文化的遺伝子 ミーム
突然ですが、「ミーム」という言葉はご存知ですか。かつてリチャード・ドーキンスによる著書「利己的な遺伝子」が流行しましたが、その中で「ミーム」という単語が紹介されました。それは、DNAではなく、ココロからココロへ伝達される“人間の文化的志向と行動”と紹介されます。ヒトの性格や行動の根源を辿る上でDNA(先天性のもの)か環境(後天的なもの)か、どちらに起因しているか?といった議論がありますが、教育的指導がなくとも、「ミーム」とは、生物学的な遺伝子に関わらず、文化的遺伝子として伝達される一方で、外的圧力(教育)がなくなると、弱まると述べられています。
地域には、捨ててはいけないものがある
「地域には、捨ててはいけないものがある」西粟倉村の元村長の道上氏がおっしゃっていたこの言葉が、今なお心に刺さっています。地域とは誰のものか?主体とは、住まいや暮らしをしている人だけではないのです。この土地を、連綿と守っていく人の繋がり、その大切さ。また別の機会では高野山にて、僧侶様から、とある仏教用語を教えていただきました。
「断種(だんしゅ)の罪(つみ)」
自分を育ててくれた親に感謝し、自分自身も子孫を残していくこと。しかし断種の罪は、それよりも、、自分が勉強したことや、教わったことを伝えて行くべく必要があると説かれており、、その文化的な「種」を断つことは、罪であるという思想です。私の両親、サッカーのコーチ、大学研究室、船井総研、アミタ、トビムシ・・・。自分が得た知識や情報は、自分だけの所に止めるべきではない。企業、親子、教育、育成。確かに、専売特許として伝えたくない「情報」というものもあるかもしれない。それでも、教育しなければならない。「最近の若いモンわ、っていうけれど、自分も色々な人に育ててもらったのに、教育を放棄している人が多すぎないか」と、僧侶のお言葉。教育だけでない、発信するということも、ひとつの、解決策でありましょう。
高野山に伝わる、断種の罪という思想
「高野山はね、常に、受け身なんだよ、古川君。お大師さまのご加護のもと、人は来て当たり前。お布施はしてもらって当たり前。そうなったのは、高野山というより、仏教界全体の問題です。だから、ソトモノの方がここで体験した一次情報をその人なりに、加工して、伝えて行くこと。それは、素晴らしいことであり、“断種の罪”を知っている、ということになるんです。」農山村地域のまちづくり、高野山の森林護持、そして、自分の生き方、「断種の罪」という思想から、色々と繋がります。また、高野山の山づくりについても、共利群生(きょうりぐんじょう)という理念があります。生きとし生けるものが皆群れを成して支え合って生きているという言葉です。この理念も次の世代へと紡ぎ、実際の森林づくりとしても、続けていきたいと話しをしていきました。
そして、「字が違うけど、断酒の罪ってのもあるわな、古川くん(笑)」と。
(地域再生・森林再生コンサルタント古川大輔日記 2012.09.28より編集)
代表取締役 | 代表コンサルタント 古川 大輔 Daisuke Furukawa
twitter: @daisukefurukawa
blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記
新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前支援、高野山・高野霊木プロデュース、経営実践研究会の実施等を行い、全国の林業木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山金剛峯寺境内案内人。