2009年の岐阜県恵那市(第一回)を皮切りに、
記念すべき10回目を迎えた、産地巡礼(旧 現地研修会)。
プレミアム産地と出会い、知り、学ぶ旅。
2017年秋は、木曽ヒノキ備林の見学に続いて、
「日本一美しい村」に選出される岐阜県東白川村を訪れました。
霧雨が降る天気の中、
杉檜の森はまるで白いベールに覆われたようで、
幻想的な風景が広がっていました。
山間には、お茶畑も目立ちます。
ここは、約600年前、大沢村蟠龍寺の住職が
宇治から茶の実を持ち返り、茶の栽培を広めたと伝承される、
ひがし白川茶の産地でもあるのです。
視覚的にも静寂を感じる道中。
左右をお茶畑に囲まれ、その奥に東濃桧、杉の山が連なる。
国道41号線をまっすぐ進んだ先に、
いきいきと働く“仕事人の活気”に満ちた工場が現れました。
「山と共に、あしたをつくる。」株式会社山共です。
工場の外にはスタッフの車が均整に並び、
フォークリフトが滑らかな動きで地域材(東濃桧、長良杉等)を運んでいます。
そして中に入ると、事務所の皆さまが、
温かい笑顔で迎え入れて下さいました。
会社をご案内して下さったのは、
株式会社山共の田口房国社長。
当社の会社概要は、ご覧の通りです。
社名 株式会社 山共
所在地 岐阜県加茂郡東白川村越原9 76 番地10 TEL 0574-78-2516 FAX 0574-78-2236 代表者 代表取締役 田口房国 社員 14人(うち2名はアルバイト期間中) 創業 1955年12月 |
オフィス、最初に目に留まるテーブルは??
「こちらは、うち(山共)の材で作ってもらったテーブルです。」
事務所に入ってまず案内して下さったのは、打合せスペースにある木製テーブル。
近くの木工屋さんで制作販売されている商品だそうですが、
独自の加工技術によって、木材特有の「反り」や「曲がり」が発生しにくい製品です。
山共は原則として木材の「部材屋さん」です。
最終製品を作るメーカーに対して、素材を納めるお仕事。
しかしながら、田口社長を始めスタッフの皆さまは、
“どのような最終製品として使われるか”を意識して部材を製造されています。
事務所でお客様を迎えるテーブルも、
自社製品の最終形態を示す一つの象徴品ということ。
きちんと自社の最終商品にコミットしていること。
一つのアイテムからも、
お客様の先にいる、お客様(最終顧客)に対する責任とプライドを感じるのです。
一年の計は元旦にあり!?
さらに、壁にはびっしりと、習字の色紙が貼られています。
新年、社員全員で「一年間の決意」を書初めにしたため、
事務所の壁面に貼りだしているのです。
田口社長の文字は「終わらない挑戦」。
皆さん、見事に違う言葉が書いてあります。
隣を見ながら書初めするんでしょうか??気になってきました・・・
“一年の計は元旦にあり”とは言いますが、継続が要です。
宣言して貼っておいて、見られる意識を持つこと。
どの会社や家庭でも、すぐに真似できる習慣ですね!
弊社代表 古川が山共様のブランディングプロジェクトに通い始めたのは、
今から6年前のこと。当時(2011年1月)の色紙も残して下さっていました。
そこには、「共に走る」の文字。
日焼けした色紙に、月日の流れを感じますね。
山共流 福利厚生
事務所の中をさらに進むと、
予定表のホワイトボードには、「カレー」の文字。
そう、山共では、隔週土曜日はカレーの日。
田口社長のお母さま手作りのカレーを皆で食べながら、
最近のできごとなど雑談するそうです。
社員とのコミュニケーションづくりを大切にしたいという社長の想いもあり、
長年、継続されています。
事務所机の隣には、なぜか滑り台が置かれています。
急きょ、事務を手伝うことになった女性が子育て中で、
当時9カ月のお子さんを連れて働くようになり、
徐々に子供用アイテムが増えていったのだそうです。
ちなみに、「保育園落ちた日本死ね」のフレーズが流行した2016年。
田口社長がSNSに、このように投稿されていました。
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【2016年4月1日の投稿】
「保育園落ちた、日本死ね」というのが最近流行っていましたが、
私としては「口が悪いなぁ」くらいにしか思っていなかったのですが、
ふと、うちの会社の事務所には小さい女の子がいることを思い出しました。
急遽事務員が必要になり、
知り合いだった女性に声をかけて来てもらうことにしたんですが、
その時に当時まだ9ヶ月だったTちゃんも一緒に来ました。
まだ乳飲み子でしたし、這い這いし始めた頃でしたね。
事務所の中にはおもちゃとか、柵?とか、誰が持ってきたのか滑り台までできて、
さながら託児所のようになっていきました。
初めて歩いた時や少しずつ言葉を喋るようになったりだとか、
休憩後にお片づけを手伝ってくれる姿は、
私も含め社員の癒しにもなっていると思います。
そういえば私も小さな頃、事務所や工場の中で遊んでいたなぁと思い出しました。
最初は戸惑いの見られた社員たちも、「ま、いいんじゃない」みたいな感じなって、
今では「いないと寂しい」という感じです。
(最近は2歳になって、自分でタブレットを操作してyoutubeを
見ているのが驚きですが笑)
こんなことが普通の会社で出来るとも思いませんが、
「保育園落ちた、日本死ね」という言葉の響きの中には、
保育園受かった→勝者
保育園落ちた→敗者
0か100、みたいなギスギスした感じがあって、
こういう「ま、いいんじゃない?」的なゆるさが失われつつある、
今の社会の雰囲気を感じてしまいますね。
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ここが、山共フォレストの陣地!!
