2016年度も開講いたしました、「国産材ビジネスセミナー」in東京。

第1回は埼玉、岐阜、愛知、大阪などから、特にご新規の参加者を多くお迎えして開催しました。

現場で林業に従事されている方から、まったくの異業種からご関心を持つ方、学生さんまで幅広い参加者層が特徴です。

 

 

 

【第一講座】日本林業のtruth&real

 

第一講座は古川より、統計データ等から読み解く日本林業のtrurhと、

コンサルティング現場からの事例紹介も交えたreal、という2つの視点で、林業バリューチェーンの全体像をお伝えしました。

 

「農業、漁業、林業、それぞれの市場規模はどのくらい?」

といったクイズを交えながら、林業のマーケットサイズやその特殊性について解説しました。

 

また統計的なデータからは感じにくい、普段の暮らしとの接点については、

国内の素材生産量を国民一人当たりにすると、

「柱1本、フローリング17枚」が取れる丸太一本分。

といったように”手に取れる日本林業”として考えました。

 

 

林業・木材業のビジネスにおいては、

育林から伐採、さらに原木仕分けから製材加工、住宅まで、

どのような商流をつくり、価値を連鎖させて最大化していくか、という視点が重要です。

 

その中で特に、原木の分類がいわゆるA材~D材、「製材用材、合板用材、チップ用材、燃料材」等とある中で、

マーケットシェアはいまだに製材用材(A材)が7割を占めることを考えれば、

流行のキーワードや施策に振り回されず、製材品としての森と木材の価値を高めていくことこそ必要であると、お伝えしました。

 

 

 

【ゲスト講座】林材ライター 赤堀 楠雄 氏 「これからの日本林業~ポイントは製材~」

 

第1回のゲストとして、林材ライターとして林業・木材業界に精通する赤堀氏にご講演をいただきました。

林業政策が低コスト化や大規模化に向かう中、

 

「引き算(コストカット)ばかりの量産林業では林業者の意欲は上がらない」

「付加価値を高めるための、植林から造材、製材に至る「選択(ソート)」こそ林業の醍醐味」

 

との気づきを与えていただきました。

全体を通して、「引き算だけでなく足し算へ」というキーワードを一貫してお伝えいただきました。

 

 

木材への需要の形が変化しても、

やはり節や狂いのない、品質の高い素材があることで、

その後の加工の効率や精度が上がること。

 

”高い素材品質が選択肢を広げる”ということも、具体的な実例を交えてご紹介いただきました。

また、その「品質」を客観的に評価する、全国共通基準の整備も急がれます。

 

 

最後にまとめ講座として、ふたたび古川より、

木材の価値を高めるための、製品そのものの「規格」と、顧客を創造する「企画」、

 

「規格」×「企画」

 

により、目標林型を実現することを目指すことこそ

林業の面白さである、という話で締めさせていただきました。

 

セミナー後の懇親会にも多くの方にご参加いただき、ネットワークを広げていただく機会ともなりました。

講師の赤堀様、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

 

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【お客様の声】

・国産材ビジネスセミナーでは、いつも業界の最前線の情報が得られます。 受講者どうしのネットワークが広がるのも魅力です。(A様)

 

・初心者にも分かりやすい内容で助かりました。林業、木材産業の今後の在り方について分かりやすくご示唆頂けたと思います。(研究機関B様)

 

・「林業はどうあるべきか、ではなく、どんな林業をしたいのか」というキーワードが印象的だった。加工の現場の話を普段聞くことが少ないので大変刺激的でした。事業ドメインを超えて、木を木らしく使ってもらうということの価値を伝えながら、仕事したいと思いました。(エネルギー関係C様)

 

・赤堀氏のお話が非常に体系化されており勉強になりました。「角から板」の流れは必ず通る道だと感じました。「素材力+加工力」で新たな需要を作って行きたいと思います。(木材流通業D様)

 

・国産材の統計数値の見方など、再確認できる内容だった。林業も品質本位の時代。(木材流通業E様)

 

・「林業はいつでも『育てる』時代」は全くその通りだと思った。一次産業の中でも成果物をすぐに家に持ち帰れないからこそ、製材が大事というのもその通りだと思った。(林業F様)

 

・世界の中での日本の立ち位置、数字(原価や価格)の見方、そして最近の森林活用の多様化の話など林野庁などの資料からだけでは得られないものばかりでした。林業初心者として、全体像が見えて、参加して本当によかったです。メディアは「林業あるべき論」に走りがちですが、当たり前のように思えていた需要からの逆算の視点の不足を感じました。多角的に報道していけたらと強く思いました。(メディア関係G様)

 

・林業をやっている側が、質の高い丸太を生産する努力をすることが大事だと分かりました。(林業H様)

 

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次回以降も、素敵なゲストをお迎えして「国産材ビジネスセミナー」をお贈りしていきます。

 

★次回予告★

2016年9月3日(土)14:00~18:00

「地域と木材業の水平・垂直連携~林業を軸にした地域連携とまちづくり~」

 

【基礎講座】
・そもそも「連携」って何?
・水平連携のポイント、垂直連携のポイント
・森林ビジョン、地域ビジョンの作り方
・交流⇒移住⇒定住方程式
・コーディネーター、行政マンの必要条件

 

【ゲスト講座】
㈱自然産業研究所 上級研究員
田村 典江 氏 【ゲスト講演】
「ここがヘンだよ!?林野行政」

 

みなさまのご参加をお待ちしております!

