残暑厳しい令和元年9月4日(水)。

 

三重県様からのご依頼で講義をさせていただきました。

 

「みえ森林・林業アカデミー(三重・林業大学校)」の「ディレクター育成コース」「マネージャー育成コース」の両コース受講生を対象に「マーケティングとは?~これからの国産材マーケットの作り方~」というテーマでの講義。
弊社代表 古川がお話をさせていただきました。

 

10年前には全国で数校しかなかった林業大学校。
現在全国には20近くの学校があり、「林業大学校ブーム」ともいえる状況で、「みえ森林・林業アカデミー」はそのうち、今年度開校された新設の学校です。

 

特徴は、多くの林業大学校のように新規就業者に向けた学校ではなく、実際に仕事をしている社会人を対象に絞った大学校であるところ。
三重県の林業界を強化すべく組まれた、仕事に即生かせる実践的で豊富なカリキュラムが印象的です。

 

そのような積極的な攻めの姿勢が感じられる大学校での講義。
当日は、林業・木材関係者をはじめ、経営者や個人事業主など、23名の方が受講されました。

「理念なき利益は犯罪、理念なき利益は寝言」

 

古川の信条は「理念なき利益は犯罪、理念なき利益は寝言」

利益だけではより良い世界にならない、理念だけでは生きていけない。

 

現在、SDGsに対しての世間の動き、また地球温暖化を力強く訴えるスウェーデンの少女のニュースが話題になっていますが、経済と環境問題は他人事ではなく、自分事として、身近であり、地球規模でも大きなテーマです。

 

林業は多面的機能を発揮する。その理念があり、その理念に自社の経営に対して信条を強く持っておられる方が多いわけですが、この「理念と利益」を両立させるという信条を多くの林業・木材業者様とともに、実現するため、我々は日々、全国の実践事業者様と奮闘をしています。

 

大阪で隔月開催している経営実践研究会では常に、経営者の皆様とその実践内容と展開方法について熱くディスカッションが繰り広げられています。

 

この本日の切り口である「理念と利益」について、平成22年に実施した、木材業者の経営力調査結果もご紹介しながらご説明し、古川のこれまでの国産材への取り組みや、森林・林業・木材業の支援をする原点となった体験と、そこから得た価値観についてお話しした上で、講義のスタートです。

 

 

「働く悦びのマネジメント」と「理念訴求による人材採用」

 

「仕事をしていて嬉しかったことはなんですか?」

 

古川からの問いかけに、受講生の皆さまからの回答。

 

「お客さんから感謝の手紙をもらった。」

「作品が完成したときの達成感。」

「賞与が思った以上にたくさんもらえた。」

「仲間と協力して健闘した仕事がうまくいった。」

「提案した内容が評価された。」

「商品が思った以上に高く売れた。」

 

実は、ここから「5つの働く悦び」が読み取れます。

「5つの働く悦び」は古川が多くの会社を支援してきた中で、見出してフレーム化したものです。

 

仕事をしていく上では、この「5つの悦び」が満たされていることが仕事の満足度に繋がります。

すなわち、経営者としては、従業員の就業環境と人材定着を総合的に考える際の指標にもなるのです。

 

しかし、この「5つの働く悦び」を考える前に、実は大事なことがあります。

それは、「理念」。

「理念」を共有し、同じ方向を向いて一丸となって進んでいくことは、会社というチームが「利益」を生み出すためにも非常に重要な要素です。

 

「理念」とは「何を大事にしているか」ということ。

採用の際に「理念」のミスマッチングが少ないと、経営者・従業員の双方がwin-winの関係を築く基礎ができます。

 

「野球採用」を実施している人材派遣会社の「ユニークな事例」をはじめ、弊社クライアント企業様の「理念訴求戦略による優秀な人材の獲得と経営規模拡大事例」数例についてご紹介させていただきました。

 

これからの国産材マーケットのつくりかた

後半戦は、本題の「マーケティング」講座です。

 

まずは「あなたがホットドッグ屋台の経営者なら」という仮定の「ホットドッグクイズ」から、販促とは「売り物×売り方」であることを解説しました。

 

自社の強みを見出すフレームワーク「3C」についてもご説明しました。
「顧客のニーズ」×「自社の出来ること」×「競合他社の出来ないこと」について、ライバルとの差別化はまず「地域一番店になること」であるということもお伝えしました。

 

そして、例えば食品だとマーケットは以下のように変遷していくこともご説明しました。

 

「お腹を満たすものであれば売れる」→「おいしくないと売れない」→「おいしくても売れない」

 

「おいしくても売れない」という、現代。

 

木材もかつて、「どんな木材であっても、住宅をたくさん建てなければならないから売れる」という状況でした。

ですが、高い品質を求められるようになった今。
住宅着工戸数も減少の一途を辿っている。
この状況でどのようにマーケットを作り出していくか、ということを、改めて古川から皆さまに問いかけさせていただきました。

 

マーケットをつくりだす。
それには「顧客が購入に至るための要素は何か」を考えることは不可欠です。

 

「顧客が購入するための要素」とは、弊社マーケティング基礎フレームの1つ「消費の3要素」。
「必要性」「欲求性」「物語性」の3要素です。

この3要素について、広告の事例を使って解説をしました。
この3要素を考えるとき「顧客視点」を持つことが必須になります。
広告を見て「どちらを買いたいか」というのはわかるのに、売る側になると見えづらくなること、皆さま実感できたのではないでしょうか。

普段の生活の中では顧客であることも多いのに、不思議ですよね。

 

