大阪より中国道をひた走ること約3時間。岡山県の北西部、鳥取県の県境にその村はあります。岡山県真庭郡新庄村。
日本で最も美しい村連合(http://utsukushii-mura.jp/)にも加盟するその村の雄大な森は美しく、なだらかな清流は優しく、そこで生きる人たちは温かい。人口約900人のこの村はかつて、山陰・山陽をつなぐ出雲街道の宿場町として栄え、歴史的な建造物が今もなお残り、非常にのどかで優しい田舎風景が残る地域です。日露戦争の戦勝記念に植樹されたという「がいせん桜」と名を冠した桜の名所として、春は桜花爛漫の景色が広がります。
弊社としては、代表古川と長くお付き合いのある関係者からご縁をいただき、昨年より新庄村の森林・林業に係る基礎調査及び地域戦略策定として村内の基幹産業を軸とした村づくりの一端を担う事業を新庄村役場や村内関係者の皆様と進めております。
今回の事業では、「村づくり」が1つのキーワードとなるため、林業だけではなく、農業、観光、福祉など村内外の関係者から広くアイデアや意見を集め、皆様と共に成果を生み出していくべく、2019年、1月10日、まだまだ正月明けの松も取れぬ忙しい時期に、総勢15名の参加者と共に、新庄村役場中央公民館にて、勉強会・ワークショップ「第一回新庄村林業活性化による地方創生勉強会~メルヘンの里からアップデートせよ~」を開催しました。
役場職員の方々をはじめ、県の森林課職員、森林組合、民間企業の方々と新庄村の地域づくり、山林に関わる多種多様な皆様が一堂に会し、「新庄村の強み」について語り合いました。
強みとは?・・・新庄村とは?
弊社代表の古川より、自己紹介、会社紹介を交えつつ、「理念と利益」「課題解決より付加価値」「地域とブランド」についての基本的な考え方をお伝えし、新庄村の強みについて参加者の皆様に考えて頂きました。
強みとは「自分たちが出来て、お客様にも求められていて、他人には真似出来ない」こと。
自分たちの住む村の強みを考えていく上で、マーケティング戦略を考える際のフレームワーク、いわゆる「3C(顧客:Custmer,自社:Company,競合:Competitor)」の考え方を参加者の皆様にクイズ形式で学んでいただきました。クイズにすることで、判ったつもり、知ったつもりがなくなり、腑に落ちるように弊社オリジナルの解釈をいくつか提供しつつ、自分事化していきます。
ひとつに、このクイズでは、
‐「売り物(商品/サービス)」や「売り方(販促/営業)」を強化する思考パターン(自社:Company)
‐「顧客ニーズ」「顧客満足」を把握する思考パターン(顧客:Customer)
‐「競合」を排除する、あるいは包み込む、連携するという思考パターン(競合:Competitor)
上記のようなクイズにより、地域における、自分における、マーケティングに関する思考パターンが分かります。
人や社会に求められ、かつ他の地域には決して真似することのできない、自分たちの地域のオリジナルにこそ、強み、勝機があるということを体系的に学んでいくわけですが、3Cのマーケティング思考は、その先がポイントであります。それは、地域発、地域内の関係者発による林業(地域)活性化を目指すための基本ワークであり、地域の方々と共に帆走しながら進めてきた全国のプロジェクト事例を合わせて紹介することで、オリジナルのコンセプトを作り出し、自らの行動の源泉(誇り)にしていくことが肝要です。
さて、3C分析の考え方を学んだ上で、実際に新庄村の強みについて参加者の皆様に意見を出し合って頂きました。
ワークショップ~私たちの強みとは~?