 

Posted by wpmaster on 土曜日 7月 30, 2016 Under pick up, すべての記事, セミナー報告, 国産材ビジネスセミナー(東京)

 

名古屋にて、東海エリアを中心に

若き林業経営者が集まり開催している、林業経営実践研究会。

7月度は新たなメンバーも迎え、開催しました。

 

今回の内容は

【1】各社報告

【2】ドイツ林業視察報告

【3】200年林業に学ぶ

【4】山林の所有と管理の在り方

 

盛りだくさんでお届けしました。

 

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【1】各社報告

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新たに愛知県からのメンバーも迎え、各社の近況報告。

決算の結果、バイオマス事業への参入、木工メーカーとの連携、インターンシップの受け入れなど、

それぞれに独自の事業展開が、着々と進んでいる報告がありました。

 

 

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【2】ドイツ林業視察報告

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6月にドイツ林業&林業機械展の視察に参加したメンバーから、

そのご報告をいただきました。

 

機械化された林業やフォレスターのイメージが強いドイツ林業ですが、

その人材育成は幼少期から始まっている事を、

森林公園で見られた数々のユニークな教育の「仕掛け」から感じることができました。

 

 

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【3】200年林業に学ぶ

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研究会の前日に、弊社一同で、メンバーであるA氏の山林を視察させていただき、

その現場写真とともに、A氏の山林経営についてディスカションを行いました。

 

約1,500haの所有山林を自社で管理する、「所有」と「管理」が一体となった経営を実践。

200年前から植林を始め、所有林のおよそ半分は、すでに高樹齢の「いつでも好きなように伐り出せる」「手のかからない」山林になっています。

 

 

先祖の作り上げた山林資源をいかすべく、

建築設計者とともに立木伐採から始める家づくり等にも取り組まれています。

 

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【4】山林の所有と管理の在り方

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A氏の林業スタイルを踏まえながら、

林業経営における「所有」と「管理」の在り方について議論しました。

 

一口に林業といっても

 

・所有と管理を一体に行う林業

・山林以外の収益を得ながら行う林業

・所有せず管理に徹する林業

 

など様々です。

 

ある参加者からは、

 

「これまでは、所有林を持たないながらも、地域の山に根差し、地域に貢献することを理念としてきたが、現状ではほとんど地域外の仕事を受けている。

そのような状況の中で、愛着がある山を持つと、かえって自滅するのではないかと思う。ぶれない軸として持つべきか?

それは、地域、業界に貢献するというビジョンではなく、山で働きたい人材をつなぎ、林業技術者を育て、田舎で楽しく暮らす人を育てる会社になるということ。

教育・人材育成を意識してやっていきたいという自分の立ち位置が明確になって来た。」

 

という発言もありました。

 

林業スタイルとは、必ずしも「所有しているかしていないか」や「自分で管理しているか」

で語られるものではなく、もっと多様な形があるということ。

まさに”フリースタイル林業”の世界観を、この研究会から、もっと表現していきたいと思います。

 

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★次回の開催は、9月10日(土)を予定しています。(座学ではなく実地研修の可能性もあります)

ご興味のある方はお問い合わせください。

Posted by wpmaster on 土曜日 7月 9, 2016 Under — 産地ブランド・選ばれる林業会社, pick up, すべての記事, セミナー報告

 

 

6月25日は広島県北広島町にて、
広島県木造住宅生産体制強化推進協議会事業の一環で、講演及びワークショップのファシリテーターを務めさせていただきました。
★チラシの詳細は、画像をクリックしてご覧ください。

 

 

 

 

なお、「中国山地の木をプレミアム化するマーケティング講座&ワークショップ」と題した当講講座は、
6月25日、8月27日、10月30日と、全3回のプログラムを予定しています。

 

初回は「日本の林業の概要を知り、プレミアム化とは何か考える」をテーマに掲げ、
建築設計士、大工の方々を中心に25名の参加者様にお集まりいただきました。

 

今回の講演は、このようなメニューで開催しました。

 

①日本の林業概要
・日本の木材と産地
・選ばれる製品(地域産材)、3つのポイント
・日本の森林概要
・日本林業の市場規模

 

②価値観とは何か
・自分軸と時間軸
・情熱方程式

 

③マーケティング講座
・消費の3要素
・ライフサイクル(地と図の関係)
・代替財と補完財
・セルフコントラスト

 

④ワインのような日本の林業~産地紹介~
・奈良県川上村 吉野林業について
・工務店主催の伐採見学ツアー
・林業の企画と規格

 

また、講演の間には「地場産材をプレミアム化するためのワークショップ」と題して、
参加者が3つのチームに分かれ、“住宅10ニーズ”についてアイデアを出し合いました。

 

 

今回のワークショップは、
1) 家づくりで重視されるポイントを優先順位の高い順に列挙し、ルール化
2)古川より「住宅10ニーズ」のフレームをレクチャー
3)「住宅10ニーズ」×「地域産材」の掛け算による売り方を提案

 

という手順で進行しましたが、日頃から家づくりに携わっておられる皆さまですので
住宅そのものの商品の他にも、立地、住宅保証やローン計画の提案といった、住宅販売に纏わる
重要なポイントを網羅的に書き出していただきました。

 

 

しかしながら、
「住宅10ニーズ」×「地域産材」の掛け算による提案となると、
「う~ん、とても難しい!」
「そもそも、このアイデアが弱いから、日本の木が売れない訳ですね!」
「正直なところ、自分が家を買うことをイメージしたら、より悩ましい」
といった反響がありました。

 

 

短時間のワークショップではありましたが、参加者様同士で話し合った後は、各チームによる発表会。
付箋に書き出したアイデアを発表していただきました。

 

 

 

全体的に設計士工務店関係の参加者様が多かったためか、
住宅10ニーズに対する理解が高く、地域産材を掛け算で売っていく必要性を意識されている一方で、
国産材を使った家づくりの提案については、
・地域資源の利用、環境保全等の大きな理念のため
・施主へ補助事業を提案できるため といった認識がありつつも、

 

 

一方で、

「地域産材の材料としての良し悪しを知らなかった」、
「地域産材の物語性について付加価値を掘り下げたことが無かった」等といった感想が挙げられました。

地域産材の強みや特徴とは、
異素材、他産地材と比較して見出されるものでもあります。

 

つきましては、次回8月27日(土)の講演&ワークショップでは、
「木材が選ばれる理由を定義しトータル林業について考える
~異業種、異素材、他産地の木材と比べて地場産材の強みを定義する~」をテーマに掲げ開催します。

 

