令和6年度 第3回 経営実践研究会&望年会を、12/14(土)に開催いたしました。
全国から集まった約20名の参加者様。
林業・製材・木材流通業・工務店等の経営者及び従業員、市町村行政職員、一般社団法人の代表理事など、トータル林業まちづくりを実践する多様な顔ぶれがご参加くださいました。
今回のテーマ
~魅力的な人材が集まる会社、定着する会社とは?~
人材不足、超売手市場の傾向はどんどん強まってきています。
人がこない、(優秀な)人材が欲しい!!というのは、今や全国どの業界でも最重要課題の1つですね。
人材をメインテーマに、今回は以下の次第(アジェンダ)で行われました。
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Ⅰ. 参加者より近況報告(今年の振り返り)
Ⅱ.最近の古川総研と最新情報
1.木で建てるシンポジウム(木構造世界)
2.林業経済学会から 森林環境税を実践する自治体最前線!
Ⅲ.人材育成と人材採用
1.最近の人材市場、人材定着、評価制度に関する課題提起
2.ゲストスピーチ:飛騨五木グループ ㈱森とみずのちから 高岸昌平氏
&ディスカッション
Ⅳ.毎年恒例!日経ヒットランキング×林業ヒットランキング
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Ⅰ. 参加者近況報告
参加者の近況報告(年間振り返り)からスタート!
参加者の近況報告もこの研究会の醍醐味の1つ。
「他の会社、経営者がどのような事業展開をしているのか、非常に刺激になる」という声多数です。
今回の参加者からは、林業木材業建築業の本業の展開状況、からはじまり、木の繊維のアパレル事業、アート工芸品事業、エネルギー事業、ウイスキー樽事業などなどなど・・・
今回も刺激的な林業/木材/地域ビジネス情報をたくさん聞くことができました。
皆様のビジネスのことなのでここでは多くを語れませんが、ここだけでも参加の価値あり、好評です。
Ⅱ. 古川総研より話題提供
当社からは大きく2つの話題の提供をいたしました。
「木で建てる 講演会」より、林業、木材、地域づくりに活かせる学び
令和6年10月16日(水)林野庁近畿中国森林管理局 桜ノ宮合同庁舎で開催された、古川がコーディネーターを務めた「木造建築の架構と形態の魅力展」における「木を建てる 講演会」について報告。
(講演会当日の様子はこちらのブログ参照)
木構造の世界の巨匠である稲山正弘先生の手がけた事例を中心に、話題提供。
稲山先生の構造事例については先のブログでもほんの一部をご紹介しましたが、参加者の中からも、いったことある!みたことある!わざわざ見学に行った!と、林業側の視点、製材側の視点、工務店・建築士側の視点から意見が広がり、今後の、公共木造に関する可能性についての示唆がなされるディスカションとなりました。
また、この講演会で古川が話題提供した設計士への問いかけから翻って、林業、木材側は建築側への理解をしようとしている?と、美味しい食べ物やお酒に例えて?!皆様にご提案させていただきました。
(詳しくは、講演や研究会などで!なかなか面白いのでおすすめです!)
林業経済学会@九州大学での研究報告(古川)
東京大学大学院 林政学研究室に社会人博士課程として所属している当社代表 古川。
2024年11月22日~23日 に、林業経済学会で研究発表を行った内容について、皆さまに報告させていただきました。
今回の学会で発表した研究テーマは
「兵庫県佐用町における町有林化事業の実態分析~市町村森林ビジョンの実装と森林環境税の活用事例として~」
自らの研究分析と、森林環境税と自治体における最前線の研究などについて報告しました。
特に森林環境税については議論が盛り上がりました。
今回の研究会には市町村の林務担当者が2名ご参加くださっていたのですが、ある参加者から「うちの自治体、年間200万くらいの森林環境税しかないんです」声があった一方、ご参加の行政職員が所属する2市町村の森林環境税はどちらも2億円程。
森林環境税は一人1,000円/年の徴収ですので、2億円は20万人分の税金です。
20万人分の負担(期待)に、応えなければという想いをその職員の方々は強く持ってらっしゃいます。
どちらの市町村も、ビジョン⇒基本計画⇒実施計画⇒委員会(勉強会)⇒施策実施としっかりされている自治体です。
しかし森林環境税がほぼ同額でも、林務担当の職員が20名のところと、数名という差なども実際にあります。
古川が報告した佐用町の事例をもとにしながら、参加企業経営者からの質疑やコメントも参考にしつつ議論が展開され、それぞれの自治体の特徴、職員の熱意を生かして、市民の福祉の向上のために新しい風が吹いていくことが期待される時間にもなりました。