5名3班に分かれ、参加者の皆様には、大きな模造紙に新庄村の強み、良さを付箋紙に書き出してもらい、グルーピング、ネーミングをつけてもらいました。出てきたキーワードとして、「がいせん桜」「ブナ林」「野生動物」「水源」「トレイルラン」といった自然環境・地域環境に関わるものが非常に多く、住民・関係者の共通の誇りとして認知されていることがよく分かりました。
また、必ず皆様が書かれていたのが、地域の特産品である「ひめのもち」
こしが非常に強く、優しい甘みのあるお餅。新庄村では昭和58年から生産がはじまり、ふるさと納税の返礼品としても多くの方々から高い評価を得ており、地域が誇る逸品ですので、是非、一度ご賞味くださいね。
おもしろ回答としては「〇〇さん!」「〇〇所長!」といった地域住民の固有名詞が登場している班もありましたが、実はこれが大事なのです。企業経営で戦略を考えるとき、経営資源の最適配分(選択と集中)という言葉がありますが、地域は「人」が少ない。いや「人」こそが資源(地域の強み)であるのです。それを堂々と言える環境作りこそが地域づくりの醍醐味であり、重要であり、またそこに外部資本・外部人材の掛け算をすることで、内発的発展をしていくというところが、地方創生の大上段を構える手前で大事なこととなります。
さて、ワークショップの方は、水生昆虫の具体的な話題もでてきて、盛り上がりまして、まだまだ何か発想が出てきそうな予感…そんなところで一時小休憩・・・。
他地域の事例に学ぶ~憧れは実は既に存在しているもの?
小休憩を終え、後半は弊社が支援を行った(行っている)他地域の事例を紹介。
今回の勉強会で最も参加者された方々の興味、集中、熱気を感じた瞬間でもありました。どのようなプレイヤーが地域にいて、どのような理念を持ち、潜在的な想いを形あるもの、価値あるものとして創り上げていったのか。3Cの要素を意識したワークショップの後だったからでしょうか。他地域の「強み」と自分たちの村との違い、また自分たちがワークショップで「強み」と思っていたことが、実は他地域にもあるのでは…そんな意識を持ち、話を聞く参加者の皆様の真剣な後ろ姿がとても印象的に残りました。そして、3Cにより、周りを見て、比較を一度することにより、ゆえに自分たちの地域の「強み」からこそ、「誇り」がうまれるものであり、自分の地域への愛着が産まれてくるものです。
ワークショップ延長戦!~まだまだあるぞ!私たちの村の強み!~
他地域での事例を聞いた上で、改めて自分たちの強みについて考えていただきました。
他地域の言語化(図式化)された「理念」に触れることで、見えてくる自分たちの強み。
そこに住む人にしか分からないオリジナリティ溢れる回答が続々と出て参りました。
「現役で長寿の人が多い」
「ローカルルール、人を許す器、心の豊かさ」
「チャレンジするフィールドが提供できる」
「花粉症患者が少ない」「この地域の人はDNAが特殊なのではないか」(笑)
そう、「羨ましい」や「憧れ」というものは、自分に無いものを憂う感情ではなく、実は元々持っているものを輝かせたい、もっと磨きたい、そんな気付き・渇望感から生まれるものなのだと思います。実は多くの方が気付いていないだけの素敵な魅力が、新庄村にはまだまだありそうです。
改めて数字で見る私たちの村~地域調査フィードバック~
最後に弊社高田より、新庄村の地域調査結果として、山林に関する市場の推移、全体の市場から見た岡山県、新庄村の林業・木材流通の現状と課題について発表しました。自分の住んでいる地域、自身が生業としているものを「数値」で見ることによって、ワークショップで見つかった強みと照らし合わせ、「本当にそうなの?」「もっと活かせる方法があるんじゃないの?」と新たな可能性を探る興味深々な参加者の姿が印象的でした。弊社として、どの地域をご支援していても思うところでありますが、林業のデータを林業界の人だけが知っているのではなく、地域の人が知ってほしい情報として、どう地域内循環・加工するべきかが、活性化のポイントであり、改めて、開かれた「集まり(コミュニティ)」の必要性を再認識いたしました。
東京が東京であるのは、人の多さではない、閉じていないということだ。
地域が過疎であるのは、人の少なさではない、閉じてしまっているということだ。