今回のワークショップのテーマに掲げた「住宅10ニーズ」×「地域産材」の掛け算による売り方を宿題に、
アイデアを持ち寄って、さらに北広島町産材の強みについて、掘り下げていきたいと思います。
ぜひ、川上から川下の関係者様まで、お誘いあわせの上、ご参加くださいませ。

 

 

なお、講演終了後には、7名の方々に古川の著書「森ではたらく!27人の27の仕事」をご購入いただきました。
ご購入いただいた方にはサインを書かせていただき、それぞれの“森ではたらく仕事像”について、お話することができました。

 

講演中にも「林業・木材業の“担い手”で何が起こっているか?!」と題した内容をご紹介しましたが、
書籍の中では、森を伐る人、森を香らせる人、森で育てる人…27人の著者が自らの言葉で、等身大の想いを綴っています。

 

それぞれの目を通して見た、はたらく場としてのリアルな「森」像。
実際に森ではたらく方のみならず、山や森が好きな方、街に日常を置く方々にも、
仕事と暮らしの「日常」と「非日常」について、感じていただける一冊となっております。

 

★まだお読みでない方はこちら↓↓
森ではたらく!27人の27の仕事  販売ページ

 

 

最後に、参加者の皆さまからのアンケートから一部をご紹介いたします。

 

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講演受講者さまアンケート(一部抜粋)
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■建築設計事務所 A様
県産材の売り方について聞かれた時、そこが分からないのに気づかされた。
一般論で、地元の土地に地元の材料は、リーズナブルで安心とはいえるが、
本当の質については全く分かっていない。そこを探すことが大事。

 

 

■素材生産業 B様
林業の市場規模の話を聞き、広島の田舎で本当にその規模感を体感しています。
同時に、自分の価値観とは、立ち位置で変わるものだと実感しています。
今日も、講演の場で、情熱を持った同志と出会い、再会がありました!

 

 

■デザイン設計事務所 C様
単純に木だけでは売れないということを再認識しました。
何をもって売れるものにするか。(売れることは、プライドと継続性に不可欠)

デザインという自分の立場も踏まえつつ、考えていきたいです。

何度お聞きしても、マーケティング理論は勉強になります。
「なんとなく地場産材」からの脱却の重要性も認識しました。

 

 

■NPO法人 D様
消費の3要素がプレミアム化のヒントになりそう。
ストーリーをつくる具体例などをもっと知りたいです。
山林ツアーの事例紹介も、何をどう見せるのかと参考になりました。
町内同士でも知り合うきっかけが少ないので、参加者同士の交流から雰囲気づくりについても期待します。
また、日本林業の全体が見える講演でした。今後は、広葉樹の活用事例についても知りたいです。

 

 

 ■E様
価値提案のお話が良かったです。
立場を置き換え、WEB作成等と重ねて考えると、イメージが膨らみました。

 

 

■ F様
ワークショップを含め、参加者同士が会話をする時間をもっと取っていただいたらより面白くなると思います!
他の職業の人の考え方を聞くことで、木について理解できるのではと思います。
山を見る会、木を語る会の開催はいかがでしょうか!!

 

 

■工務店関係 G様
顧客目線のマーケティング、国産材の売り方等々、
新しい視点からのお話で、大変参考になりました。

 

 

■大学関係 H様
木材のブランド化のために必要な3要素のテーマが大変印象に残りました。

 

 

■行政関係 I様
初回、導入となる会でしたが大変楽しく、勉強になりました。
私の仕事である「町のブランディング」やマーケティングについてのお話、
価値の作り方、とても参考になりました。

 

 

■J様
予想外の講演でした。
範囲、掘り下げの深さ、視点…
気持ちよく聞けて満足です。

内容が多すぎて印象に残る点が絞り切れないくらいでしたが、

次回もよろしくお願いします。

 

 

■まちづくり関係 K様

トークのパワーとテクニックがすごいです。
伝えるごとに具体例があり、モデル図もあって分かりやすかった。
マーケティング論やスキルについても大変勉強になりました。

森林の土地利用としての役割とステージごとの条件について、
林業に適する山と不適合な山の条件などがあると思います。
そのような意味で、日本の山林はどの地域が好条件なのでしょうか?

建築用材の他に、強度を含めてスギの家具材やヒノキのプラスチック複合材などの加工方法もあるかと思いました。
このような使用事例の市場規模は小さいのでしょうか。
次回は、海外の林業事業やブランド化についてもお聞きしたいです。

 

 

■まちづくり関係 L様
話を聞くだけではなく、自分達で考え、楽しく参加できました。
地域の山を元気にするには、何をすればよいだろうか?

 

 

■都市計画関係M様
相変わらずのキレキレの語り口調で、端的に整理されていますね。
色々な経験が生かされていると感じました。

 

 

■建築設計業 N様
市場規模は小さいが、国土の大半を占める森林。
そのうち、植林地も多く、地産池消えるのために、林業の復活再生はとっても重要だと思っています。
その術を学びたいと思い受講しました。マーケティングの手法を知り、
上手に活用すれば、林業以外のビジネスでも活用できると思いました。

 

広島県産材の特徴を知る必要があり、国産材や他産地材、海外産材との違いを理解し
売り込みのアイデアを出すことも必要となるでしょう。
何に、どこに活用すれば材が光り輝くのか、次回の講座で考えたいと思います。

 

 

■建築設計業 O様
木材についての講座でしたが、それ以外にも通ずる内容で、興味深く聞きました。
私は主に、家屋調を生業としています。空き家や古民家に入ることが多くありますが、
古材の利用やリノベーションについても興味があり、知りたいです。

 

 

■NPO法人 P様

芸北の木をどう生かしていけるか、沢山の気付きを教えていただけたなと思います。
林業に関わらず、芸北地域を良くしていきたいと思っている人と第二回に参加したいと思いました。

 

 

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アンケートにご協力いただいた皆様に、心より御礼申し上げますと共に、
次回の講演についての参考とさせていただきます。

それでは、第二回8月27日(土)も、よろしくお願い申し上げます。

 

