、林業を取り巻く状況は大きく変わっている。不安もあるが、その中で県として・市として・村としてどのように連携し、一緒に考えていくかが重要で、多種多様なプレイヤーの集まる場は貴重だと思う。」

 

・民間会社 Kさん
「このような機会は、過去に村では無かったので、本当にありがたい。今回、他地域の取組を参考に、ゆえに、オンリーワンを目指したい。まさに、フロンティアとしての最初の一歩が踏み出せた。」

 

・県職員T様
「他地域の事例紹介を聞き、是非深掘りしていきたい。林業と異業種のコラボにも可能性を感じる。」

 

・民間会社I様
「地域によって、素材の使い方(出し方)が異なることが勉強になった。今後のワークショップを通じて、まずは、良い共通言語(キャッチフレーズなど)を創っていきたい。」

 

 

閉会の挨拶~中村副村長より

 

最後に中村副村長より閉会のご挨拶を頂きました。

「何が地域にとって一番合っているかは、意見を出し合ってみないと分からない」
「地域ごとに特色があって良い。1つずつ議論を交わし、まず参加者が『気付く』ことが重要である」

 

地域づくりはゴールがあるようで、見えにくい部分がある中で、また、目標や期限を明確にトップダウンで決められてしまうと、持続性のないカタチになりがちですす。

 

地域の事を、自分たちで、やってみることが大切。

「いわゆる植林、造林で、こうなってほしいと実際に育てていても、1年、2年、また、次の間伐まで、思うように育っているかどうかはわからない。その時になってまた考えて動く、動きながら考えていく。林業もワークショップも一緒で、それが大事なんです。第二回もありますが、皆さんからアイデアを出し合って、動いていければと思いますので、次回からもよろしくお願いします。」

 

中村副村長の言葉と参加者の皆様の姿勢に、村としての一体感ある空気が流れていくのを感じました。

 

最後に

地域の成功事例が、また他の地域を創る礎となり、相乗的に、広く循環し、自立した地域同士が1つの輪となり、社会をつくる。

 

「オンリーワン」「オリジナリティ」「差別化」

これからの時代を生き抜くため、勝ち残るために必要な要素ではありますが、これは手段であり、目的は自分たちの地域の持続性は元より、社会が持続していくこと。

 

「〇〇も良いけど、新庄村も良いよね!」

そんな声が溢れるよう、今後もワークショップを通じて、より多くの人や地域に認知され、村民が心から誇れる「新庄村」であるよう、支援を続けて参ります。

 

第二回勉強会・ワークショップは、2月13日(水)に開催します!テーマは、前回の「強み」とは何か活かし、「マーケティングの基本(何をどこにどう伝えるべきか)」と「お金と正義の話」を中心としたワークショップです。理念なの?利益なの?そこに踏み込んでいきつつ、より多くの参加者の方の声から、新たな新庄村の可能性を探れる場となりますように。新庄村民の方はもとより、住民ではないが、新庄村の為に何かやりたい!という方がいらっしゃいましたら、是非、弊社の問い合わせページより、ご意見を多数いただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

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