今年の4月に予定していた、本視察会。

コロナウイルスの影響で延期となり、ようやく10月3日~5日の2泊3日の日程で、

コロナウイルス感染対策をしながらの開催が叶いました。

 

2009年の岐阜恵那での現地視察を皮切りに、

今回は12回目、弊社主催の研究会に長くご参加いただいている、有限会社藤川工務店代表取締役/ばうむ合同会社代表社員の藤川様にアテンドいただきながら、高知本山にて開催しました。

 

今回のテーマは、「まちづくりは、林業だ。立木価値から不動産価値への転換で、真の複業時代の突入へ。-世帯年収800万円への成功方程式-」ということで、現地の自然資源や仕掛け人に出会いながら、森林・林業からまちづくりまでを学ぶ2泊3日となりました。

 

 

今回のメニュー

【1日目】

①白髪山トレッキング

②セミナー

【2日目】

①レイホク木材工業協同組合見学

②ばうむ合同会社(本山蒸留所)見学

③さめうら荘・早明浦ダム見学

④クラインガルデン本山見学

⑤セミナー

【3日目】

①行川(なめかわ)散策

②ばうむ合同会社(木材加工所)見学

③高知おおとよ製材株式会社見学

④大杉見学

 

それでは、今回の現地視察会の様子を一部ご紹介していきます。

 

 

白髪山トレッキング

 

今回、12回目の現地視察にして初めてトレッキングをメニューに取り入れ、その初めては、全国的にはあまり知られていない、日本の秘境たるべく天然ヒノキの巨樹群へといざないました。

高知県屈指の天然ヒノキ林が残り、高知県天然記念物にも指定されている、「八反奈路(はったんなろ)」。標高1000m以上の山の中にある、八反ほどの奈路(この地域の言葉で、傾斜が緩やかな山を意味する)ということから名づけられたエリアです。

ここでは、古い切り株や岩の上に自生し、800年の年月を生き続け、元々の岩や切り株の後が空洞となっている「根下がりヒノキ」が見どころです。また、現在登録されている根下がりヒノキは33本あり、その1本1本にユニークな名前が付けられています。その中には、『くぐり一番』『太い枝張り』『しこをふむ』といった見た目のカタチから由来されたネーミングもあれば、『輪廻転生』『なぜ曲がったのか?』という、見た者が考えさせるような哲学的な名前もあり、地元の方が名付けたといわれたこのネーミングそのものも楽しみながらトレッキングを進めていきました。

 

また、かつては土佐藩が大阪にて白髪山周辺のヒノキを販売し、逼迫した財政を立て直し、さらに大阪に日本で初めての木材市場を開設したという逸話もあり、今でも大阪市内の白髪橋交差点など地名が残っています。

 

 

開けた場所で、今回アテンドいただいた藤川様が代表を務めるばうむ合同会社の食品加工部が手作りしたお弁当を参加者の皆さまと食べながら休憩。蒸留所見学の部分で後述しますが、お米日本一コンテストでこれまで2度日本一に輝いたブランド米「土佐天空の郷」を特別にいれていただきました。冷めてもなお美味しいブランド米、さらに自然の中で食べるご飯は格別の味となりました。

 

今回は休憩を含め4時間ほどでトレッキングしましたが、八反奈路(はったんなろ)がある白髪山の頂上へ向かう登山道や、縦走コースなど複数のコースも存在し、頂上からの景色もまた美しいということでしたので是非機会を見つけて複数回訪れたい山でした。また、屋久島、高野山等の巨樹の群生地をこれまで歩いた経験のある参加者の方も、この地を絶賛し、皆様に楽しんでいただけた様子でした。

 

 

ばうむ合同会社(本山蒸留所・木材加工所)見学

 

ばうむ合同会社様の工場見学は、2日目に本山蒸留所、3日目に木材加工所を訪問しました。

まず2日目の本山蒸留所。廃校の体育館を利用し蒸留施設を設置、年間約3tの焼酎が誕生しています。

 

そしてこちらでは、財団法人本山農業公社の和田様に、焼酎の原料にもなっているブランド米「土佐天空の郷」生産に係る取組をご紹介いただきました。

本山町では、水田地の約9割が棚田ということで、どうしても他の産地と比べると生産性は劣りますが、棚田ならではの寒暖差のある気候や、玄米の選別の際に国の基準より大きな粒を厳選するなどの品質管理をすることで質の高い米を生産しています。