Posted by wpmaster on 土曜日 6月 25, 2016 Under pick up, すべての記事, セミナー報告, 講演・研修、コーディネーター, 講演&研修 報告

 

梅雨に入り、西日本は大雨の中、6月度の大阪実践研究会を開催しました。

 

~本日のMENU~

【1】各社報告

【2】新規参加者のご紹介

【3】話題提供 :「広島林業の現状」

【4】ゲスト講演 :「繊維業界の流通を変える、新たな展開」

【5】まとめ講座 :「商流のつくり方」

 


■各社報告・新規参加者のご紹介

今回は、新たに女性経営者のご参加もあり、いつも以上に華やかな雰囲気の研究会となりました。

 

まずは恒例の各社報告で、、各社の経営状況をシェア。

 

既に、秋以降の受注が多く、忙しくなるだろうと語る方、

新商品を使用したワークショップ企画が迫っている方、

みなさん、梅雨明けのスタートダッシュを待ち構えているかのようなご報告でした。

 

梅雨という季節、林業・木材業にとっては仕入れや品質管理が難しい季節ですが、

各社報告はそのような心配を感じさせない内容で大変盛り上がりました。

 

■話題提供:「広島林業の現状」

今回は話題提供として、

広島県よりお越しのS氏に「広島林業の現状」としてお話していただきました。

 

「県産材」など、都道府県単位での林業施策が増える昨今、

みなさんは、ご自分の地域の林業のポジショニングをどうお考えですか?

 

今回取り上げた広島県の素材生産量は年間約30万㎥。

いっぽう宮崎県などは100万㎥を超えます。

まずはその地域の林業の、規模感を知ったうえで、果たして「地域材」の意義は何か?

考えてみることも大切です。

 

それを踏まえ、さらにS氏からはご自身の海外視察経験から、

日本のみならず海外林業との比較をしながら、

また林業事業体に入り、実際に経験したことから考えた

今後の林業への問題提起がありました。

 

 

特に、木材の搬出行程である

ⅰ.伐倒行程

ⅱ.集材行程

ⅲ.造材行程

ⅳ.運搬行程

ⅴ.集積・巻き立て行程

 

の5つの行程で、実際に広島県で使用している

最新の高性能林業機械のご紹介をしていただきました。

 

このように、製材業経営者が林業経営までを考える、

「トータル林業」のスタンスが、この研究会の特徴です。

 

 

■ゲスト講演 :「繊維業界の流通を変える、新たな展開」

 

 

今回のゲストは、名古屋で繊維問屋を営む、株式会社谷健 代表取締役の谷 佳津臣氏。

 

木材業界と同じく素材業である、繊維業界の現状をふまえ、

単なる「素材卸業」を超えて、流通を変え、商品を生み出していく自社のビジネスモデルについてご紹介いただきました。

同じ素材業である林業、木材業にとってのヒントが満載のテーマです!

 

 

繊維業界も、

需要低迷、原料の輸入依存、国内マーケットの飽和など

木材業界と似た課題を抱えています。

 

そんな中、素材卸業の領域を超え、

みずから「企画力」を持ち、メーカーとの連携と小売への展開をすることで、

新たな市場を生み出す試みが、オリジナルブランド「ツムギラボ」です。

 

地元愛知県の伝統的な染や織りの技術をいかした、

カジュアルブランドを展開しています。

 

 

すでに飽和している市場での価格競争を避け、オリジナルの領域をめざし、

「伝統工芸」×「百年企業」×「ユニークアイデア」のコンセプト、

さらに「メンズ」×「カジュアルシャツ」×「伝統工芸技術」で

唯一無二の存在となり、自分で需要を創っていく企画力の重要性がひしひしと伝わるご講演でした。

 

 

お持ちいただいた実際の商品を手に取ってみると、

洗練されたデザイン、美しい染めの色、

しっかりとした生地で機能性も備えていることがよくわかり、

「これは欲しい!」と思わざるを得ない商品でした。

 

谷氏からは、新たなビジネスに挑戦するためのポイントとして、

 

①実際に、自分でやってみる

②周りの“利”を考え気持ちの良い取引をする

③自分が持つ情報、求めている情報をできるだけオープンに

 

をご紹介いただきました。

 

単なる「素材卸業」を超え、流通を変え、商品を生み出していくビジネスモデルを知る。

同じく素材業である林業、木材業にとっての大きなヒントとなりました。

 

 

■まとめ講座 :「商流のつくり方」

 

谷氏のゲスト講座を踏まえ、

まとめ講座としては、「商流をつくる」をテーマにディスカッションしました。

 

まず初めに、参加者の皆様から、

過去と現在の商流=【商品】と【販路】の内訳の変化

を書き出していただきました。

 

 

そこから木材製品について、商流の作り方についてレクチャー。

 

多様化する、製材メーカーから工務店への商流をまとめ、

改めて、価格決定、販売方法、商圏の切り口から

今後の顧客創造のポイントについて、整理しました。

 

ゲスト講師の谷氏からも、繊維業界の視点からご意見もいただきながら、

参加者の皆さまとディスカッション。大変貴重な時間となりました。

 

 

今回、ゲスト講座とまとめディスカッションから、
外部環境が変化する中、何もせず廃業倒産する事業者がある中で、
時流に適応しながら、販路や商品を開拓し、
常に小さな変化を積み上げていくことの大切さを改めて感じる研究会となりました。

 

今後、研究会メンバーによる「Clubプレミアム国産材」でも、

新たな創造すべく、今年は具体的にアクションして参ります。

研究会へのご参加、またClubプレミアム国産材への新規メンバーも募集中です!

ご期待ください。

 

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次回の大阪実践研究会は7月29日(金)!

