各地で梅が咲き小春日和になる日も増え、山では杉花粉が今にも舞いそうな2月23日(土)、
今年度最後となる、H30年度第5回大阪経営実践研究会を開催しました。
平成の終わりも着々と近づく中、業界発想から飛び越えるべく隣接異業種のゲスト講師を2名招き、
参加者の皆様とのディスカッションや弊社情報提供などとも合わせ「価値と本質とは何か」に迫る1日となりました。
今回のメニュー
【1】ちいきの総研より報告
・今月のマーケティングトピックス
・ちいきのカルチャー
・インターン生報告:「日本人とドイツ人、森へのイメージ比較」
・スタッフ報告:「だから、私は変化球」
【2】参加者近況報告
【3】ゲスト講座
・「某住設メーカー×林業家より~住設メーカーから見た現在の林業界への想い。~」
・「中小企業のこれからの事業継承×印刷業イノベーション」
【4】マーケティング講座
・『「この10年で思った76のこと」を読み解く~2020年東京五輪、2025年大阪万博を終えた、2030年のあるべく姿~』
ちいきの総研より報告
■報告①:「日本人とドイツ人、森へのイメージ比較」(弊社インターン生より)
毎回、本研究会では弊社インターンより、近況や学びをまとめた発表を行っております。前回は、弊社インターン生1名より、ドイツへの自主研修の際、現地の方に森の好きなところ、楽しみ方、ビジネスで連想することをヒアリングした結果を発表しました。今回は、さらにグレードアップし、日本でもドイツと同内容のヒアリングを実施。比較結果をお話しました。
教育制度、周辺環境によっても変わりますが、結果の1つとしては、ドイツではサイクリングや歩く場としての動的な森林利用、日本では森林浴や空間にいるだけという静的な空間利用として森林は楽しまれる傾向にあるとのことをお話しました。
様々な統計、SNSなどで流動的に流される情報から得られることもありますが実体験に基づく「生の声」が最も身近で信用できる貴重な情報ですね。
■報告②:「だから、私は変化球」(弊社スタッフより)
昨年11月より弊社に合流した男性スタッフに、これまでの業務や体験から「本質的な価値」とは何かをお話しました。彼は前職では、省エネルギーコンサルタントとして設備更新などに携わってきた経験はありますが、「林業」に深く触れることは、もちろん、弊社に来てからが初めてです。
そこで、業界発想に固執せず、素直な感想として、林業(国産材)の価値を語る時間となりました。
1)日本の林業の祖、奈良県川上村にて巨木が並ぶ吉野林業に触れ、
2)とある岡山県の原木市場にて丸太に刻まれた枝打ちの跡に感動し
3)京都北山の北山丸太倉庫にて磨かれた柱の美を体感し
感じたこと、また平成が終わる今、平成と過去を振り返り「本質的な価値」としてまとめさせていただきました。
また別機会にでも紹介できれば幸いです。
ゲスト講座
■ゲスト講座①:「某住設メーカー×林業家より ~住設メーカーから見た現在の林業界への想い。~」(某住設メーカー C様)
「何をやるか、それを決まれば、誰でも出来る。」という熱意あるメッセージを軸に、どのように何をやるかを決めるのかということを、ご自身が手掛けたキッチンなどを事例にお話しいただきました。また、UX(ユーザーエクスペリエンス)やCX(カスタマーエクスペリエンス)の視点における住設メーカーの開発の現状を振り返りながら、一つのキーワードとして「持続可能性」をあげ、再生産可能なものに価値を付加し続けられる資本や経済が重要であること、またマーケットイン(買い手発想)だけではなく、プロダクトアウト(作り手発想)の商品にこそ、素材感と物語性としての「感動」を作れるのではと、ディスカションが深まりました。ご実家は林業を営んできたということもあり、今後の取組までを視野に入れたお話もあり、これからが益々楽しみになる時間となりました。
■ゲスト講座②:「中小企業のこれから事業継承×印刷業イノベーション」(某印刷業者 O様)
大阪市内の某印刷業者のO社長様からは、まず初めにご自身の業界の定義として「水と空気以外は、すべて印刷可能なのである。」と、話題を進められたことが印象的でしたが、現在の印刷業界の縮小する市場の実態、だからこその脱業界発想の取り組みについて、今後に必要なことお話しいただきました。林業界も昭和55年を市場(生産)規模がピークになって、小さくなっていることから印刷業界と似ている点もあり、O様の脱業界発想は、参加者メンバーに響くものがあり、林業・木材業界はまだまだ異業種から学ぶべきことがあると改めて感じさせられる講座となりました。
まとめ講座