さて、産地巡礼(現地研修会)に話題を戻します。
製材業として昭和30年に創業された株式会社山共。
そして平成29年の今年には、林業部門のグループ会社として「株式山共フォレスト」が設立されました。
こちらは、山共フォレストの事務所です。
ちょうど現場から戻ってこられた副社長の榊間さんが、丁寧に案内して下さいました。
山共フォレストでは、
雨の日は事務仕事や製材部のサポートをすることで、天候に応じた不定休でなく、
できるだけ休日を統一するような働き方を選択されています。
ちなみに事務所は元木工所だった場所を月額レンタル中。
建屋には年期が入っていますが、屋内は気持ちよく整理整頓が行き届いています。
5Sとはいうものの、簡単にはできません。
道具の場所も、現場に行く前の確認事項リストもあって、一目瞭然。
道具を大事に扱うのは勿論のこと、
若い人や、来て新しい人も働きやすい環境づくりのためにも、
整理整頓から始めるべき、と話しておられました。
書類を仕舞うケースにも全てラベリングしてあって、
探し物をする時間も短縮でき、ビジネスとしての林業の効率性と安全性を日々、改善されている様子もうかがえました。
ついに、製材工場へ
そして、ついに製材工場へ。
工場内にストックしてある原木は、市場から仕入れたもの、自社林から山共フォレストが出材したものの両方で賄われています。
また、FSC®製品も製造しているため、これらは工程の中で非FSC®材と混在しないよう仕分けされています。そして原木は製材品、バイオマス燃料用、割箸用材、バーク、自社の燃料まで、余すことなくすべて加工してカスケード利用しています。
工場に入って驚いたのは、まずは機械の稼働率です。
訪問した際は特に繁忙期だったとのことで、全ての機械がフル稼働している状態でした。
お忙しいにも関わらず、
スタッフの皆さまは、爽やかな笑顔で視察組を迎え入れて下さいました。
そして、製材工場の中もやはり整理整頓されています。
工場の中にストックされていた美しいスギ材。
こちらは、とある社寺の垂木用材として納材されるそうです。
この製品にもエピソードがありました。
別のメーカーに発注していた顧客が、思う製品を入手できず、
「なんとか間に合わせてもらえないか?」と相談されたため、
なんとか調整して用意した注文材。
「『他に頼んでいたんだけどダメで、助けてくれませんか?』という連絡が多くて、
だったら最初から頼んでよ、と思いつつ(笑)、基本的には断らず、すべて対応をしています。
若い頃は、地域の中で誰よりも仕事をするぞという気持ちでやってきたけど、
最近は、人(顧客、地域の方)に喜んでもらうことが一番嬉しく、
それが自分の喜びにもなっているような気持ちかな。」
“仕方なく買ってもらうのが、とてもイヤ!”と話す田口社長らしいお言葉ですが、
「“困った時の山共さん”ってポジションが出来つつある。」
と地域信頼を得る企業の強みを垣間見ることができました。
工場見学を経て、午後の講座は、
村内にある「神土高齢者交流サロン」で行われました。
平成27年度の公共事業によって、
岐阜県産材(桧、杉)を40㎥使って作られた施設です。(平成28年3月完成)。
建物内には、カフェルーム、和室、交流ルーム(多目的スペース)があり、
また文庫貸し出しスペースや「ぎふ木育おもちゃ」のアイテムも充実していました。
浴室なども兼ね備え、いざというときの一時避難場所の機能も兼ね備えた施設です。
薪ストーブの前でいただく珈琲が、ご馳走ですね。
ここでは、「人材育成」や「離職率」についても真剣な議論が交わされることとなりました。
副社長2名体制や評価指標の公開、給与の底上げなど、
山共で今年から導入された仕組みの話もオープンに教えて下さいました。
中小規模経営であれ、「企業」として仕組み立てる面と、
たまには皆でカレーを食べたり、子供を皆で見守ったり、
「家業」時代から残る社員同士の関わり合いの両方が織り交ざる、
これからの時代を作る「地域企業」の素敵な社風に触れることが出来ました。
会社信頼を築く土台
田口社長に案内いただき、社員の方々にもご挨拶いただいた、工場見学。
『困った時の山共!』という会社信頼(ブランド)の神髄は、
①収益性を最大限に高めるカスケード利用
②高付加商材からチップまでの1品1品の製品管理
③担当責任制の人材配置と適性オペレーション
④誰もが分かりやすい整理整頓
⑤明るい挨拶から成る工場の雰囲気
というように、
経営者と職員との信頼を基にした製材工場の中の随所にありました。
さて今回は、「日本一美しい村でみた、工場編」と題して、株式会社山共様の事務所と工場についてご紹介させていただきましたが、産地巡礼ブログの最後には、「この山で一番自由な奴が林業王だ!!山共と田口社長のキャリア編」をお送りします。