7月30日(土)には国産材ビジネスセミナーin東京を開催します。

https://chiikino.jp/blog/?cat=20

皆様のご参加をお待ちしております。

 

ご興味のある方、

ご参加されたい方は、

お気軽にお問い合わせください。

Posted by wpmaster on 金曜日 6月 24, 2016 Under セミナー報告, 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪)

5月21日、早くも夏を感じさせるほどの陽気の中、

「“国産材2.0”日本の森と暮らしをプレミアム化するマーケティングセミナー」を
開催致しました。

 

創業5年目を迎えた弊社の本拠地・大阪にて、

日頃からお世話になっている皆様からはじめてお会いするお客様まで、
幅広い層のお客様にとご用意した特別セミナーは、
開催1週間前から満席となり、結果43名もの方にご参加いただきました。

 

今回のセミナーのテーマは「国産材2.0」。

これまで、おもに建築家の呼びかけで進められてきた、国産材利用と産地連携を、

次の「第二世代」は、産地側が自ら発信し、

業種を超えてトータル林業により連携していく。

 

そのために、林業、製材、流通、工務店、そして行政がすべき「50の条件」をメイン講座でご用意いたしました。

内装に杉を利用した、バー風の空間で、
各プレミアム産地のサンプルや商品展示もご覧いただきながら、
セミナーが幕を開けました。

 

~本日のMENU~

【1】古川大輔 講演

【2】ゲスト講演「私達、これでプレミアムになりました!」

【3】公開レッスン

【4】懇親会&林業BAR

 

それでは、当日の様子をお伝えします。

 

【1】古川講演「明日からやれる!日本の森をいかすPremiumな林業会社、製材メーカー、木材流通店、工務店になるための「50の絶対条件」大公開!」

メインセミナーとなる弊社代表・古川大輔の講演。

これまで10年間の、各地でのコンサルティング経験から編み出した、

独自のマーケティング視点と、実践にすぐにつなげられる、経営の秘訣をお伝えしました。

 

まず第1講座は、「プレミアムとは何か?」を考えるための基本講座。

「自分軸と時間軸」、「情熱方程式」、「理念と利益」など、

利益の源泉となる考え方や、価値観についてレクチャーいたしました。

「あなたにとっての田舎はどこですか?」

「あなたにとって何が日常で非日常でしょうか?」

「本質的な自社の強み、3つ挙げられますか?」

 

日常と非日常の差異が、顧客に求められることで価値を生み出していく。

そのことに気が付くことから、すべてのビジネスが始まります。

 

 

そして第2講座は、

「明日からやれる!日本の森をいかすPremiumな林業会社、製材メーカー、木材流通店、工務店の50の絶対条件」と題して、

 

まず初めに、競合他社との差別化のための「7要素」をご紹介。

そして、業種別にそれぞれ10個、プレミアム企業になるためのポイントをご紹介しました。

 

 

 

【山から直接仕入れをせよ。】

⇒ただし、コストは上がります。それでも直接仕入れをする理由とは・・・!?

 

 

【品質基準書をつくるべし】

⇒品質基準は、JASだけじゃない!自社基準を明確にし、「約束」すること。

 

★つづきは・・・古川の講演を収録したDVDを後日販売予定です!詳細後日。

 

【2】ゲスト講演「私達、これでプレミアムになりました!」

次にゲスト講演として、弊社がプロデュースさせていただいた企業様から
過去、現在の取り組み、そして未来への抱負を語っていただきました。

 

プレミアム製材メーカーは、竹下木材有限会社様。

島根県で、地松を専門に製材されています。

 

実は以前は、マツよりもスギや外材を挽いていましたが、

理念を整理し、地松に特化して事業を進めていく覚悟を決め、

商品開発、顧客開拓、設備投資を重ねたことで、現在があることを

参加者の皆さまにお伝えいただきました。

 

 

次に、プレミアム林業会社からは、株式会社ソマウッド様。

静岡県にある全員がIターン者であり30代という会社です。

代表の久米さまからは、社員の幸せを軸にした、雇用体系やオリジナルの福利厚生、

そして情報発信、販路開拓について、試行錯誤しながらも前に進むその取り組みを、熱く語っていただきました。

 

「林業では珍しいから、ではなく、当たり前のことを当たり前のようにやろう」

というメッセージをいただきました。

他業界では当たり前のWEBサイトを作る、当たり前の正規雇用をする。
そこからさらに今後は、「当たり前+α」ができる会社を目指しているとのことでした。

さらに、当日参加できなかったプレミアム企業の皆様からは、

ビデオメッセージをお寄せいただき、上映させていただきました。

 

 

【3】公開レッスン

 

講演終了後、ご質問を募り、その場で古川と会場の皆様からアドバイスを行う、

ディスカッション形式の「公開レッスン」を行いました。

 

ご質問を頂いたのは、京都府からお越しの林業会社様。

「山林を手放したい」という所有者が増える中、自社で購入すべきか、

どのように所有者に利益を還元していけるのか、という問いかけに対し、

 

それはまさにビジネスチャンスであること、また

長期的視野に立ち、ビジョン=夢を描くことの重要性について、

会場も巻き込んでの議論となりました。

 

 

【4】懇親会&林業バー

セミナー後は、参加者の皆さまと、熱い懇親会です!

 

今回、「お酒を通じて、山や木の世界に出会う」を
コンセプトに活動している、「林業BAR」のお2人が駆けつけてくれました。

 

お二人とも、実際に林業や建築に携わりながら、

ユニークなカクテルで出張BARを展開されています。

 

当日も「クロモジントニック」、「山椒モヒート」、「ヒノキ角ハイボール」など、

普段は味わうことのできない林業にちなんだ森の味を楽しみました。

 

 

 

 

さらには、プレミアム産地の一員であり、

木工と酒造を手掛ける地域商社「ばうむ合同会社」様からは、

自社商品である本格米焼酎「天空の郷」の試飲や、

オリジナル木製品「もくレース」の争奪じゃんけん大会のサプライズもあり、

会場は大いに盛り上がりました。

 

 

 

 

 

今回、関西を中心に、新潟、東京、鳥取、宮崎などから、幅広い業種の方にお集まりいただきました。

普段会うことのない遠くの同志、そして異業種の方、
ホームページなどでお互いのことを知っていたが直接会うのは初めて、
といった参加者同士の出会いの場となりました。

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おかげ様をもちまして、本セミナーを大盛況のうちに終えることが出来ました。

