目次
令和8年度第1回となる「森林ビジネス研究会」を、8月29日(土)に新大阪にて開催しました。
今回のテーマは、
「地域ビジネス複合経営」を軸に、異色の実践者から学ぶ
~新しい『複業化人材』と『多角化企業』のかたち~
森林・林業・木材という枠だけに留まらず、
「地域でどう仕事をつくるのか」
「一人の人間が複数の領域を横断してビジネスを創り出すとはどういうことか」
「企業は多様な人材や事業をどう生かすのか」
そんな問いを、ゲストスピーカーはじめ参加者の思想と実践から掘り下げる濃密な4時間となりました。

参加者自己紹介・近況報告
まずは恒例の、参加者の自己紹介と近況報告からスタート。
森林・林業、木材、地域づくり、行政だけでなく、研究者やまったくの異業種など、多彩な参加者より、最近の取り組みや課題、これからの構想などを共有いただきました。
「今回は住むところを変えた方や、職種を変えた方、複業の方が多く、普段の生活・仕事で出会うことのない方々のお話を伺い刺激になりました。 」
という声もあったように、様々な地域、さまざまな仕事の参加者の皆さん。日々、自らや周辺のビジネスだけを見ていては出会えない視点、次の事業につながるヒントが詰まっています。
研究会では、この自己紹介も重要な時間に位置付けています。

最近の古川総研と最新情報
続いて、古川より、最近のプロジェクトや全国の動きをご紹介しました。

弊社高田「地域活性化企業人」として二拠点居住し、古川も「地域力創造アドバイザー」となっている青森県深浦町での森林・林業を軸とした地域づくり、深浦に訪れた東京大学と立教大学の学生との地域での取り組み。
また、初参加の方も多かったため、古川の自己紹介でもある「東京都町田市」「奈良県川上村」での原体験とともに、「情熱方程式」についても改めてお話させていただきました。
また、「社会人になったら決定的に変わる2つのこと」という問いから、森林環境税(予算)使途の考え方を説き、「市町村こそ、いま自分たちでビジョンを描き、トライ&エラー(エラー&ラーン)を!!予算(森林環境譲与税)の使い方は、あり方(地域独自の答え)から。」という熱いメッセージを伝えました。
さらに、今回のテーマである「地域ビジネス複合経営」につながる話題として、船井総合研究所が提唱する「地域コングロマリット経営」「100億企業宣言」について解説。あわせて、古川が船井総研OBとして参加した「サステナグロースカンパニーアワード」についても報告し、そこで紹介された事例をもとにビジネスの考え方を紐解きました。
「理念なき利益は犯罪、利益なき理念は寝言」。
地域ビジネスだからこそ、いえ、私益と公益の双方を担うビジネスだからこそ、理念と利益を両輪として考えていく必要があります。
ちいきのスピーチ
「地域活性化起業人制度を活用した二地域居住生活」

古川に続いて、弊社高田より、「ちいきのスピーチ」として情報提供させていただきました。
高田は現在、総務省の「地域活性化起業人制度」を活用し、月の約半分を青森県深浦町、残りを大阪で過ごす二地域居住を実践しています。
深浦町の森林や地域の特徴、森林・林業ビジョン、「深浦町トータル林業まちづくり構想」をベースに、現在担っている役割に加え、実際に地域に暮らして感じていることなどをご紹介。
着任してまだ半年ほど。
まずは地域の祭りを手伝うなど、小さなところから地域に入り、地域の方々との関係をつくりながら、徐々に自分自身も地域の未来を「自分事」にしていく。
地元・東北の森に仕事として関われるやりがいとともに、これからどのような提案や実践につなげていくのか、現在進行形の様子を報告しました。
津軽弁キーワードを織り込んだ報告は、リアリティとともに、参加者含む、地域でビジネス展開したい、地域活性化に取り組みたい人たちに、1つの可能性を提示できたのではないかと思います。
ゲストスピーチ
「複業化人材と多角化企業をつなぐ、400年前から変わらない一つの技術」

