国産材ビジネスセミナーin東京も、今年度第3回目の開催となり、
今回のテーマは林業(川上)から下って、製材業・木材流通業です。
まずは基礎編のレクチャー。
「4寸角3m杉の柱を100本挽くとき、原木は何㎥必要ですか?」
といったクイズ形式で、製材において重要な「歩留まり」の考え方を学びました。
そこには、
・製品歩留まり(体積)
・原木歩留まり(欠品率)
・山林歩留まり(立木品質)
という3つの歩留まりを考える必要があります。
単純に体積を掛け算していくだけではなく、
実際には原木段階での欠品や、
山林において利用できる立木の比率など、
現実に即した計算が必要になります。
いかに歩留まりを高めていくか、
製材という仕事の奥深さを感じていただけたのではないでしょうか。
つづいて、木材流通に関して、
大きく3パターンに分けられる流通構造や、
マーケティングのトレンドについてお伝えしました。
そして今回、とくに参加者からのご期待が高かったのが、ゲスト講座です。
特別ゲストとして、株式会社インテレクツ 代表取締役 茨木 康雄 氏 をお招きし、
輸入材の流通構造や世界のマーケットについてご講演をいただきました。
茨木氏は、ナイス・カナダ代表、Trans-Pacific Trading代表を歴任し、
国内外で長年にわたり木材の製品開発、流通開拓を手掛けたスペシャリストです。
現在は流通をサポートする情報(IT)システムサービスを手掛けておられます。
「外材に押されて国産材がだめになった」論がよくきかれますが、本当にそうでしょうか?
そもそも「外材」とは何でしょうか?
海外のメーカーや外材の流通構造、ビジネスルールを知って初めて、国産材の経営戦略も分かるはずです。
(たとえばどんなプレーヤーがいるのか知らないままに「外材」とひとくくりにして語ることは、「太郎vsマイケル」の試合を「太郎vsカナダ人」というあいまいな仮定で作戦会議しているのと同じです。)
まず会場を驚かせたのは、
「外材は負けです、外材に勝ち目はない」
という、冒頭の茨木様のお言葉でした。
その意味について、輸入材流通の基本や実情を交えてご解説いただきました。
以下、茨木様のご講演をもとに、弊社で3つの切り口から整理させていただきます。
【1】そもそも誰と戦っているの?~外材とは何か~
①どこの国?
森林・林業白書にも公表されている、日本の主な木材(用材)供給元を見れば、
2013年は
・国産材28.8%
輸入材は、
・米材(アメリカ、カナダ)18.9%
・欧州材9.1%
・南洋材8.7%
・北洋材(ロシア)3.3%
・その他31.6%
となっています。
まずは「どこの国」から輸入しているのか、知っておきましょう。
また、
木材輸入量を見れば、2003年から2013年にかけて、丸太は約12,600㎥から約450㎥に減少、製材品も約1,400万㎥から約1,200万㎥に減少しています。
輸入材のシェアは下がってきていることが分かります。
(表:林野庁HPより転載
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/26hakusyo_h/material/m04.html)
②世界の主要プレーヤーは?
国内の主要な製材メーカーの名前は、ご存知の方も多いと思います。
いっぽう、海外はいかがでしょうか?
製材量の世界ランキングを見ると、
1位 West Fraser Timber(カナダ):790万㎥
2位 Canfor(カナダ):690万㎥
3位 Weyehaeuser(アメリカ):645万㎥
4位 Stora Enso(フィンランド):596万㎥
5位 Georgia Pacific(アメリカ):430万㎥
となっています。
それぞれに樹種や得意な製品も異なります。
プレーヤーを知ることで、より具体的に「外材」をイメージすることができます。
ちなみに日本企業では、23位に中国木材(160万㎥)がランクインしています。
【2】「外材神話」は本当??