全国各地から多くの方にご参加いただき、感謝しております。

 

★★参加者の声★★

 

「工務店を進化させられる内容だと感じました。自分たちのスタイルや教育を見直す機会になればと思います。今回のセミナーでは全国各地で活躍されている方の話がきけたことが1番良かったです。」

 

「改めて、選ばれる林業会社を目指していくことを決意しました。」

 

「具体的な事例を紹介しつつ、概要をわかりやすくお話してくださり、まだまだ聞きたいなと思う内容でした。」

 

「初めて古川さんのお話を聞いて、まず刺激的でワクワクする気持ちと、実は林業界の現実は厳しいという背景がある中でのドキドキがある感覚を味わった半日でした。実際にできることがたくさんあることを、見える化していただいたので、具体的なイメージが膨らみました。」

 

「プレミアム○○のための絶対条件!で、具体的に提示して頂いた内容から、現在自社でできていること、中途半端なこと、やった方が良さそうだが目的と効果が不明瞭だったことがだいぶ明確になり、本腰を入れて取り組んでいこうと背中を押されました。ありがとうございました。」

 

「木が好きで設計の仕事をしていますが、今の建築業界は林業界には目を向けていない現実にどうしたらよいか考えていました。今回のセミナーで、林業界の現状を知ることができ、最終顧客に近い設計者こそ、林業界の方とコミュニケーションをとる必要性があるのではと感じました。」

 

「業界の垣根を越えてのセミナー、新鮮でした。次回も機会があれば参加したいと思います。」

 

他にも多くの嬉しいお言葉をいただきました。
この度の出会いを大切にし、今後も、このような学びと出会いの場を創造してまいります。
次は是非、皆さまの地域でお会いしましょう!

 

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今回のセミナーに参加したいのに行けなかったという方に、朗報です!
今回セミナーの内容を収録した、DVDを、数量限定で販売いたします!

★販売予定価格:12,000円(税込)★
★6月発売予定★

購入方法等の詳細は、後日弊社ホームページにて発表致します。
お楽しみに!!
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Posted by wpmaster on 土曜日 5月 21, 2016 Under — プレミアム流通店, — 地域ブランド工務店, — 産地ブランド・選ばれる林業会社, — 選ばれる製材メーカー, pick up, すべての記事, セミナー報告, 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪), 講演・研修、コーディネーター

2014年8月から行っている、名古屋での林業に特化した経営実践研究会。

今年度も開講いたしました。

弊社では、林業に限らず異業種の方も参加している「国産材ビジネスセミナー」(東京)、
製材、流通、工務店の経営者を中心に行う「経営実践研究会(国産材ビジネススクール)」(大阪)を主宰しており、

名古屋では、林業経営に特化して、非公開で開講しております。

 

そして今回は、

【1】各社報告

【2】広葉樹林業と人材育成

【3】林業事業体チェックシート!

【4】林業バリューチェーンと林道

【5】台湾林業紹介

の内容で開催いたしました。

 

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【1】各社報告

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まず初めに各社から近況報告を行いました。

新入社員の紹介、補助金や今年度の施業計画、事業を行う上での資金確保や広葉樹の更新施業などに関する話題から、

森林組合との信頼関係構築や、設計士と直接相談しながら住宅建設を行う計画など、異業パートナーとの付き合い方についても話題が挙がりました。

それぞれに、素材生産のみならず、業態を超えて幅広くトータル林業を実践されている企業が一堂に会しています。

 

また、2014年の初回からご参加いただいている

A社代表からは、先日、香港で行った英語でのプレゼンテーションを披露される場面もありました。

国産材を国内のみならず、海外にPRする動きへと一歩前進し、

「メンバーが日々成長していることを実感し、刺激にもなった」

というお声もありました。

 

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【2】広葉樹林業と人材育成

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次に、研究会前日に弊社一同が訪問したB社について、その施業方法と人材育成について議論となりました。

 

訪問では、広葉樹施業の皆伐施業地、択伐施業地を見せていただき、樹性の違い、

森林の成長バランスに配慮しながらも、市場ニーズに応じて残す樹木を選んで施業する現場、

作業道1つとっても現場の作業員の通勤の便まで考えられている現場などを拝見しました。

また、社有林内のトチやケヤキの巨木といった素晴らしい木々や森を見せていただいた様子も研究会で紹介させていただきました。

 

また人材育成については、

B社の代表から、自社の人材育成手法についてのご紹介がありました。

 

素材生産班の給与体系は、単なる出来高制ではなく

・自分で植えた木は自分が世話をしていくという担当制にしている

・徹底的に施業地を確保し、仕事量を確保している

・自立、自発性を重んじ、裁量を現場に多く託している

・業務提携を行っている木工品ブランドのパンフレットには、現場の従業員を出し、現場が主役であることを主張している

 

といった

コーチング、マネージング、アドバイザリー

の要素が詰まった人材育成手法を紹介していただきました。

 

 

 

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【3】林業事業体チェックシート!

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まず弊社より「選ばれる林業会社」に必要な力、すなわち

①施業力:技術力、資格力、施業マナー力

②仕入力:計画立案力、コミュニケーション力

③販売力:選木力、営業力、輸送力

それに加え

④経営統括力

 

である。というレクチャーを行った上で、

 

皆様に上記の能力を数値化するべく

弊社が用意した「経営力チェックリスト」に記入していただきました。

記入結果は、研究会中に集計し、レーダーグラフを作成。

研究会の終盤で共有しました。

 

集計結果を皆様に見せると、

「手裏剣のような形をしているね。」

「C林業は施業マナー高い!さすが!うちはマナー悪いな。」

「全体的に前回より低い値になっている、自己評価が厳しくなったからかな。」

「ウィークポイントを改善してバランスの良い事業体になりたい。」

 

など、自社、他社のグラフを見比べて強み感想を共有されておりました。

 