古川の講演でもよくお伝えする内容ですが、改めて、「外部」と「内部」のコーディネーターとして、地域の連綿たる想いを形にするというお手伝いをさせていただき責任を強く感じるとともに、懇親の場も別途にご用意いただいたことも改めて感謝とお礼とを申し上げます。
参加者の声
・森林組合職員 S様
「近隣の市からも、村民に何か還元できるような働き方をしていきたい。」
・地域おこし協力隊 T様
「ワークショップを通じて、町づくりは、自身一人だけではできないことを知れた。
私自身は都会に住んでいたことの方が長いので、外からの支援方法を自由に表現できる形をつくっていきたい」
・森林セラピー I様
「新庄村に来て長い時間が経っているが、山は大きく豊かになっている。しかし災害も多くなっているので、心配でもある。どのように森と関わるかをこれからも考えていきたい。」
・森林セラピー T様
「ワークショップを通じて、これまではダメなところに目が向きがちであったが、新たな良さに気づくことが出来た。森を使って子供たちとふれあう他地域の事例を習って、参考にしていきたいと感じた。」
・森林組合職員 S様
「一人一人の違う言葉、感情を大事にしたいと思う、まさに参考になった勉強会だった。品質基準の徹底だけでなく、商品のデザイン、言葉のデザイン等の重要性を学びながら、林業と改めて向き合っていきたい。」
・県職員 I様
「森林環境税導入等の時代の変わり目、数十年経ち、林業を取り巻く状況は大きく変わっている。不安もあるが、その中で県として・市として・村としてどのように連携し、一緒に考えていくかが重要で、多種多様なプレイヤーの集まる場は貴重だと思う。」
・民間会社 Kさん
「このような機会は、過去に村では無かったので、本当にありがたい。今回、他地域の取組を参考に、ゆえに、オンリーワンを目指したい。まさに、フロンティアとしての最初の一歩が踏み出せた。」
・県職員T様
「他地域の事例紹介を聞き、是非深掘りしていきたい。林業と異業種のコラボにも可能性を感じる。」
・民間会社I様
「地域によって、素材の使い方(出し方)が異なることが勉強になった。今後のワークショップを通じて、まずは、良い共通言語(キャッチフレーズなど)を創っていきたい。」
閉会の挨拶~中村副村長より
最後に中村副村長より閉会のご挨拶を頂きました。
「何が地域にとって一番合っているかは、意見を出し合ってみないと分からない」
「地域ごとに特色があって良い。1つずつ議論を交わし、まず参加者が『気付く』ことが重要である」
地域づくりはゴールがあるようで、見えにくい部分がある中で、また、目標や期限を明確にトップダウンで決められてしまうと、持続性のないカタチになりがちですす。
地域の事を、自分たちで、やってみることが大切。
「いわゆる植林、造林で、こうなってほしいと実際に育てていても、1年、2年、また、次の間伐まで、思うように育っているかどうかはわからない。その時になってまた考えて動く、動きながら考えていく。林業もワークショップも一緒で、それが大事なんです。第二回もありますが、皆さんからアイデアを出し合って、動いていければと思いますので、次回からもよろしくお願いします。」
中村副村長の言葉と参加者の皆様の姿勢に、村としての一体感ある空気が流れていくのを感じました。
最後に
地域の成功事例が、また他の地域を創る礎となり、相乗的に、広く循環し、自立した地域同士が1つの輪となり、社会をつくる。
「オンリーワン」「オリジナリティ」「差別化」
これからの時代を生き抜くため、勝ち残るために必要な要素ではありますが、これは手段であり、目的は自分たちの地域の持続性は元より、社会が持続していくこと。
「〇〇も良いけど、新庄村も良いよね!」
そんな声が溢れるよう、今後もワークショップを通じて、より多くの人や地域に認知され、村民が心から誇れる「新庄村」であるよう、支援を続けて参ります。
第二回勉強会・ワークショップは、2月13日(水)に開催します!テーマは、前回の「強み」とは何か活かし、「マーケティングの基本(何をどこにどう伝えるべきか)」と「お金と正義の話」を中心としたワークショップです。理念なの?利益なの?そこに踏み込んでいきつつ、より多くの参加者の方の声から、新たな新庄村の可能性を探れる場となりますように。新庄村民の方はもとより、住民ではないが、新庄村の為に何かやりたい!という方がいらっしゃいましたら、是非、弊社の問い合わせページより、ご意見を多数いただければ幸いです。