国産材ビジネスセミナーin東京、2015年もいよいよ終盤に。
12月は第4回目を開催しました。
今回のテーマは”住宅動向からバイオマスまで”ということで、
まずは話題提供から。
11月には現地研修会として、岩手県岩泉町&矢巾町へセミナー受講者様と共に行って参りましたが、
現地の写真を中心に、製紙用チップ、燃料、木工家具、建築用材、集成材、バークたい肥、おが粉等…
東北地方の広葉樹の多様な使われ方、売り先について、改めて振り返りをいたしました。
★ 現地研修会の詳しいレポートは、こちらをご覧ください↓↓ ★
【現地研修会“広葉樹の森を巡る”in岩手 】(11/23-24)
1日目⇒https://chiikino.jp/?p=4762
2日目⇒https://chiikino.jp/?p=4854
岩泉町での広葉樹林業をとって見ても、
木の使われ方と売り先が様々あって、林業が発展してきた歴史が分かります。
このような、木材の用途の多様性を念頭におきながら、
今回のセミナーの本題へ!
~~~
【1】用途別木材のマーケットシェア
基礎レクチャー編として、
まずは市場動向を知ることから。
・日本の木材の主な売り先は?
・日本の住宅:工法別シェアについて
・ 大手ハウスメーカーのシェアと国産材
・住宅ストック数と空き家率
・リフォーム、リノベーション、コンバージョンの違いと事例紹介
等、統計的数値を読み解いていきます。
さて木材の主要な用途とシェアを見るとき、
ボリュームシェアだけではなく、その金額シェアを考えることが大切です。
近年では合板の国産材比率向上や、バイオマス燃料などが注目されていますが、
やはり金額シェアを考えれば、製材用の原木マーケットが圧倒的に大きく、
よい木を育て売ることで、日本の林業が儲かり、産業として成立しているということが分かります。
~~~
ところで、マクロな視点とともに、国民一人当たりの木材使用量という実感のある数字に分解してみると、どうでしょうか?
木材の素材生産量を日本の人口で割ってみると、国民一人当たり約0.2㎥でとなり、
例えば薪にして燃やしてしまえば、焚き火一回分で終わってしまうくらいの量であると、具体的にイメージできます。
林業木材業については、調べれば丁寧な統計データが揃いますが、
この数字の見方、読み方について、
・異業種と比較する
・時系列で読み解く
・一人当たりに換算する 等、
このセミナーをきっかけに、より自分事化された気付きを得ていただければ幸いです。
【2】選ばれている、国産材家具・インテリアとは
さて、ここからは経営マーケティング編へ。
国産材を使った家具インテリアの事例を、弊社・岩井からご紹介しました。
木という素材は、誰にも加工しやすい点が特徴の一つです。
例えば、日本では針葉樹家具は「強度が弱い」「傷つきやすい」とネガティブなイメージを持たれがちですが、
針葉樹ならではの「白さ」「軽さ」が”面白い木(素材)”として、海外で人気を博していることもあります。
・ 加工度を上げてデザイン性を高める/あえて加工しない
・ 一点突破で市場を変える、市場を育てる
・ 一般的な”弱点” を”長所”に変える
など、それぞれのメーカーの戦略を分析しました。
木材の用途別製材品出荷量のうち、「家具用材」のシェアは約1%と少量ですが、
その分、これから増やせる市場(=可能性)があるということではないでしょうか。
マーケティングの視点を持って、
「木材ならでは」の特徴を強みに人気を得ている商品を紹介いたしました。
経営マーケティング実践編では、BtoB/BtoC営業の違いをレクチャーし、
具体的な営業ツールとしての「チラシ」作成のポイントを学びました。
ここで、「住宅10ニーズ」と題したクイズを実施!
「あなたが家を買うとき(選ぶ時)、どんな条件で選びますか?書き出してみてください。」
この回答から、住宅の売り方のヒントが見えてきます。
参加者からの回答は、
立地、費用、デザイン、快適性、間取り、安全性・・・といった回答が続き、
中には「カミさん(奥様)の意見!」という回答も。
一般的に女性の方が在宅時間が長いことから、
特にキッチンや水回りは、女性の意見は家づくりの重要なポイントになりますね。
このような回答の中、「国産材を使っている!」という条件を挙げた人は、意外といないのです!
