- 天竜水平連携協議会 様
「日本三大人工美林」に数えられる、歴史ある林業地の静岡県・天竜。実力ある林業会社や製材メーカーが集積しFSC®森林認証を通した地域連携の実績もあるこの地域で、さらなる木材供給体制の充実をはかるための水平連携プロジェクトが発足しました。大規模建築物への納材実績から課題を分析し、山側に利益を還元しながらよりよい建物づくりに貢献する木材供給の在り方を議論しました。それを実現するために行うべきアクションプランを作成し、天竜の製材メーカーが水平連携協議会を設立し、大量需要に対応するプラットフォームが誕生。今後、全国的に増加が予想される中大規模木造建築物への木材供給対応において、モデルとなる事例です。
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納材実績の課題分析
平成27年に建設された大規模木造公共建築物「このはなアリーナ」への納材実績から、木材供給における課題を分析しました。静岡県の呼びかけにより、設計事務所、構造設計事務所、ゼネコン、木材商社、そして木材産地から製材メーカー、加工会社、林業会社が集まり、ともに真剣に議論と研究を重ね、川上から川下まで各プレーヤーが行うべきアクションプランを作成。課題点を網羅した「提言書」としてとりまとめました。
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水平連携協議会の設立
アクションプランを実現するため、産地の製材メーカーや加工会社により「天竜水平連携協議会」を設立しました。これにより、大ロットの木材供給における品質基準、価格設定、納期対応を産地として一体的に行う体制を整備。また建築物の設計段階から相談を受けられる窓口を整備することによって、製造に時間を要する木材の確実な供給と、無駄のない木取りが可能な設計を提案できる体制としました。
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パンフレット作成
水平連携協議会としての新たな広報ツールとしてパンフレットを作成しました。天竜地域の山林・木材の特性や、木取りの基本についてレクチャーしながら、歩留まり向上とコストダウンのためラミナと内装材の一括供給を提言するなど、建築関係者に向けた実践的な内容となっています。ツールを活かしながら、全国的な建材展示会やゼネコン向け説明会に出展し、積極的に広報活動を実施しています。
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天竜水平連携協議会会長 石野 秀一さま
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建設側と山側がひざを突き合わせて喧々諤々の議論をする、貴重な場となりました。
私は天竜で林業と製材を行う㈱フジイチの代表取締役をしています。古川さんとは自社のブランディングの時から長年のお付き合いがあり、これまでは「個」の企業の力を高める支援をお願いしてきました。
中大規模建築物にも木材が大量に使われるようになり、また森林認証材の需要など「追い風」が来ているように見えますが、実際の大規模な木材供給では品質基準の厳しさ、納期のタイトさ、設計や発注タイミングのズレによる歩留まりの悪さなど、課題は山積しています。これには産地の「面」の力が必要になってきます。
今回は、実際の納材事例から、設計事務所やゼネコンなどと木材産地がひざを突き合わせて、お互いに真剣に議論を重ねることができた、貴重な場となりました。洗い出された課題を活かし、やるべきことを実行するために今後も水平連携の体制を整えていきます。