 

2009年から販売している「土佐天空の郷」はお米日本一コンテストにおいて、これまで2度の日本一を受賞しており、地域に誇れるブランド米は現在35組の農家によって生産されています。

 

 

 

日本一の受賞をしたブランド米ですが、もちろん中には選別の際にふるいにかけられ落ちた米が出てきます。これを活用してつくられるのが、焼酎ということです。面白いことに、この焼酎の名前も「天空の郷」。炊飯米のブランド名というだけではなく、本山の米を原料とした商品を象徴する名前として「天空の郷」の利用をブランド協議会で許可することで、本山全体でのPR効果へと繋げているようでした。

また、最近は6次産業化の動きとして、玄米・白米の出荷だけではなく、おにぎりを作り販売することで少しでも多くの利益を農家に還元できるような仕組み作りを目指しているとのことでした。

 

 

クラインガルデン本山見学

 

2日目の午後には、クラインガルデン本山を訪問。美しい棚田の風景を望むことができる斜面に、10戸の住居があります。ところで皆さんは、「クラインガルデン」とは何か、ご存知でしょうか。

もともとはドイツで数百年の歴史を持つ農地の賃借制度のことを差し、日本語では「滞在型市民農園」とも言われており、全国に複数箇所存在します。要するに賃貸住宅に+農地がセットでついてきますよ、ということですね。クラインガルデン本山でも、各住居の庭先に小さな菜園スペースが設置されています。

 

 

移住定住促進の一環で、2013年4月に設置され、現在は空き家が出るとほどなく入居者が決まるほどの人気だそうです。

当日は短い時間でしたが、管理人を務める加藤様にもお話を伺うこともできました。

加藤様も元々は東京都出身、ご家族の健康のため約半年をかけて全国100自治体を巡り、環境や当時の移住担当者の対応の良さから、2006年に本山町へ移住されたとのこと。

クラインガルデン本山以外にも、ここ数年で町内のシェアハウスにも移住者が増えているとのこと。「最も美しい村連合」の認定を受けているということで自然環境が良いことはもちろんですが、四国のほぼ中央に位置する立地、さらにはなんといっても移住者相談の受入態勢や人の魅力に惹かれて移住を決める人が多いのではないかと考えさせられる訪問となりました。

 

 

2日間のセミナー

 

1日目と2日目の夕方には、モンベルアウトドアヴィレッジ本山内にある研修施設でセミナーを行いました。

1日目夕方には、山村ビジネス協議会の取組について本山町役場の大西様、山番LLPの取組について川端様をゲストにお話をいただきました。本山町では、林業事業体、製材・加工、工務店、行政がワンチームとなり町内産の原木単価をあげて製品として出荷するシステムを構築しています。このチームが山村ビジネス協議会であり、林業事業を担当するのが山番LLPとなります。

今回山番LLPについてご説明いただいた川端様は、8年前に本山町に来た移住者であり、現在は山番LLPを退社し独立をされていますが、山番LLP創立初期から携わり、事業を動かしてきた方です。

具体的な事業のお話を伺うと、まず前提として、山村ビジネス協議会にて、本山町の規模として大規模林業が合わないと判断した結果、少量生産であっても、木材の単価を上げる方法を試行錯誤されてきたとのことでした。

その結果、伐採をするのは伐り旬のみ。伐採後はばうむ合同会社の工場に直接搬送し、伐採を行わない時期に、工場に設置した簡易製材機を使い林業事業者が製材をすることでばうむ合同会社の小物製品用として、原木、一次製品どちらでも全量買取することで林業事業者の所得を向上させる仕組みを作っています。

また、詳細は省略させていただきますが、山主ファンドの取組により、所有者に森林=不動産としての価値を見出してもらうことで継続的に森林施業を行うことが出来る素地を創り上げているというお話が印象的でした。

 

 

2日目には、モンベルアウトドアヴィレッジ本山店長の山中氏、ばうむ合同会社の藤川氏、弊社代表古川が中心にお話をさせていただきました。

今回、食事、宿泊、研修施設の全てでお世話になったモンベルアウトドアヴィレッジ本山。そもそもなぜ本山町にモンベルの複合施設としては全国でも屈指の規模の施設が出来る事になったのか、店長の山中様ご自身のエピソードも合わせながらお話をいただきました。

