国産材ビジネスセミナーin東京、ついに2015年度最終回!!
第5回目を開催し、今年度のカリキュラムを終了いたしました。
最終回は、今までご紹介してきた内容を凝縮しつつ、
「林業バリューチェーン」をテーマに開講しました。
【話題提供】新春年賀状からみる、年賀状デザインのポイント
まずは新年一回目ということで、年賀状をテーマにご紹介。
弊社にいただいた年賀状を参考に分析して、
「年賀状デザインのポイント」をご紹介しました。
年賀状作成のアプリやソフトが普及し、誰もがきれいに年賀状を作れるようになった今、
数ある年賀状の中で、もらった人の心を掴む、
他社との差別化に効果的なポイントとは何でしょうか?
それは、
1)会社ブランドの統一性
⇒ロゴマーク、コーポレートカラーが使われ、一目でその会社だとわかる
2)営業的な要素
⇒最近の商品や事業内容、トピックスがわかる
3)目を引く親近感
⇒手書きコメント、社員の顔が見える
いただいた年賀状を参考にこれらのポイントをご紹介しました。
年賀状の利用枚数はピークの2003年から徐々に減少していますが、
他の人(会社)が出さないからこそ、
年に一度の、顧客やパートナー企業とのコミュニケーション機会として、
年賀状をしっかりにご活用いただきたいところです。
さて、ここからセミナー本編へ。
【1】バリューチェーン分析から林業界を見る!
まず始めに「バリューチェーン」とは、原材料の調達から製品・サービスが顧客に届くまでの企業活動を、
一連の価値(Value)の連鎖(Chain)としてとらえる考え方のことを言います。
今回のセミナーでは、林業~製材~建築業のバリューチェーンを分解し、弊社岩井から解説いたしました。
例えば、「林業」を例に挙げると、
地拵え、植林、下刈り、除伐、間伐、枝打ち・・・と、
チェーンを分解できます。
その中で、ボトルネックになっている部分、利益を生み出している段階を見極めて
戦略をたてることができます。
また これを、業界全体に当てはめて
林業→製材→加工→建築・・・
などの流通段階を一連のチェーンと考えると(バリューシステム)
改めて、山で育てた木が使われるまでに、
・多く時間とコストが掛かっていること
・BtoB、BtoC、BtoBtoCと様々な業種が携わっていること
・プロ~兼業~ボランティアまで、携わる人の裾野が広いこと
などが分かり、林業木材業全体のバランスを俯瞰することができます。
またこのバリューチェーン分析の必要性について、異業種の事例を見てみると、
「サプライヤーの育成」と「流通改革」
がカギといわれています。
例えば、世界最大の食品・飲料会社であり、日本でもおなじみの「ネスレ」。
ネスレでは、オーガニックで安心安全なコーヒー豆の商品化に向けて、
コーヒー豆の栽培に携わる従事者の生産能力アップと、労働環境の改善が
課題となりました。
そこで、
・サプライヤーである農家の生産性を高めること
・農家の労働状況を改善し、従事者数を増やすこと
これらに取組むことで、バリューチェーン全体を改善し、
オーガニックコーヒーの商品化を実現しています。
林業木材業界においても同じく、
・製材業が林業事業体と連携して、優良材の安定供給体制を構築
・原木市場が林業事業体に造材指導をして、ニーズにあった原木供給を目指す
といった「サプライヤーの育成」を通じて、
木材の付加価値、企業の付加価値を高めている事例が多々あります。
受講者からは、
「木材は1世代で商品にならない素材だが、先祖が世話をしてくれた分まで、
育林コストとして計算すべきか?どの範囲までバリューチェーンに含めるのか」
といった質問もあり、大いに関心をもっていただけるテーマとなりました。
【2】林業木材業の地域連携事例紹介
林業バリューチェーンの考え方に基づき、第二講座では、
古川より日本各地の事業連携の事例をご紹介しました。
弊社がコンサルティングさせていただいた地域において、
・属人的な連携
・仕組みの連携
・組織の連携
・ソフトな実務連携
・ハードな経営連携 等…
多種多様な連携の形がありますが、これらを一挙ご紹介いたしました。
どの地域連携においても、
・共通の規格を定め、個々のレベルを高める