選ばれる林業会社になるため、どのように経営の舵を切っていこうか、

と考えるとき、経営力の「見える化」が重要となります。

また、同じ指標で定点観測して経営力の変化を知るための有効なツールにもなるでしょう。

 

このチェックシートは、研究会の恒例として続け、ブラッシュアップしていく所存です。

 

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【4】林業バリューチェーンと林道

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続いてゲスト講師のD氏から、林業の基盤整備と経営に関する視点で

話題提供をしていただきました。

 

林道、林業専用道、林業作業道の規定といった基本的な事項から始まり、

崩れ落ちる作業道も多いという現実を写真により見せていただき、

基盤としての重要性についてレクチャーいただきました。

 

林道とは、林業における

①森づくりと商品作り

②環境保全と配慮

③安全対策

④顧客ニーズへの対応

⑤社会認知

 

の土台となっている、つまり林道の「付加価値」という切り口でまとめていただきました。

 

その後のディスカッションでは、

そもそも林道や作業道は素材生産のためだけではなく、

人命救急の対応や安全管理をするため、

通勤の快適さや現場の見廻りのしやすさの向上のためなど、

林道の多面的機能を掘り下げることができました。

 

 

林道をつくる土木業者との関わり方や、林道維持の責任管理は誰にあるのかなど、

ディスカッションの話題は多岐にわたりました。

収益性を前提としながらも、それだけではない公共の福祉、個人の幸せを合わせた

「夢」のために存在すると考えたいところです。

 

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最後に、弊社社員の視察報告として、

台湾林業についてのレポートも行いました。

今後の研究会でも、改めて広い視野で、日本の林業についてディスカションし、

実践につなげて参りたいと思います。

 

★次回は7月9日(土)に名古屋駅前で開催予定です。

ご興味のある林業経営者の方は、詳細についてはお問い合わせください。

 

Posted by wpmaster on 土曜日 5月 7, 2016 Under — 産地ブランド・選ばれる林業会社, pick up, すべての記事, セミナー報告, 未分類

はじめまして、古川ちいきの総合研究所で社会人インターン中の、森と申します。

木材を扱う会社に3年間勤めた後、今はこちらで色々と勉強させて頂いております。

よりいっそう「木材」を身近に、魅力に感じている今日この頃です。

 

さて、3月度の経営実践研究会について、レポート致します。

 

今回の研究会のテーマは「製鉄業と製材業」。

製鉄業も、木材と同じように、大きな素材を小さく切り分け、二次加工において付加価値をつけていく、「素材を加工」する業界です。

2つの業界の同じ点と違う点から、木材業界に還元できるヒントを探っていきます。

午前中は鉄鋼会社S社の製鉄所見学、午後は座学での研究会となりました。

 

■午前の部:製鉄所見学

 

S社は、東京ドーム約128個分の敷地をもち、日本鉄鋼業シェアのおよそ1/3を占めます。

また、特徴的な商品として、鉄の「高級薄板」があります。

 

見学させて頂いたのは、厚さ約20cm、畳1畳程の鉄の塊(スラブ)が約数mmの厚さまで伸ばされ、鋼板(薄板の原料)となる工程です。

3階程の高さの点検用の廊下から見学していたのですが、1200度まで加熱されたスラブがラインを通るとその熱風で真夏のような暑さでした。

 

24時間稼働のこちらのラインは360mあり、要所ごとに設置されたカメラを通して、管制官で制御しています。1日にだいたい500~600本のスラブが製造されています。

お客様の注文に合わせて、薄板の厚みは1/100mmの単位で調整されます。

 

大まかな工程は

 

鉄の塊(スラブ)=素材

加熱

粗圧延

連続熱間圧延

鋼板=完成品

 

となります。

 

木材業界と同じように、鉄鋼業界にもバブル直後には需要が落ち込む冬の時代があったそうで、様々色々な異業種の事業にも挑戦しながら、付加価値化を行い生き残ってこられたそうです。

新規参入した事業のうち、現在も発展している部門もあります。

木材も製品そのものの価値を高めるとともに、小さな可能性をとりあげ、一見まったく違う分野にも飛び込んでみる事で新たな成長が期待できるかもしれません。

 

また、安全面での注意喚起が欠かせないのも木材業と同じ所でしょう。

見学の前に拝見したVTRでは、「安全への取組」が終始一貫して丁寧に掲げてありました。

 

個人的に特に印象深かったのは、

①    エネルギーを自社で発電、循環している点

②    工程ででる廃棄物は全てリサイクルしている点

 

さらに木が好きな私として、外せない魅力が、

 

③    敷地内の植木がきちんと手入れされている事。でした。

 

玄関には庭木、川沿いには松、工場内も所狭しに、ケヤキやサンゴジュ、色々な種類の植木が青々としていました。

きっと専門の方が毎日手入れされているのでしょう。また、きれいに草刈りもされており、熱い鉄を移送するときに引火しないためという意図もあるそうですが、「安全」に対する配慮は、働く社員の「環境を整えること」にまで及んでいました。

 

■午後の部:研究会(座学)

参加者様の近況報告、前回のN社様視察についての考察、午前中の製鉄所見学の考察、そして古川総研社会人インターンS様の「林道」についての講義となりました。

 

今回のセミナーには初めて参加下さる方、そして滋賀からお越しの方が多くおられました。

皆さまいつも遠い所からお越し下さり、どうもありがとうございます。

 

まずは、先月の振り返りとして、製材の付加価値化について、

①素材力

②加工力

③営業力

 

の3つの視点から分析し、さらにそれを製鉄業と比較しました。

 

考察のまとめとしまして、「製材業」も「製鉄業」も、経営の持続のためには

顧客ニーズに合わせて、商品や会社の方針を変化させている、という共通点がありました。

どれだけお客様の目線で商品を企画できるか、その想像力が鍵となるでしょう。

例えば

①    加工性の向上

②    お客様の工程省略に役立つ商品提供

③    素材の開発から加工技術まで、お客様のお役に立ちたいという表現

等を具体的に考えていく必要があるとのことです。

 