Ⅲ. 人材育成と人材採用
休憩をはさんで、いよいよメインテーマです。
人材市場データと経営フレームから見えてくる、これからの人材採用/定着
まずは、古川ちいきの総合研究所から、最近の人材市場をデータから読み解いたうえで、
「これからの人材採用のカタチ」
「社員が定着する会社が満たしている要素」
「人事評価で陥りがちなエラーと見落しがちな重要ポイント」
当社経営フレーム(ちいきのフレーム)から解説、提案をさせていただきました。
人口減による労働力不足、これからさらに加速していく超売り手市場。
バブル崩壊~就職氷河期~リーマンショック~コロナ禍で、長く続いた買い手市場マインドを、どうリセットして今後の人材採用に臨むか。
どうやったら、社員が本当の意味で幸せに働ける職場をつくることができるか。
多くの経営者が陥りがちな評価エラーと、大事にするべき視点。
どうしても、今回皆さまに伝えたかった内容です。経営者と被雇用者の立場で視点も違ったりと、熱のこもった報告になりました。
飛騨五木グループ ㈱森とみずのちから 高岸昌平氏
高岸氏は、高崎経済大学に在学中(休学中)の2019年の約5か月、大阪に引っ越してきて当社のインターン生として従事されました。
その後、大学を卒業し、当社の研究会メンバーでもあり、立上げ支援をした飛騨五木株式会社に就職。
現在、勤務5年。
オウンドメディア「響 hibi-ki」ライター業務から、森について楽しく学べるボードゲーム「FOREST BALANCE GAME」開発や場づくり運営、イベント開催など教育事業まで、根気強くかつ華々しく展開されたのち、今は関連会社である小水力発電の事業会社へ出向、各地で事業立ち上げから主担当として携わるなど、骨太に大活躍中です。
飛騨五木株式会社は、現在、従業員120名。
多角的に林業の六次産業化を展開し、さらにすばらしい企業になっていっています。
岐阜で展開していた小水力発電のノウハウをもとに全国展開すべく「株式会社森とみずのちから」を2022年12月に設立。
高岸氏はそこに出向して、拠点のある奈良県を中心に活動されています。
当時の研究会の参加者でもあった、飛騨五木株式会社の親会社である株式会社井上工務店の井上博成氏は、古川編著の書籍「森ではたらく!27人の27の仕事」の27人の1人でもあります。
当時、京都大学の大学院生(博士課程)に所属しつつ、井上家のビジネスの中核を担う経営者として研究会に参加され、その中で高岸君を見出し採用してくれました。
インターン生だった高岸君が、この会社に就職し、そして働いて5年目。
会社にも定着しているうえ、活躍はめざましく、仕事での信頼も抜群。
その要因をお話ししてほしいと、ゲスト講師に抜擢させていただきました。
【お話いただいた内容】
・なぜ、地域(林業・山村)に興味を持ったのか。
・なぜ、古川ちいきの総合研究所にインターンにいったのか。
・古川総研で何を学んだのか、
・なぜ、飛騨五木を選んだのか
・飛騨五木での仕事で、インターンの経験が生かされたことは何か、
・仕事を始めて、新たに学んだことはなにか。
・古川メソッド”6つの悦び”で、会社の評価をするとどうなっているか。
特に印象的だったのは、以下でした。
・経営者が未来を描き、ビジョンをつくる必要性
・何が起こるかわからないが、その船に乗ってみたい、景色を見てみたいと思ったこと
・風通しの良い社風があったこと(意見が言える、仲間、制度など)
・社内の権限(経費)なども他社と比べて自由度が高いこと
・自己成長については、支援体制もあるし、実感も強いこと
・経営者が覚悟しなければいけない、採用と定着のポイントを“はたらく6つの悦び”視点で評価
現在の採用の中で、お金だけじゃない!好きを仕事にしたい!そして自ら前向きに動く人材を、どう会社として受け入れるか、作っていくか、たくさんのヒントがありました。
もちろん、給与などの労働条件や評価制度に対しても、業界の平均が低いからと甘えず、賃金や経費権限も高めていかねばということも、
ご参加の経営者の方々には身に染みたかもしれません。
その後のディスカションでは
・高岸氏が特殊解ではなく、自社を振り返ると経営者として従業員のことへの考えが足りないことへの気づき
・従業員としても、経営者の視点にも立ちつつ自分たちがやらねばならないことへの発想
などの議論が交わされ、今後やらねばならないことの指針がたくさん見つかり、満足度の高い研究会になった模様です。
Ⅳ.毎年恒例!日経ヒットランキング×林業木材業界ヒットランキング
最後は、毎年恒例の「日経ヒットランキング×林業木材業界ヒットランキング!」
ランキング詳細は、こちらのブログをご覧ください。
こちらも、トレンドあり、参考になる情報あり、ダジャレあり?!
