日本の森林組合ってのはどうあるべきなの?
全国で約644団体あるという、森林組合(2014年3月末現在)。この日は、とある森林組合にて、ヒアリングとプレコンサルティングを行いました。参事、専務、総務課長の3人と、私を合わせて計4名。当時開催した、地域材ブランド化セミナーへ当組合の参事が参加して下さったため、フォローとプレコンサルのため訪問させていただき、現場の話や今後の夢、あるべき姿についてお話をうかがいました。組合の課題、補助金の問題等、色々と語る参事を前に、専務のYさんがおっしゃいました。
「古川さん、日本の森林組合ってのはどうあるべきなの?」
講演やセミナーの際にも、度々このような質問を受けるのですが、この後は“日本の森林組合がどうあるべきか”というのは、補助金事業に頼るべきか、それとも民間企業のように儲けていくべきかといった議論となるでしょう。しかし私は変化球で、こう答えました。「そこに答えは出せません。それが答えです。」
ラーメン業界と林業界
「だってね、日本のラーメン業界はどうあるべきか?と質問する人は、いませんよね?スープが違う、製麺方法が違う、接客が違う等々・・・ラーメン屋の店主がそれぞれに“当店の自慢はこれだ!”とこだわりを出しているから、そこに共感するリピーター客が付いていく。それは林業界でも同じで、あなたがどうしたいんですか?と答えます。しかし補助金へ依存するほど、事業に振り回されて、仕事の中身が面白くないのも事実でしょう。先進的な活動をして、できる限り自助努力をするのが妥当です。先々の顧客となる原木流通、製材所、そして工務店や材木屋に振り回されているのも、山側の事実です。企業のCSRで植林は美しいと持て囃される一方で、昔から山林管理を続けてきた森林組合には光が当たらない。それでいいとは思えないんです私は。だってあなた様の組合には、山の知識も歴史においても、沢山の長所があるでしょう。それを活かしたいと想いませんか?但し、それでも手放して良いやと思うところは、それで良いと思います。広い林業界、そのような組合がいても良いでしょう。
やりたい理念と、とりたい利益
肝心なのは、“やりたい理念”と“とりたい利益”があること。商品力、販促力、営業力を高めて、施主と山を繋ぐこと。それによって、山から、知識と経験というワクワク感を届けていくこと。そういう組合があってもいいですし、それをお手伝いするのが私の仕事です。全国の森林組合がこうあるべきという統一的な答えは、無いのではないでしょうか。
仮想的(競合)、○○町森林組合とどう差別化するのか
仮想的(目標)、××町森林組合の何をどう真似るのか
夢を組織に取り入れていくことに、民間企業であるとか、組合であるとかは、関係ないと思いますよ。」この時私は、このように答えました。しかし思い返せば大学生の頃、研究では「日本の農業はこうあるべき!日本の森林組合はこうあるべき!」と主張する立ち位置であったものです。「個の発想(自立、自前、自主、自発)」これこそが「民意の発想」になるとするならば、私自身がこの発言をするまでに変化と時間を要していたわけです。改めて、以下を常にコンサルティングの信条としています。
理念なき利益は犯罪であり、利益なき理念は寝言である。
業界や業種、業態に関わらず、繰り返しこのメッセージをお伝えしたいと思います。
(地域再生・森林再生コンサルタント古川大輔日記 2005.11.28より編集)
代表取締役 | 代表コンサルタント 古川 大輔 Daisuke Furukawa
twitter: @daisukefurukawa
blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記
新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前支援、高野山・高野霊木プロデュース、経営実践研究会の実施等を行い、全国の林業木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山金剛峯寺境内案内人。