・役割分担を明確にする(例えば、ものづくり、営業、総務を分担する)
このようなルールが最低限必要であります。
地域での連携とは、仕事の奪い合いをするのではなく、
「ここはプロに任せよう」と、責任の明確化と役割分担を行った上で、チーム全体の力を高めていることが分かります。
また、弊社が事務局を務めるclubプレミアム国産材は、
遠くの同業種が集まった産地連携の一つです。
弊社では今後もセミナーや研究会を通じて、
商圏の被らないメンバー同士だからこそ可能な
情報交換や連携のご支援をさせていただければ幸いです。
【ゲスト講座】意外と似ている? PC業界と林材業 ~低成長時代のビジネスモデル~
さて、今回は(株)トビムシ取締役の小林洋光氏にゲスト講座をいただきました。
小林氏は、森林・林業を通じて地域活性化を支援する㈱トビムシ取締役を務める一方で、
外資系パソコンメーカーのレノボ・ジャパン㈱法務部を経験され、
法務の面から、日本の地域や林業を繋ぐ活動をされています。
そんな小林氏から、まずは法務関係のトレンドをご紹介。
2015年3月31日に「民法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、
同日中に通常国会へ提出されましたが、
今後の民法改正にあたって、住宅の欠陥トラブルはどのような影響を受けるのでしょうか?
バリューチェーンを考えれば、
確実に木材、林業界へも影響をおよびす住宅クレーム。
工務店業界のみならず、林業界も今から理解しておきたいポイントについて、話題提供をいただきました。
次に、今回のメインテーマへ。
異業種であるパソコン業界から見た林材業といった切り口で、お話しいただきました。
まず、一見すると似て非なるパソコンと林材業ですが、
「生活の大半を共にするモノ」という点では、共通しています。
また、市況においても、
・建築の新築着工棟数、市場規模 → 減少
・パソコンの出荷実績、平均単価 → 減少
という、いずれも右肩下がりの低成長時代のマーケット環境という点で、
類似する部分が大いにあるということです。
そのような環境下で、パソコン業界においては、「自社のバリューとは何か?」をとことん考え、
デザインの訴求、用途に適した機能性の訴求、技術革新、
競合他社や競合商品との差別化を徹底して考えています。
そのような中で、異業種に携わる小林氏からみた林材業界には、
掘り起こされていない価値伝えるべき埋蔵情報の宝庫であり、
さらに、伝えたことが情報ではなく、伝わったことが情報となる時代であると、メッセージをいただきました。
豊かな地域性と年月を背負って育まれた木材は、希少性の価値ある商品であり
さらに快適性能や健康性能を科学的根拠で伝えたり、
異業種の販売方法や保険サービスを取り入れて伝えられたいと、ご提案いただきました。
【まとめ講座】明日からできる!事業計画の立て方
今回のセミナーでは、バリューチェーンの観点から、多種多様な連携についての話題をご紹介しました。
一方で、連携によって地域全体の力を高めるには、
そもそもに地域に強い企業があり、経営者がいることが要であります。
強い経営を目指すために必要な、事業計画の立て方とは?
弊社古川がコンサルティングでお伝えしている要素を5つに絞って解説しました。
また、林業、製材業、木材流通業の黒字企業の業界平均データを用い、
粗利率や営業利益、経常利益とは何か?
経営の基本となる考え方をレクチャーいたしました。
経営を考えるにあたり最も重要となるのは、「時間対粗利」であり、
右から左へモノを流通させるのではなく、「付加価値」を高めて仕事をつくること、
さらに、時間に対してどれだけ有効な粗利を生み出せるかということです。
最後にこのようなメッセージをお伝えして、2015年度国産材ビジネスセミナー最終回を終了いたしました。
2015年度は、全5回のメニューを開催いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
最後に、受講者様の声をご紹介します。
アンケートにご協力いただいた皆様、貴重な声をありがとうございます。
来年度の開催 については、こちらのブログにてご紹介させていただきます。ご期待ください!
