弊社がまちづくりに関わっている京都市北区の集落が、まちづくりの勉強のため、
福井県三方上中郡若狭町熊川宿、そして滋賀県高島市針江地区へ視察へ訪れました。
ちいきの社員も、同行させていただきました。
熊川宿(重要伝統的建造物群保存地区) http://kumagawa-juku.com/
古い街並みが残ります。
街道沿いを流れる水路
レトロな看板
この熊川宿のまちづくりは、昭和43年に地域の「熊川文書」が県指定文化財となったことをきっかけに、
いわゆるヨソモノの声から見直しが始まり、その後研究者による調査や市民の委員会設立を経て、
平成8年にいわゆる伝建地区に指定されました。
今では、まちづくりに関わるいくつかのグループがあり、それぞれ地域の方が「自分のできること、得意なこと」
でまちづくりに参加できるようになっています。
手仕事ができる人は、つる細工で街を飾る。踊りが好きな人は、伝統の踊りを復活させる。古文書が好きな人は、それを読み解く・・・
「観光地を目指さない。まちづくり型の観光を目指す。」
ことをモットーに、お土産なども無理なく、手作りのものが軒先に並んでいます。
地元特産の「葛」のつるでつくったライトスタンド
素朴な味のお料理。葛の入ったおそば、ごま豆腐、葛餅、そして鯖寿司。
まちづくりのキーパーソンにご案内をいただき、
これまでの苦労話や今後の課題も聞かせていただきました。
京都から来たメンバーも、真剣に聞き入っていました。
ちなみに、お昼ご飯をいただいたお店のお座敷。
「これはええ北山丸太やな!」と、自然とみなさん、床柱の周りに集まっておられました。
やっぱり、「地元が好き!」という気持ちを垣間見ました。
午後からは、滋賀県高島市針江地区を訪れました。
針江地区「生水(しょうず)の郷」 http://www.geocities.jp/syouzu2007/
ここは、「川端(カバタ)」の郷。
絶えることなく湧き出るきれいな水を、家の敷地内の“カバタ”で、飲料水、炊事などに利用する生活が今も残っています。
写真家 今森光彦さんがNHKの番組で取り上げたことで有名になりました。
街中に湧き出る水が、問題なく飲むことができます。
しかし、有名になったことで、民家の建ち並ぶ町に見物客が押し寄せるという事態となり、
「針江生水の郷委員会」を立ち上げ、現在は必ずボランティアガイドに案内を受ける制度になっています。
飲料水に使う → 野菜や食器を洗う → 食べ残しは鯉のエサ → きれいな水が川へ流れる という循環。
昔から“エコ”の生活を続けてきた地区。
その象徴として、太陽光発電や小水力発電でつくられた電気により街灯を照らします。
ここの地域でも、「観光」を目指さないこと、みんながまちづくりに参加できることをポリシーにされていました。
地域住民が、地域を誇りに思い、幸せに暮らすことが第一であって、
無理な地域おこしでみんなが疲れ、文化が壊されてしまっては、本末転倒だからです。
ガイドを申し込むと渡される、パンフレットと竹コップ。
このコップも、地元の方の手作り。竹林整備にも一役買っています。
視察の中で、ひとつ興味深いできごとがありました。
町歩きをしていると、京都の方から「これは何ですか?」と、不思議な構造物を見つけたのですが、
地元ガイドの方も、それまで気にされたことがなかったようで、新たな発見になったようです。
「ヨソモノ目線」の意味を感じた瞬間でした。
この針江地区の方々も、以前は
「カバタなんて時代遅れで恥ずかしい。塩素で消毒した水道水を使った方が格好いい!」
と、自らの地域の宝に気づかずにいたそうです。
そこへ、ヨソモノが、ときには海外からも、「素晴らしい」といって見に来る。
そこで初めて、見慣れてしまっていた宝に気付かれたのでした。
ヨソモノ目線や、伝建地区、文化的景観といった「指定」がきっかけとなって、地域に誇りが持てるようになった。
そんな事例を、2つの地域で見せていただくことができました。
ただ、あくまで「きっかけ」は「きっかけ」です。
地域の人が(全員とはいきませんが)主体的に宝を見つけ、無理なく発信していくことで、幸せが醸造されていくように思えます。
我々も、「ヨソモノ」の一員として、皆様にきっかけ、気づきをご提供できればと思っています。