20年前にモンベル会長の辰野氏との繋がりが本山町としてあり、アウトドアを観光に活かせないかという構想があった中、本山町周辺には徳島県三好市のラフティングなど、有名な施設や環境がある中、「ファミリー層」にターゲットを置いた際に、本山町のアウトドアフィールドの豊富さが素晴らしいということが決めてであったそうです。ご説明いただいた山中店長は10年前にモンベルに入社し、当初は香川県内のショップに勤務していたということですが、4年前に本山町に移住、昨年からは店長ということで、入社以来四国のアウトドアを見つめてきた中でも素晴らしい場所だということで、今後は本山を起点に、より四国全体のアウトドアを盛り上げていきたいとお話をいただきました。

 

ばうむ合同会社代表の藤川氏からは、 民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法であるPFI事業についての挑戦をお話しいただきました。PFI事業は、町が主体ではなく、計画立案から実施までを住民主体で行う公共事業としてまちづくりにおいてより住民の声を反映させることが出来る他、仕組みとして地方銀行も支援しやすい手法があるため、是非参加者の皆様の地域でも挑戦いただきたいということでした。

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注)PFIとは、公共事業を実施するための手法の一つで、もともとは、1990年代前半に英国で生まれた手法です。官民が協同して、効率的かつ効果的に質の高い公共サービス提供を実現するというPPP(Public-Private-Partnership:官民の連携)の概念から来るもので、PFIはその手法の一つです。民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法であり、あくまで地方公共団体が発注者となり、公共事業として行うものであり、JRやNTTのような民営化とは違います。
正式名称を、Private-Finance-Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIと呼ばれています。

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最後に、弊社代表古川よりプチセミナー。今回は、「林業まちづくり構想」に係る事業者視点、行政視点のポイントを整理し、如何にイノベーション(一人目のチャレンジャー、二人目のフォロワーの大切さ)を説きながら、ご自身の地域でただ視察先をまねるのではなく、オリジナリティとリアリティある未来づくりについてのヒントを提示しました。最終日は、視察を踏まえ皆さんに自社事業の将来を考えていただくた時間を多く作りたいということで、特製の曼荼羅シート(未来シート)をご提供し、皆さんに記入いただきディスカッションすることとさせていただきました。今回の視察終了後も、参加して終わりではなく、参加した後にしっかりと形に残せるようにと、課題の共有も含め、今後のご提案をさせていただきました。

 

 

製材・木材加工現場見学(ばうむ合同会社 木材加工部、レイホク木材工業協同組合様、高知おおとよ製材株式会社)

 

1日目のセミナーで紹介した山番LLPとばうむ合同会社による林業の6次産業化に係る事業が実際行われている、ばうむ合同会社の木材加工部の工場を3日目に見学しました。セミナーでゆっくりとお話を聞き、その後に参加者自らの目で現場を見てもらうことで、よりリアルに実現可能性とご自身の地域に落とし込んだ理解につながったのではないでしょうか。

 

 

また、小規模な工場だけではなく近隣のレイホク木材工業協同組合様、高知おおとよ製材株式会社様といった大規模製材工場までを見学することで地域における林業バリューチェーンを学ぶことができました。

 

 

大杉見学

 

3日目最終日、最後の訪問地は本山町のお隣、大豊町の八坂神社境内にある「杉の大杉」(国の特別天然記念物)。

なんと推定樹齢約3000年、樹高は約60m、2つの株が根本でくっついて伸びています。一目見た瞬間から言葉を失うほどの迫力を見せつけられます。そして、この場所は多くの人が願掛けに来るパワースポットとしても有名です。かつて、美空ひばりさんがこの大杉に「日本一の歌手になれますように」と願をかけ、実際日本一の歌手になった逸話があることから有名となりました。そこから、この大杉には「出世杉」の異名もつけられています。

 

 

境内の近くには「川の流れのように」の歌碑があり、奥山がきれいに見える開けた景色を眺めながら、美空ひばりさんの美しい歌声を聞きながら、ゆったりと心を落ち着けることもできます。

すばらしいパワースポットにて、参加者皆さんそれぞれが願掛けをし、今回の現地視察はフィナーレ。

最後にふさわしいスポットでした。

 