★★★お客様の声★★★
■木材業 I様
初めて参加させていただきましたが、大変興味深いお話ばかりで面白かったです。自分が林業という業界について知らないことが多いことを改めて実感しました。また、PC業界の対年度成長率が約-40%という事実には驚きました。やはり異業種から見る林業という視点は、林業に携わっている人にとっては、とても斬新であると思います。このような視点の話をもっと聞いてみたいと思いました。
■公務員 S様
顧客設定とコンセプトが大切という点が印象に残りました。本日のセミナーを聞いて、自治体(村)をどうしたいのか、目標(ビジョン)を立てるべきと思いました。また、ゲスト講座を聞いて、より木材業界は生活との密着を考えること、営業と技術者の考え方のズレをすり合わせることが必要だと思いました。今後のセミナーでも、事例紹介を聞いてみたいです。
■公務員 I様
行政という立場にいて、果たして何をすべきなのかを考えるきっかけになりました。山林面積の多い自治体において、資源を有効活用できていない点があります。地域の木材関連業者と共に真剣に考える場を設けるために、今後もご協力いただきたいです。
■バイオマスエネルギー関係 K様
利益を何に使うかを考えることが大切という言葉が印象に残りました。地域で連携をとることが各企業にとって、業界にとっても良い効果を生み出すということが分かりました。地域の状況を全員が把握し、問題を解決するために何をすべきかを、全員で考えること、その時に、きちんと数字から分析していくことが重要だと思いました。また、林業は他業種の視点を持ち取り入れていく事が重要と実感しました。
■学生 T様
日本的な協力と、欧米的な協力(連携)の違いについてのテーマが面白かった。経営に係る利益には5種類あること、戦略、戦術、戦闘の違いが分かったこと、事業計画を立てるにあたって、事業内容を4つに分けて組み立てること、バリューチェーンと、まとめ講座を通じて全体的に繋がりを持って理解できました。伝えたことが情報ではなく、伝わったことが情報となる時代であるというところに、森林・林業の伸びしろがあると強く感じます。異業種に認められるバリューとは何かという考え方が必要であり、魅力になると感じました。
■林業 S様
近くの異業種、遠くの同業種と接点を持つことが重要であるとのメッセージが印象に残りました。事業計画の立て方のポイントを聞いて、自分の行っている事業で欠けている点が分かりました。今後、もう一度事業計画を見直していきたいと思います。
■木材業 H様
連携構築の在り方について、自分の地域を想像しながら聞くことができました。また、事業計画の立て方は、勉強になりました。ゲスト講座を聞き、異業種事例を聞くことで、森と材木のバリューを繋げていく事を積極的に考える重要性を感じました。
■製材木材業 U様
バリューチェーンという言葉の意味についてしっかりと説明を受け、自社を振り返った時に、改めて考えさせられる点があり、非常に勉強になりました。今回がセミナー初参加でしたが、製材業に携わりつつも、林業という仕事をあまり念頭に置いていなかったことが分かり、川上~川下までの一連の流れを理解する良い経験となりました。異業種からのゲスト講座も大変興味深かったです。今後も、国産材を使用し続け、また、エンドユーザーが求めているのか、色々な角度から分析して商品展開のヒントを教えてほしいです。
■学生 Y様
バリューチェーンや連携・協力のテーマは、会社を細かく分析する上で大変役立ちそうだと思いました。今後、就職し会社について分かった上で、より現実味を帯びて理解できる内容だと思います。事業計画については、自分の場合は人生計画に置き換えて考えてみようと思いました。利益率についての内容は、社会人になる前に知ることができて良かったです。復習して、理解を高めたいと思いました。ゲスト講座について、PC業界と木材業界の類似点があるという視点が面白かったです。木材業界が成長できる伸びしろが見えました。異業種では当然のことでありながら、木材業界が取組んでいない点に改めて気づき、もっと良さをアピールしていきたいと思いました。
■旅行業 O様
林業バリューチェーンの図式が分かりやすく、原木流通業の企画性を高める必要性についての話題も印象に残りました。林業木材業に関わる人やお金の規模感が掴めて分かりやすかったです。ゲスト講座では、「伝えたいことが情報ではなく、伝わったことが情報となる時代」という言葉に納得しました。今後も業界の最新情報を得るために参加させて下さい。
■まちづくり関係 M様
協力にあたって、役割と責任を明確にすることの必要性について、印象に残りました。セミナーを受講して、市場の概観が掴めたのが良かったです。もっと林業について知るコンテンツを色々と探ってみたいと思います。林業についてまだまだ知らないことばかりなので、今後も勉強していきたいです。ゲスト講座から「一次産業の中でも、林業ほど長期的な時間軸で続いてきたものはなく、貴い」という捉え方が新鮮でした。
■学生 W様
林業バリューチェーンを聞いて、林業から工務店業までの入り口と出口の窓口が広いことが分かりました。また、木材業の営業の大切さを知ったセミナーでした。林業の育林にあたって、過去の枝打ち回数まで把握して経営管理することも大切なのだと思いました。全国に様々な連携事例ができ始めているのだと知り情報盛りだくさんな内容で、とても勉強になりました。ゲスト講座でPC業界と林業と共通する点があるといった視点も新鮮でした。来て良かったです!ありがとうございました!