つまり、消費者目線に立った時、木を木だけで売っていても、選ばれる住宅づくりは不可能で、
・安全安心×国産材
・デザイン× 国産材
・立地×国産材
といった関係で選ばれる住宅づくりを目指すこと。
山側としては、こんな家づくりに取り組む工務店と共に、
伐採ツアーや森林体験をすることで、国産材が選ばれるビジネスをともに作ることができ、
ゆくゆくは自社のビジネス(素材生産)にも繋がるということです。
チラシ作成のポイントも同じく、「国産材使用!!」と全面に押し出していても、
一部のニッチなファン層にしか届きません。
異業種の人気商品のチラシ等を交えつつ、反響のあるチラシの作り方をお伝えしました。
マーケティング視点を持ったチラシづくりの必要性は、工務店業に限ったことではありません。
林業においても、ポイントを押さえたチラシづくりで集約化施業の提案が求められています。
それぞれのビジネスへ、マーケティング視点を活かしていきましょう。
【4】住宅・木材販売を実践するゲストからの特別講座
さらにここからは、ゲスト講座へ。
今回は豪華2名のゲスト講師にお越しいただきました。
まずは、
株式会社イケダコーポレーション 藤田 宏匡 氏から、
「塗料業界からみた、木材について~自然塗料と木のいい関係~」と題してお話いただきました。
ドイツ製の自然塗料を扱う商社として、
塗料のいろはからレクチャーいただきました。
日本で塗料が使われる場所は、主に2つ。
一つは、木を表しで使っているような、地域工務店であり、
もう一つ、近年特に需要の増えているのが、公共建築物です。
公共建築物木材利用促進法の施行により、税金を投入する物件には、木材を使うことが推奨されていますが、
大型の公共建築物を長持ちさせ、安心安全に使用するためには、
塗料の力を使って、木材特有の性質と上手に付き合うことが求められています。
例えば木材特有の性質として「呼吸すること」が挙げられます。
ご存知の通り、木は周囲の湿度に応じて、水分を吸ったり、空気中に放出したりする吸湿性を持っていますが、
木の表面を覆い呼吸できなくする塗膜性の塗料は、かえって木材の劣化を加速するおそれがあります。
また、塗装が劣化した時に、
・ 一度表面の塗料を剥がしきってから、一から塗り直しする塗料
・ 再度上塗りし浸透させ、木の性質を強くさせる塗料
と、塗料の性質によってメンテナンスも異なりますので、
長期的なコストを考える上でも、塗料の性質を知っておくことは、木との付き合い方に必須ですね。
木材の性質を活かしつつ、長持ちさせる塗料との付き合い方を教えていただきました。
お二人目は、株式会社トビムシ(株式会社東京・森と市庭) 村上 達也 氏より、
「東京の森をいかす、森と市庭の取り組み」と題して、
奥多摩で進行中のプロジェクトをご紹介いただきました。
「株式会社東京・森と市庭」は、奥多摩地域をフィールドとして森林再生に取り組んでいます。
まずは森林のファンづくりと交流をめざし、
平成16年3月末をもって閉校となった旧小河内小学校を「OKUTAMA Field」として、
多目的に利用できるレンタルスペース事業を展開しています。
この「OKUTAMA Field」を使って行われたワークショップ研修や体験イベントについて、ご紹介いただきました。
また、「モリユカ・レンタル」として展開している無垢杉材の床レンタル&販売事業では、
都心のオフィスの床材を木質化した事例をご紹介いただきました。
「お客様と一緒に床を張って作業すると、不思議と皆寝転がるんですよ。
当初は土足で使用する計画でしたが、改装が終わって、土足禁止に変更となりました。」とエピソードを交えつつ、
タイル等の異素材から木材へシフトする際、
「ドアの開閉ができなくなる」等のトラブルが生じないための規格についても、工夫した点を教えていただきました。
[東京・森と市庭PV」
【まとめ】あなたに必要な木材利用の規模とは?
今回のテーマは「ニッポンの住宅動向からバイオマスまで」ということで、
最後はバイオマス動向についてご紹介。
全国50箇所以上に上るバイオマス発電所が設立され、
現状の素材生産量の2倍近くを出材する規模で計画が進んでいるバイオマス発電。
同じ原木を扱う業種と獲得競争になる恐れもあることから、
最近では、仕入れの質と量を確保するため、
製材所が山買いをして対策に打って出るところもあります。
[写真:バイオマスの事例「もくろう」]
一方で、たとえば山で焚き火する時に使う「木ろう(もくろう)」も立派なバイオマス利用の一つ。
原木丸太にチェンソーで数か所の切り込みを入れることで、
乾燥や燃焼時間を多少コントロールすることも可能です。
「バイオマス」の定義とは、広く考えることもできるのです。
あなたにとって必要な規模感、地に足のついた経営とは?
今回のセミナーを、考えるきっかけにしていただければ幸いです。
さて、次回の国産材ビジネスセミナーは、2015年度最終!!
一年間の総括として、テーマは「林業バリューチェーン」。
来年度に向けて、事業計画の立て方についてもレクチャーしますので、新規の方々のご参加もお待ちしています。
■日時:2016年1月16日(土)
14:00~18:00 + 懇親会
■場所:東京都中央区八重洲1-5-15 田中八重洲ビル (東京駅八重洲口から徒歩3分)
■内容(予定):
1)林業バリューチェーン(まとめ講座)
・水平連携、垂直連携等による地域連携型林業ビジネスの理論と実践
2)経営マーケティング 実践編
・明日からできる事業計画の立て方
3)ゲスト講座予定
・コンサルタントor国産材ビジネス経営者(予定)
詳細は後日お伝えします。
■受講料:おひとり様13,000円(税込)/学生 6,500円(税込)
■お申込みについて
ご参加をご希望される方は、メール(info@chiikino.jp)にて
以下の項目をお知らせください。
1)お名前
2)ご所属
3)お電話番号
4)メールアドレス
5)懇親会へのご出欠
お申し込み後、折り返しお支払方法をご案内させていただきます。
↓↓国産材ビジネスセミナーについての詳細はこちら↓↓
https://chiikino.jp/blog/?page_id=22