今回も感心と関心、笑いの絶えないヒットランキングになりました。
研究会後は、毎回恒例の懇親会@峠!!今回は大忘年会(大望年会)でもありました。
あまりに盛り上がりすぎて「FOREST BALANCE GAME」をしわすれたのが少し悔やまれますが、それはまた機会を設けたいと思います!
望年会は、二次会、三次会も盛り上がり、四次会、五次会まで続いたとか・・・
研究会を終えて
参加者の声
■一般社団法人 代表理事
事例発表で、若手従業員の意見が聞けたのが特に良かった。雇用主の課題として、世代が離れた職員との向き合い方がわからなくなっている場合があると思います。 どうすれば、仕事に向き合ってくれるのか?モチベーションを高められるのか?また、自分の働く意味は何か?普段気をつけていることが正しいのか?など、他企業の人から意見や発表を聞けることが貴重でした。
■林業・製材業・工務店業 従業員
高岸さんの発表がとてもよく、高岸さん本人の能力は大きいが、能力を引き上げる経営、会社作りが出来ているからだと感じた。 趣味や特技と仕事をかけ算する面白さは自分自身に置き換える事もできた事と、今後育成する際の考え方としても仕事への熱量が上がると感じたので大切だと思った。
■林業/製材/工務店/不動産/信託 従業員
学問(や法令)と実践とフレームワークを行き来するような視点での整理が独自だなと感じ興味深く特に良かった点と感じました。
■ 一般社団法人 代表理事
高岸さんが古川イズムを継承しているのが面白かったです。
中小企業の経営者ほど、毎年同じことを繰り返しがちだと思います。
若手だけでく、中年のクリエイティビティを育てたり、若手の非認知能力を向上させるような活動や教育があると良いかなと思っています。つまり、どの年代でも誰かに夢を語ることを認める社会があるといいですね。
■建築、木材加工業 代表取締役
幅広い内容で、勉強になることと刺激を多くいただいた!
特に、ビジョンの話の中で、期限を組み立てて卒業という言葉は響いた!
また、リアルな報告が聞けて、同じ感覚もあれば、今後あり得る問題等を先に聞けてよかった。
そして、ゲストスピーカーも、従業員であれだけのことを考えているとは…と感心した。
あれだけの人材を育てていけるようにこちらも頑張りたいと感じる内容でした。
■林業会社 経営者
経営に関するセミナー研修は多数あるけれど、林業の実情をしっかりしっている方が主催する勉強会は少ないので、とても有難いです。また業界に染まりすぎていないのもよいです。自分を見直すこともできたし、採用が大変な時代、独立を推進していく、協業パートナー制を導入するなど、次のステップへと進んでいきたいと強く想えました。
■行政職員
研究会序盤に木曽五木始め樹種の話をしてくださって、あまり木のことを知ろうとしていなかったなと気付かされました。森林法届出が日々の業務になっていましたが、樹木や木材の魅力にも触れて、市民に伝えられたらいいなと思いました。本日はありがとうございました。
■木材加工 従業員
理念・ビジョン→事業ポートフォリオ→6つのよろこびという整理がまとめとして腑に落ちました。参加者のみなさんは林業従事者や工場の従業員など、リアルな声をイメージしながら聞いていたように感じました。
■木材コーディネーター(経営者)
フレームワークのことは、忘れがちですね。普段の業務に忙殺されがちで、定期的な掘り起こしが経営者にとって大切だと思います。毎回、研究会の最後のまとめに挟んで欲しいです。
■市役所職員
本質的価値と付加価値というところが刺さった。
これまで移住や観光という外からの付加価値が評価されてきた。
その間、外部からの効果以上に内部の損失が多くなっている現状から、
改めて、本質的価値が見直されようとしてきている。
この失敗には、おそらく、目指す長期的将来像のビジョンが欠落していたからだと考える。
会社の成長と自分の成長がマッチングする人材育成。ここを目指したいなと。
ただ、ここを目指すためには会社の理念、トップのビジョンが非常に大切となってくると感じました。
最後に
熱く純粋に、林業、木材、地域の話ができ、そしてその理念をしっかりビジネスとして成立させて実践している人たちが交わり合う研究会。
とはいえ、林業、木材に関係する皆さまだけでなく、異業種、森林林業に興味がある方など、広く門戸を開いている研究会です。
次回は春頃開催予定です。
詳細が決まり次第、WEB、SNS(Facebook)、メール等でご案内いたします
皆さまのご参加を心よりお待ちしております!