■学生 H様
初参加でしたが、林業の深さ、表面に出てこない部分を知りました。また、林業の将来性の分かる内容でした。
■デザイン業 S様
「情報力」と「行動力」で「交渉力」を高めるといったテーマが面白かったです。「負け残り」とも言われるような、衰退産業の中で残っている木材業者の経営力についての話題も印象に残りました。事業計画の立て方については、そもそも事業を行う前に確認したい7つのことが紹介されました。自分自身が夢を見たいと思いながら、踏み込めない理由と共通する点がありましたが、「負け残り」という言葉の意味をポジティブに捉えて進めたらと思いました。ゲスト講座では、自己バリューと将来求められるバリューを徹底的に考えるということが勉強になりました。オススメ図書の紹介も嬉しかったです。今後は、事業計画の立て方について、さらに詳しく知りたいです。
■住宅業 K様
事例紹介で紹介された木製品の美しさに惚れ惚れしました。林業界のバリューチェーンを集約した資料をみて、改めて木に関わる業界が広範囲な一方で、どこも「全く問題なし!」と言い切れる業種はなくて、ますます自分のバリューをどこで発揮できるのか、考えさせられました。ゲスト講座では、PC業界について知れたのが、とても面白かったです。林業界のことを知らなくて勉強中ですが、もっと視野を広げて、比較しつつ色々と見ることも重要だと思いました。
■製鉄業 H様
日本的協力と欧米的協力の違いについての解説が面白かったです。ビジョンの置き方で、敵が変わるマーケティング視点も印象に残りました。林業バリューチェーンの図式を見て、改めて川上への還元がなされていないことが確認できました。バリューチェーンの視点で、自らのストーリーも見直してみたいです。ゲスト講座についても、PCはじめICT業界の閉そく感について、改めて納得しました。ヒントになることが聞けました。
■エネルギー関係 H様
「理念なき利益は犯罪であり、利益なき理念は寝言である」という言葉が印象的でした。まずは行動!ということで今回参加しましたが、業界の事を色々と知ることができ、大変勉強になりました。異業種からみた林業の分析も面白かったです。
■林業 T様
今回は総まとめの回ということで、かなり多くの事例を詰め込んで得ることが出来ました。ゲスト講座では、林業木材業のバリュー(強み)を異業種からも認めてもらえるプレゼンで参考になりました。転職後も参加したいと思います!
■公務員 S様
偶発的に発生した利益で喜んでいてはダメで、計画を立てて、それ以上を達成した時に喜ぶことが重要と勉強になりました。5つの利益についての解説は、復習したいと思います。
■学生 H様
林業木材業だけでなく、どこでも使える知識として、利益や事業計画の立て方についてのテーマが勉強になりました。今まで、当事者意識というものがなく、生きてきました。今思えば、夢中になれるものを探して移り住んできたのかもしれません。これから社会を知り、新しい風にコテンパンにされても、夢中になれるものを探して動いていきたいし、動き続けます。お世話になりました。ありがとうございました。