最後に、弊社の代表古川からは、『「この10年で思った76のこと」を読み解く~2020年東京五輪、2025年大阪万博を終えた、2030年のあるべく姿~』と題し、全国各地の最新情報をお伝えした後、今回のテーマ、キーワードとなる「持続可能とは何か」、「本質的な価値とは何か」についてお話しました。持続可能とは何か?世間ではよく聞きますが、皆様はどのようにお考えでしょうか。
林業においては、例えば、一つの捉え方としては「バリューチェーンから見る」ということがあります。森林⇒原木⇒製材品⇒住宅、家具等と木材という素材を元に変化するモノ、カネ、サービスの流れになりますが、このどこかにおいて1つでも、儲かっていない部分があると、バリューチェーンが崩れ、それは持続可能ではなくなります。某企業の商品サービスがカッコイイ!とあっても、下請けの労働環境、収益体質が悪いということが隠され続けているということもあります。そこには、やはり、バリューチェーンを繋ぐための1つの方法として、バリューチェーン(生産の前後工程)まで責任をもち、領域を変えていけるかという発想(行動)が必要なのです。
また、持続可能という概念においては、ローマクラブの「成長の限界」から紐解き、いつごろから「sustainability(持続可能)」という言葉が出て来たのか、研究者やシンクタンクの世界から、現在のSDGsの流れを抑えつつ、改めて「平成」という時代(30年が)が何だったのかということを振り返りつつ、技術革新(印刷業界と林業業界)に何があって、IT業界や金融業界で何があったかを振り返り、2020年東京五輪、2025年大阪万博、に向けて私たちはその先をどこに向かうのか、話題提供をいたしました。
具体的内容は、ここでは割愛させていただきますが、確かに林業、木材業界は脱業界発想がまだまだ足りないということは言えるでしょう。脱業界発想の他にも様々軸はありますが、持続可能な経営をするために必要なレクチャー、サポートを今後も弊社では続けて参りますが、2030年といった10年後のビジョンをどう持つか。そこには、「地域」と「森林」と「文化」にあり、改めて「こたえは きっと、森にある。」と強い信念と明るい未来を共にする仲間(同志)が増えて行ければ幸いです。
また、理念なき利益は犯罪、利益なき理念は寝言という信条を実践していくことにおいて、今回は、その未来を生み出す「理念」を具体的に実践し続けるために、「決算書」をどうみるか、「粗利」をどうつくるかという基本的な話から、損益計算書における「販管費の7分類」による「やりたい理念ととりたい利益」の好循環モデルの提唱をし、みなさまの持続可能な経営を支援のレクチャーもご提供いたしました。
常に、学びと実践の繰り返しにこそ持続可能な発展につながっていくものでありますが、古川からの平成最後の「まとめ」となりました。
参加者の声
【T様(製材・建築)】
住設メーカーのゲスト講座での、自社製品に疑いを持って問いかける視点は常に忘れないようにしたいと思いました。
また100%プロダクトアウトのものづくりも今だからこそ挑戦する意味があるかもしれないと感じました。
飲食業でもあえて過剰サービスを排除して、つくりたいものだけを提供するところもあります。
作り手都合100%の商品というのは、一つのカラーになるのかもしれません。
来年度は、是非、産地巡礼ツアーを開催してほしいです。
【Y様(林業・木材サービス)】
古川ちいきの総合研究所スタッフのお話にあった、
林業の価値は、「時間×想い×品質から~」というお話が印象に残りました。
特に時間×想いは、出口クライアントが共感する組み合わせであり、
持続可能性との相性も良いと感じました。
【S様(行政)】
自身の仕事に係る、マネジメント業務に対するヒントを、今回もたくさんいただきました。
また、古川ちいきの総合研究所からの情報提供が、いつにもまして、充実していたと感じます。
書評、ルール化での本の紹介は続けていただきたいです。自分も参加したいです。
ゲスト講座では、O様の印刷業のお話では、業界発想の課題解決方法では無く、異業種、どの業界に市場があるかを探し印刷業と掛け合わせていることが参考になりました。
さいごに
今年度最後の研究会が終わりました。
いよいよ、平成が終わります。
そして、2020年には東京五輪、2025年には大阪万博と、
日本が世界に注目される時期が間近に迫ってきます。
またその先、世界に注目された後の2030年は、
林業・木材業界、建築業界はどのように変化しているでしょうか。
今から何を準備すればよいのでしょうか。
来年度以降も、研究会や全国各地を巡る研修などを通し、
皆様と語り合いながら一つのモデルを導き出す機会を作る予定です。
来年度も、多くの皆様と出会い、学び語り合えますこと、楽しみにしております。