この「消費の3要素」は風船と同じで、ニーズや時代の価値観やマーケット状況によって3要素がそれぞれ膨らんだりしぼんだりするものです。
このように主流となるもの、流行がかたちを変えながらも時代の変遷やライフサイクルの中で循環することを、弊社マーケティングフレームを使って解説し、ニーズや潮流の動きを読みながらマーケットをつくりだす重要性をお伝えさせていただきました。

 

また、「モノ・コト・ヒト」消費とも言われる「マーケティング1.0~3.0」を基軸に、商品・サービスの事例をご紹介しながら、近年のマーケットニーズの傾向についても解説いたしました。

(皆さん真剣に聞いておられます。手前味噌ではありますが、古川の講演の参加者は寝ている人がおらず、熱心な方が多いのがいつも印象的です。)

 

ワークショップとまとめ ~ルール化し、自分事化へ~

最後は、全員参加のワークショップ。

4つのグループに分かれ、それぞれ指定された林業・木材関係の商品・サービスを売るのに「何があれば売れるか?」ということを、付箋を使ってアイデア出しをしたのち、本日ご紹介したフレームに基づき整理していただきました。

 

「アフターフォロー=売り方」「作家の個性=物語性」など、さっそくフレームが役に立ったようです。

古川の解説ののち、すべてのグループからアイデアとして出てきていた「QCD」についてご説明しました。

 

「QCD=品質Quality、価格Cost、納期Delivery」

 

商売の基本中の基本といえるものです。

 

「品質Qualityは顧客との約束」「価格Costは納得性、明朗性」「納期Deliveryは価格に反映させるべき」などの解説をしたあと、このQCDから会社信頼、個人信頼へと発展していく弊社マーケティングフレーム「BtoB法人営業方程式」についてご紹介しました。

 

実は、多くの方々が、こういったマーケティングフレームに合わせると「やるべくこと」がたくさん出てきて、結局のところ「ただやっていないだけ」、すなわち「やることがいっぱいある」さらに言えば「やることをやれば(やりたい理念に向けて)もっと儲かる!」という具体的アクションが出てくるものです。

 

冒頭でご紹介した、実は弊社が独自で行った「(林業/製材業)経営力チェック」アンケートの回答では、ここ数年の増収増益企業は回答事業者全体の1.5~2割ほどありました。どの業界も製造業、下請け業はつらい時代とはいえども、成功している事業者は、「当たり前のことを当たり前に行う力がある」と言い換えられるかもしれません。

 

古川ちいきの総合研究所としましては、「なぜ国産材が売れないのか」ではなく「2割の事業者はしっかり売れている」という人たちから、学び合い、高めあい、鼓舞しあえればと、あらゆるネットワークにアンテナを広げ続けていく所存です。

 

そして最後に、「BtoB営業である林業・木材業は、マーケティング基礎フレームから、BtoB法人営業方程式、さらにまだまだマーケットをつくりだす方法はある。まずは講義でお話ししたマーケティングフレームを使い、ご自身のお仕事を分析してルール化し、本日の学びを自分事化して活かしてほしい。」というメッセージをお伝えして、講義終了とさせていただきました。

 

受講された皆さまの声

 

【A様(林業会社)】

・納期によって価格を変えるべきというのは、その通りだと思いました。まずは交渉していきたいです。

 

【B様(製材業)】

自社は代理店方式で法人営業のため不要との判断でホームページを開設していませんでしたが、今回の講義で情報発信の必要性を感じました。

 

【C様(行政)】

「働く5つの喜び」を明示することで人材確保をするということが非常に参考になった。自分の担当する法人で人材定着が課題になっているので、この切り口で分析したい。

 

【D様(製材業、建設業)】

本日のフレームで自社の事業を再分析する必要があると感じた。商品は需要の多いニーズ(価値観、文化)に合わせる必要があるのかどうか、どのようにそれを掴むのか、ということも考えていきたい。

 

【E様(森林組合)】

原体験からの情熱方程式(情熱=好き×憤り)が価値観をつくるものということがヒントになった。会社としての理念が大事だということは納得性があり、もっと知りたいと思った。今は仕事をやっつけでしている部分もあるが、本日の学びを生かしてなんとかしたいと思う。情熱も再考し、毎日の仕事の支えにしたいと思う。

 

【F様(木材流通業)】

やれていないことがある!と気付きました。木材業・林業はポッと出ではできない仕事です。辞めたいとは思わないので「好き」なんだと再認識してもっと好きになり、その情熱で仕事に取り組んでいこうと思いました。先人の知恵を大事にして、数年後の創業100周年を迎えたいです。

 

【G様(森林組合)】

「あなたの来ている服の素材の産地はどこですか?答えられないのに、自分が木を売りたいときだけ三重県産と言っても説得力がない。」と言われ、ハッとした。ワークショップももっと掘り下げて自分事化したい。マーケティング手法はどの仕事にも共通して使えることで、講義全体が大変刺激的で気持ちがザワザワして、最高でした。

 

最後に

皆さまがこの講義内容を自分事化し、お仕事に、マネジメントに活かしていただけたら、これほどうれしいことはありません。

ブログでは抜粋してまとめましたが、上記以外にもたくさんのことをお話ししています。

 

全国47都道府県を仕事で訪問したことのある古川も、まだまだお会いできていない方々がたくさんいます。

是非、皆様のまちにもお邪魔して、お話しをさせていただければ、意見交換して未来をつくっていければと思っています。

 

講演のご相談等は、お問合せフォームからお受けしています。
ご希望の時期や内容について、お問合せフォームからご連絡いただければ幸いです。
過去の講演実績は以下のURLからご覧いただけますので、併せてご参考ください。

https://chiikino.jp/blog/?page_id=193

 

 

 

Posted by wpmaster on 水曜日 9月 4, 2019 Under すべての記事, 講演&研修 報告

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