S様からは「林業バリューチェーン~基盤整備による付加価値について~」講義頂きました。

 

林道には大きくわけて2つのパターンがあります。

 

①    低コストで短寿命な林道=作業道

②    高コストで長期優良な林道=林業専用道

 

そしてさらにその林道の数により、有用性が決定します。

「基盤整備」は林業の「環境を整えること」に他なりません。

何か不具合のある環境であれば、そこに無駄や隙が生まれ、パフォーマンスの低下は元より、大きな事故に直結しかねません。

まずは現場従事者にとっての環境を盤石なものとする点でも、「基盤整備」がもとめられるようです。

S様には具体的な数字と案件をもとに、講義頂きました。また後日、さらに踏み込んだお話も聞けるとのことです。

 

次回以降もご期待下さい。

 

 

 

 

Posted by admin on 金曜日 3月 18, 2016 Under pick up, すべての記事, セミナー報告, 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪)

大寒波が近づく中、大阪で今年初となる研究会を開催しました。

~今回のMENU~

1)各社事業報告&プレゼンテーション
・みなさまから今月の振り返り

2)話題提供
・移住定住と地域おこし協力隊ブームの最新動向

3)テーマ講座
・林業バリューチェーン分析
・林業バリューチェーンにおける林道とその付加価値について
・事業連携の事例紹介

4)ゲスト講座&ディスカッション
「異業界は林業・木材業界をどう見ているか!?
~グリーンIT企業から見た国産材の可能性~」

 

■林業バリューチェーン分析

東京の国産材ビジネスセミナーでも好評だった、林業バリューチェーン分析。

よく異業界では「業界地図」なるものがあって、
業界全体の市場規模や、メインプレーヤーについて解説されていますが、

こと林業界や木材業界となると、
一般的な業界地図には載っていませんし(製紙と住宅を除く)

川上から川下まで、しっかりと整理された資料は、意外とないのが現状です。

 

そこで弊社では、林業、原木流通、加工(製材、合板、チップなど)、
製品流通、プレカット、建築と、

各段階の木材(商品)単価や市場規模を調査し、まとめました。

 

このうち「製材業」について、
この日の製材メンバーで、

「製品の付加価値とは何か?」という点について、

無節、上小、特一という一般的な品質等級に対し、
返品されない、クレームにならないための
品質基準と品質管理の精度を高めることや
顧客とのコミュニケーションの工夫についても議論し、

・全体の粗利率アップすること
・欠品対応に掛かる販管費を下げること

についても考察をいたしました。

 

まだまだ精査が必要な段階ではありますが、一覧を見るだけでも、

・林業(所有者)のプレーヤーの多さと市場規模の小ささ
・流通の不透明さ
・製材業の金額シェアの高さ

などがわかります。

 

ここから、自社のポジションはなにか、
各段階の今後の成功要因はなにか、を読み解いていきました。

 

今回、異業界からのゲストもお迎えしましたが、
木の値段?メインプレーヤーはだれ?と外から見れば謎だらけの林業界のデータは、

「非常に付加価値が高いデータだ」とお言葉をいただきました。

 

今後もより情報を精査し、何らかの形で公表したいと考えています。

 

 

■地方移住のトレンド

先日、1月17日(日)に東京ビッグサイトで開催された「移住交流&地域おこしフェア」に
弊社スタッフも行って参りました。

8,000名以上の来場者がおしかける中、
各地域のブースでは、趣向を凝らした展示や移住相談、セミナーなども展開され、
非常に熱気を 感じる一日でした。

 

何らかの制度を利用して、年間1万人が地方へ移住しているというデータもあり、
統計にカウントされない数字を含めれば、もっと多いでしょう。

多くの 人が地方へ行く動きは、今後も増えていきそうです。

 

移住の動きには、「I」「J」「U」ターンのバリエーションがあり、

またその動機もさまざまですが、

 

都会生まれ都会育ちで祖父母のすむ「田舎」もない、という若者がIターンする理由には、
やはり 都市部にはない、地域の魅力や発見、おどろきがあります。

(すでに「となりのトトロ」の世界が「懐かしい」ものではなく、まったくのファンタジーになりつつあります)

地域にとってみれば当たり前のこと、つまらないことも、
ソトモノから見れば驚きの連続である。

そのことに、改めて地域の人自身が気づくことが必要でしょう。

 

いっぽうで、

「豊かな自然があって、人がいい」

のは、どの地域も出しつくしたフレーズで、
もはや差別化できなくなってきました。

 

それを受けてか、
この移住交流フェアのブースでも見られるように、
どの地域もとにかくお土産に特産品プレゼント、名簿集め、人集め合戦の様相を呈しており、

確かに「誰でもいいから、人口を増やしたら勝ち!」という部分もありますが、
すこし方向性が違ってきています。

 

本質的に大切なことは、

移住した人も地元の人も、そこで幸せに暮らし、根を下ろしていけるような地域になる事でしょう。

 

そのためにも、お土産合戦ではなく、
本当に移住者のことを思った受け入れ態勢ができるか、

また、地域としては どんな人に来てほしいのか?どんな地域をつくりたいのか?

というメッセージこそ明確にするべきでしょう。

 

「人の奪い合いではなく、関係人口を増やすことが大事だろう」

という論調も増えてきています。

 

今後も、弊社も関わる地域でこれを実践しながら、

地域と移住者の両方が幸せになる方法を模索していきたいと思います。

 

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このように研究会では、林業木材業界のビジネスから、地域づくりに関する話題まで、

毎回豊富なテーマでお届けしています。

参加者同士がテーマを持ち寄って、自ら作り上げていくスタイルです。

 

ご興味のある方、参加されたい方は、お気軽にお問い合わせください。

*初参加の方は無料体験実施中!

 

~今後のスケジュール~

2月19日(金)

3月18日(金)

※いずれも関西地方のミニ現地研修を予定しています。参加人数が限定される場合があります。詳細はお問い合わせください。

 

Posted by admin on 土曜日 1月 23, 2016 Under pick up, すべての記事, セミナー報告, 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪)