「古川さん、この業界のコンサルやって儲かるの?」。業界の方から、度々このような質問を受けます。私は、“儲かる”という直接的な言葉はあまり好きではないので、このように聞かれると色々と思うところがありますが、この度ここに想いを書いてみようと思います。
よく「他の業界ならばもっと仕事があるだろうに、なぜこの業界なんですか?」という質問を受けます。それは、「木と森が好きで、そこに暮らす人たちが好きだからです。」の一言に尽きます。私は20代の中盤、地域づくりインターンに参加し、そのつながりで全国各地の農山村地域に行き、農作業、林業作業のお手伝いをしてきました。そこで出会った地域を愛する熱き行政職員、人生の先輩の山行さんの知恵や高いチェーンソー技術をもったプロたち、彼らの生き様がかっこよかった。しかし「儲からない」という声をきき、自分に何ができるか。私は、彼らが儲かるために何ができるか、それは間接的に支援すること、経営力(マーケティング、営業支援、財務会計、事務機能支援)を高めていきたいとなり、28歳にして初めて社会人となり、船井総研にまず就職したわけです。
そこで、「林業や木材業のコンサルがなぜ成り立つのですか?」という質問について戻りますが、それは実は以下のようなことであって「お客さんはいるんですか?」「どんなお客さんがいるんですか?」「いくらもらっているんですか?」「どんな結果を出していますか?」という具体的な質問に言い換えることが出来るでしょう。それをこれから書いていきます。
さて、それは、大分県へ講演に行った時のことでした。以前、弊社の「経営実践研究会」にもご参加された福岡県の製材業経営者であるXさんが、大分県での講演にも駆けつけて下さいました。そして懇親会で、若手の参加者の兄貴として、こうお話されました。
「5000円、1万円ってすぐ飲み会でお金を使うくせに、勉強会に5,000円出してくださいというと、君らはなかなか出さないだろ!?古川さんを呼ぶのに、ここにいる人たちが一人1万円払えば、毎月来てくれるんだから。そうゆう風にお金を使おうよ!古川さんのようなコンサルの情報は、たくさんの交通費と人脈の積み重ねとで得て来たもの。みんな自分でお金出して、勉強して、実践してこうよ!」(と言いながら、この日は3次会まで盛り上がりましたが・・・)
そうなんですよね。山村ビジネス、林業木材業、この業界では、自ら「知識(ソフト事業)」に対してお金を払う人は少ないんですね。理由は2つあって、そもそもソフトに価値がないと思われているのと、補助金で受講できてしまうという2点です。実際に、地域づくりや林業関係のセミナー・講演には、質の高い講演が沢山開催されている一方で、補助金、補助金と予算が投じられて、受講が無料になっている場合が多いのです。
だから、勉強する内容も、右から左。自らに投資してないから、学びを実践されていない。ならば、意思あるお金を出してもらいたくなるのです。すると我々は、講演でいただくお金以上の価値(事例、経営手法、ネットワーク紹介)を出します!と双方が本気になる、ということですよね。
例えば、年商1億円とか3億円の事業者から100万、300万円のコンサルフィーをお支払いただいて、コンサルティングの仕事を請ける時があります。それは、経営者として非常に勇気ある投資と思います。素直、勉強好き、プラス発想であれば、我々はそれ以上の営業利益(償却前経常利益など)や「キャッシュフロー」を増やしていくよう尽力します。クライアントと共に営業や交渉へ出向き、実践をサポートする場合もあります。あるいは、直近の利益だけがゴールでなくても、数年後そうなるための土台(理念、ビジョン)を必ず作り、社内に浸透させていく。お客様によって成功の定義、ゴールの定義はことなりますから、スタート時でどこを目指すかを決め、スタートする。その中で、
- 投資として、コンサル費用を自ら出す。
- それに応えるために結果を出す(一緒に出す)。
- だから、仕事がある(あり続けられる)。
ゆえに、儲かる、お互いが儲かる、ということではないでしょうか。
厳しいですし、楽ではありません。現実は、自転車操業的です。私たちのような仕事は顧客づくりが非常に難しい。だから私たちは事例(結果)を増やすしかありません。行政型の支援については割愛しますが、民間事業体の場合、とあるご支援先の某木材流通業では、支援前の売上が4億円のところ→(1年後)5億円→(2年後)6億円と増加しました。また、とある林業製材会社では、新たなビジネスカテゴリーを生み出し、コンサルティング前と比べた毎年の最終利益が1,000万増近く増加するまでに成長しました。また、某製材メーカーでは、支援前は、マイナス1,000万の営業利益だったところが、1年後マイナス200万→2年後、プラス200万へと黒字化しています。ある地域工務店では、年間受注5棟くらいだったところが、3年間の支援を通じて現在では年間約20棟を受注するブランド工務店になっています。ある製材加工メーカーは、2回の顧客獲得型のプレゼンテーション支援で、その見込み顧客から3年で結果1億円の売上を上げられました。また、ある林業・製材業の会社は、5か年連続業績向上で、ブランド国産ハイブリッド車を社用車にされています。
しかし、これも巨視的にみると間違った売上・利益増と解釈される場合もあります。あくまで利益を上げるのは、会社が社会の公器として、社会的、教育的に何かを興すための手段であるべきだからです。ただの私腹を肥やす利益創造だけの企業に社会的価値はなく、やりたい理念を、とりたい利益から実現してくビジョン設計もおこない、持続的な発展をしていくことが「儲かる」ということで一番肝要なことです。
経営における成功の定義は、スポーツのように分かりやすいものではいのですが、共通しているのは、経営者が素直、勉強好き、プラス発想であって、実践を繰り返しているということ。コンサルティングが100点ということはありません。経営者にとって、成功の確度を高めるためのセカンドオピニオンとして私たちを使って、一定の期間、経営の掛け算をしていくことで、お互いが儲かっていくのです。
私は、運が良いのはそういう経営者(クライアント)と出逢えていることだけなのかもしれません。そのために、経営実践研究会というものを定期的に大阪で開催しています。不安があるかたは、まずこちらを覗きに来てください。参加当初はあまりプラス発想ではなかった方でも、リーダーシップ力を増して、明るくなり、前向きな性格へと変わられた経営者もおられます。
いま、大きく時代の流れが変わり、地球規模のエネルギー革命が始まっている、時代の境目に来ています。その中で、先見性を持って、理念やビジョンを高らかに持ち、現実着々とビジネスをすることがいかに大事か。そして経営に携わる人たちが、変革していくこと。強き、よき、未来の見える人材が増えていくこと。戦略提案、実行支援、体質改善。そして、自立経営。そのためには私の自分改善、サービス改善が一番で、自分が変り続けていかないとなりませんので、忌憚なきご意見ご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
(地域再生・森林再生コンサルタント古川大輔日記 2014.03.19より編集)
代表取締役 | 代表コンサルタント 古川 大輔 Daisuke Furukawa
twitter: @daisukefurukawa
blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記
新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前支援、高野山・高野霊木プロデュース、経営実践研究会の実施等を行い、全国の林業木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山金剛峯寺境内案内人。