なぜ国産材が輸入材に負けたのか、を論ずるときに、
「外材(輸入材)は、品質がよく、納期がばっちりで、価格も安いから!」
といわれます。
しかしこれは、誰の目線から見るかで変わってきます。
実際に、木材輸入商社からすると、
輸入材も、注文したものが納期通りに来ない、規格外のものが混ざっている、傷んでいるということがあります。長期間のビジネスなので多額の資金も必要です。
また船で輸送してくるため、実際には注文してから半年かかって納品され、現金の回収に一年掛かります。国内に膨大なストックを持つことで、納期対応が可能となるのです。
価格については、為替の変動により読めない部分が大きくなっています。
改めて実情を見てみると、従来は日本の「商社」の力により、
安定的に供給されていた部分がある、ということが窺えます。
しかしもちろん、世界のトップ製材メーカーは、
最新の機械を導入した品質の向上、輸出先の動向を見極めたマーケティング、
さらには林業分野でも低コスト化をはかるなど、
日々の経営努力を怠っていません。
茨木様からは、そのような海外の林業や製材の映像を交えて、
最新の取り組みについてご紹介いただきました。
【3】世界から見た「日本」
最後に、世界から見た日本というマーケットを考えました。
今、たとえばカナダから輸出されている針葉樹のうち、
日本向けに出荷されているものは、そのシェアわずか5%です。
この決して大きくないマーケットを、
世界はどのように見ているのでしょうか。
視点①「為替」・・・円安により、日本への輸出は不利になってきています。
視点②「日本のマーケット縮小」・・・住宅着工棟数が減り、日本の木材需要は増える見込みが低い状況です。
視点③「日本人はうるさい?」・・・輸入の単位が細かく、また品質や顧客対応についても注文が多い、といわれるそうです。
このことから見て、冒頭の「外材に勝ち目はない」という表現になります。
逆にいえば、
「よほど円高にならな限り、国産材のシェアは伸びていきます」
と解説されました。
国産材にとってのチャンス到来と言えるかもしれません。
しかし、輸入材も含めてどの市場に、どんな製品を送り込めば勝てるのか、そのQCDはどうか、
明確なイメージを持って、その見極めをすることが重要と感じました。
まとめますと、
★そもそも誰が競合なのか?競合の強みと弱みはなにか?正しく認識しよう!
★そのうえで市場性(マーケット)がどこにあるか把握し、チャンスをつかみ取れ!!
ということを、強く感じたご講演でした。
★★★受講者の声★★★
・国産材にチャンスがあることには驚いた。欧米が、日本のマーケットに将来がないと言える根拠もわかり勉強になった。外材の方が納期がしっかりしており、品質も一定であると聞いていたが、今日話を聞き、納期まで時間がかかったり注文したものが入ってなかったりするなどの問題があるということがわかった。(学生)
・外材についてはいろいろと話を聞かされるが、扱っている人から話を聞けたのはものすごく興味深かったし、ありがたい機会だった。(林業)
・日本における北米、欧州の外材の率が減ってきていることが意外でした。商社の在庫により、日本国内での納期が早いということにもおどろきました。(会社員)
・外材輸入のリアルな話をうかがえて目からウロコな気分でした。どこも薄い利幅の中で激しく競り合っていると実感しました。(行政)
・貿易事情は耳にすることが全くなかったので、イメージがほとんど先行していました。今回そのイメージが間違いだらけだったことを認識できました。世間に流れている外材イメージは現状とは全く違うこと、本当に驚きでした。(学生)
・何から何まで目からウロコ、外材のリアルをここまで見せていただき、感謝感激です。日本の需要が大きく、商社に十分な余力があり円高だった時代と、現在、未来とでは事情がまったく違う。それがよく分かりました。輸出産業を守るために円安を続けると、アジア諸国との競合でも日本は買い負ける。(会社員)
・「外材に勝ち目がない」とおっしゃっていたのが驚きでした。日本へのマーケットが5%、納期の話が印象的でした。(林業)
・外材に勝ち目はないとのことであったが、海外から見た日本のマーケットが小さいこと、中国が伸びてきていること、日本の需要が伸びないことが予想できる。そのうえ要望が多い。こういったことから、日本とやりとりするのが面倒だと思われているのが本質なんだろうと思った。だからこそ、日本人は本当の競争相手を知った上で、適切な価格を追求していく姿勢を見せていくことが大切なのだと感じさせられた。(学生)
・外材は品質、納期がしっかりしているというのは、商社が在庫するからであって、輸出側は意外と適当であったというのは驚きだった。貿易に関する知識がほとんど自分にはないので、競争相手を知るためにも勉強しなければと感じた。(行政)
★次回告知★
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国産材ビジネスセミナー第4回
「ニッポンの住宅動向からバイオマスまで」
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・プレミアムなメーカーを目指す、製材業の方!
・時代に求められるコーディネーターになりたい、木材流通業の方!
・販路開拓を目指す林業会社の方にも!
■日時:12月12日(土)14:00~18:00 +懇親会
■場所 東京都内(詳細後日)
テーマ:「ニッポンの住宅動向からバイオマスまで」
●日本の住宅動向
・住宅10ニーズ
・国産材利用工務店の営業ノウハウ
・公共物件、マンション、リノベーション
・新たな需要、バイオマス
●経営マーケティング 実践編
・B to B / B to C 営業とは何か
・チラシ作成のポイント
・行列をなす地域ブランド工務店の作り方
●話題提供
世界の木材ニーズ~香港を事例に~
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■受講料:おひとり様13,000円(税込)/学生 6,500円(税込)
■お申込みについて
ご参加をご希望される方は、メール(info@chiikino.jp)にて
以下の項目をお知らせください。
1)お名前
2)ご所属
3) お電話番号
4)メールアドレス
5)懇親会へのご出欠
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