 

参加者の声

A様

ずっと都心にいたので白髪山のトレッキングは非常に新鮮で心が洗われました。 また、多方面でご活躍されている業界内の方々とお話ができ、多角的な視点を養うことが出来たと感じています。 一方で林業業界における強い課題感として、既存の仕組みや風習が根強く残っていることを感じました。

レガシーな産業だからこそということもありますが、普段他業界にいる身からすると、世の人々があえて新規参入したがらない理由が非常に肌で感じました。今回のセミナーに参加されている方々も同様の課題感を感じている方々ではあると思うので、共に改善に務められたらと思います。

この度は非常に貴重な体験をさせて頂くことが出来ました。お忙しいにも関わらずこのような素晴らしい会を主催して下さり誠にありがとうございました。 今後ともよろしくお願いいたします。

 

B様

普段から知っている地域でありながら、今回初めて知ったことがたくさんあって勉強になりました。木材だけに特化せず、観光資源、農業、移住促進など含めた地域づくり全体を見ていただけるプログラムになっていたので、とても多角的な視点から本山町の魅力を再発見することができてありがたかったです。

 

C様

3日間、ありがとうございました。私にとって「古川ちいきの総研」で展開される事業(セミナーおよび視察の運営を含む)は全てが学びの場であり、次のステップへ踏み出す糧となるものです。今後も参加と学びと自分ごと化を続けます。

 

D様

今回はじめて参加させていただきましたが共通の知り合いがいたり新しい情報を得たりとてもいい時間を過ごさせていただきました。また、トレッキングをしてあらためて会社経営も登り調子の時よりも下り坂の時ほどしっかり足元をみないと滑って転ぶなと実感しました。これからもしっかり足元をみて進んでいけたらと思いました。今後もよろしくお願いいたします。

 

E様

今回の研修は、私がやって来た事を再認識し自分自身で見つめ直す事に主眼を置いていました。林業・製材関連の事業体だと、森林や木材関係を深く理解しようとする事業が多いと思いますが、私達は、まちづくりの為の林業とは何かの原点を模索しており、此れから深く掘り下げていくための初期段階の取組みに、多くの方が、共感してくれたのは、此れから事業をやっていく大きな力となりました。これからもよろしくお願いします。そして、有難うございました。

 

 

さいごに

改めて、延期となりながらも無事開催ができたこと、大変嬉しく思っています。ありがとうございました。

当日アテンドをしていただいた藤川様におかれましては、計画・準備段階から大変お世話になりました。最終日、大杉でのフィナーレにて、藤川様からは、これまでやってきたことが間違いでなかったことを確認できたこと、また参加いただいた皆さんと共にそれぞれの地域を盛り上げていきたいということ、大変嬉しいお言葉をいただきました。

本当に、ありがとうございました。

 

 

次回の現地視察は来年度に、開催予定です。

また、12月5日には大阪にて研究会を開催し、今回の研修会・今年度の振り返りをしながら、

今後の業界、自社の事業を参加者の皆さまと考える時間を作ります。

詳細は以下となります。

 

===R2年度第3回 大阪経営実践研究会===

<開催日時>

12月5日(土)14時~18時

(忘年会:18時半~、研究会会場近く)

 

<場所>

サムティフェイム新大阪 ホール2(2階)
住所:大阪市淀川区西中島6-5-3

 

<内容>

〇現地研修会(高知県嶺北地域)の振り返り
〇2020年振り返りと、10年後20年後の未来ディスカション
〇企業(起業)と林業まちづくり構想の理想と現実(古川講座)
〇その他、新進気鋭のデザイナーの外部講座 も予定しています。

 

<参加費>

16500円(税込)

※忘年会費は別途5000円(税込)

 

<参加申込先>

・株式会社古川ちいきの総合研究所

・Mail:info@chiikino.jp / TEL:06-7878-6376

上記メールアドレスまたはお電話にて、「参加者名」「連絡先」「忘年会の出欠」をご連絡ください。

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それでは、皆さんのご参加を心よりお待ちしております。

 

 

 

 

 

Posted by wpmaster on 火曜日 10月 6, 2020 Under pick up, すべての記事, 経営実践研究会[国産材ビジネススクール](大阪), 講演&研修 報告

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