森林セラピー、森のようちえん、木育。
森のちからを借りて、人が「生きる力」を取り戻すという試み、
その根源は同じだと教えていただいたシンポジウムでした。
昨年に引き続き、企画とコーディネーターを務めさせていただきました
シンポジウム「ライフ・アンド・フォレスト」を、キャンパスプラザ京都にて開催いたしました。
100名程の方にご来場いただき、3人のすてきなゲストの方々のご講演、
そしてパネルディスカッションと続きました。
●森林セラピスト
小野なぎさ さん
「森ではたらく!」にもご登場いただいた小野さんからは、
森林セラピーの科学的効果に加え、その本質的な意義についてご紹介いただきました。
都会人にとって、感覚を開放できる、非日常空間である森林という場を借りて、
「森に何かをしてもらう」のではなく、
みずからの感覚、五感をつかい、自分と向き合う試みです。
●京都・八瀬森のようちえん どろんこ園
代表 石川麻衣子 さん
京都市内で自主保育として活動されている「森のようちえん」で
子どもたちが森の中で元気よく、たくましく成長していく様子を
臨場感あふれる写真と、感動をさそう動画でご紹介いただきました。
会場からは、「感動して涙が出た」というお声も聞かれました。
●一般社団法人 木づかいビジネス協議会
代表理事 多田知子 さん
木のおもちゃや木材に触れることを通して
人の主体性や感覚をよびさまし、empowermentを試みる「木育」について、
自らチェンソーを使っての森林整備や、ビジネスにも取り組まれる多田様の
多彩なご活動を通した独自の視点で解説いただきました。
パネルディスカッションでは、
京都大学農学研究科森林科学専攻の高部教授から、
木材の科学的性質をご解説いただいた後、
私 岩井の進行で、
主に3つのテーマについて議論しました。
①木材生産や環境だけでない、森や木のちからとはどんなものか
②そのちからを活かすのに必要な視点や実践の工夫
③森から知る、現代のくらしを豊かにするためのヒント
①では、懐が深い、五感を刺激する森という空間の特徴や
やはりマイルドに五感を刺激し、扱いやすいという木材の性質を含めた
「森のちから」を、改めて解きほぐしました。
森はいいよ、木はいいよ、と言うとき、
なぜいいのか?を、林業界もしっかりと理解しているとは言えない部分に、
すっと腑に落ちる答えをいただいたように思います。
③の、豊かに生きるヒントというテーマでは、
講演の中でも度々きかれた
「生きる力」とは何かについて、議論をしました。
「感じる」力、「自分で判断してやってみる」力、
人間が生まれもっているその”生きる力”。
森や木をつかって、少しだけ手助けをして、その力をはたらかせること。
あとは徹底的に「見守る」姿勢が、3つの取組に共通する特徴でした。
”自分でできた”という経験が、「自己肯定感」につながっていくといいます。
また、②の実践におけるポイントについては
それぞれの方の
・原体験
・プロフェッショナリティ(知識、技術)
・日々の実働(地域との地道なコミュニケーション等)
どれが欠けても、このすばらしい取り組みは実現できないものであると感じました。
今回ご紹介いただいた「森林セラピー」「森のようちえん」「木育」は、
森にまつわる取り組みとしては、新しく生まれた言葉ではありますが、
林業や木材業、すべての「しごと」に通ずる、多くのヒントをいただきました。
また、どれもが、日々の暮らしの中で少しでもそのエッセンスを取り入れたい、
「私もやってみたい」と感じる取り組みでした。
進行をしながら。森の可能性をおおいに感じる、刺激的な時間でした。
すてきな講師の皆様、ご来場の皆様、本当にすばらしい一日を、ありがとうございました!
今後も、このシンポジウムシリーズでは、
森とくらしの関係性を読み解き、可能性を発掘し続けたいと思います。
(コーディネーター 岩井)