今回のゲストは、京都府舞鶴市を拠点に活動する地域探求プロデューサー(ネオ百姓、昆虫コンシェルジュ、ミュージシャン)、山下恭平氏。
農業、宿泊、教育、まちづくり、自然体験、音楽、ラジオ……。
一見すると、「一体何をしている人なの?」と思ってしまうほど、多彩な領域で活動されています。
しかし山下氏のお話を聞いていくと、それらはバラバラの「副業」の集合ではありません。
昆虫や植物に魅せられ続けてきた原体験、世界を歩いた経験、膨大な読書、地域での実践。
山下氏の資料では、複業を「職業の単純な足し算ではなく、長年抱えてきた根底の問いが、複数の現場に現れた姿」と言います。
「肩書きは、多面体の一面にすぎない」。

さらに山下氏のお話は、現代のキャリア論から約400年前の舞鶴へ。
丹後田辺城主・細川幽斎の田辺城籠城戦を題材に、「武将」という本業だけでなく、歌人・文化人として築いてきた関係性が、結果として地域や文化を守る力になったという視点が紹介されました。
そこから現代の地域企業である志摩機械と、映画事業を展開するシマフィルムの実践。
本業だけでは届かない領域へ、人や文化を通じて回路をつくっていく。
そして、その両者をつなぐ「400年前から変わらない一つの技術」として、人材を自社の中だけで囲うのではなく、「自分の信用を担保に入れて、その人を外へ送り出す」ことを「推挙」として提示。
社内で「よくやった」と褒めることと、自分自身の信用をかけて社外の誰かに紹介することは違う。
人を外へ出すことで、その人自身の活躍の場が広がるだけでなく、自社だけでは入れなかった地域や分野との新たな回路も生まれていく。
また、「推挙」を地域企業による人材への「投資」であるとも表現。
山下氏自身のこれまでの思案と実践の積み重ね、歴史のエピソードが重なる、非常に印象的なテーマでした。
参加者からの質問 「これだけいろいろなことをしている中で、自分自身の“核”はどこにあるのか?」
これに対し、山下氏から返ってきたのは、昆虫や植物に魅せられてきた37年間と、「生命とは何なのか」という根本的な問いでした。
虫や植物から地域を見る。
地域づくりから人を見る。
「今生きているみんなは同世代」
具体と抽象を行き来し、一見対極にあるようなものも、すべてつながっているものとして考える。
農業、教育、観光、音楽、まちづくりという仕事の種類ではなく、その奥にある「問い」こそが複業をつないでいる。
参加者それぞれが、自分自身の仕事や人生を振り返る時間にもなりました。

ゲストスピーチ最後には、山下氏によるオリジナル曲の生演奏!
具体と抽象を行き来する感性を、ビジネスだけでなく歌声にも込めた熱唱に会場が聞き入りました。
古川まとめ講座
「人生」と「仕事」と「事業ポートフォリオ」

最後は古川によるまとめ講座。
「ワークライフバランス」の古川オリジナル視点での解説から、「ワークエリアバランス」という視点も交えながら、自分自身の原体験や経験、「情熱方程式」についても掘り下げました。
そして個人の生き方から、企業経営へ。
「経営9フレーム」を使いながら、企業もまた一つの完成された形ではなく、状況に応じて形を変え、循環していくものとして考えます。
そして、「地域ビジネス複合経営」はじめビジネスにおいて重要なのは事業ポートフォリオをどう構成するか。
地域で複数の事業を展開することは、単に「仕事を増やす」ということではありません。
それぞれの事業の意義を位置づけ、バランスも考慮しながら循環させていくことの重要性を、古川オリジナル「4つの事業ポートフォリオ」で解説しました。
管理会計もしっかり取り組み、得た粗利をどのように還元していくか、という経営の醍醐味。
森林ビジネス、地域ビジネスに限らない、ビジネスの根幹ともいえる複業経営の根幹についてお話させていただきました。
そうして、地域の持続可能な発展に繋がる「ビジョン」「計画的偶発性」という古川の作業仮説で締めくくりました。
一つの仕事、一つの会社、一つの事業で考えるのではなく、「複数をどう組み合わせるか」という視点、事象と自らを深掘りし、そして動いて創造していく。今回の山下氏の生き方とも繋がるものとなったのではないでしょうか。
シークレットゲスト?!も登場!
奇しくも山下氏と同じ大学、同じ教授の研究室出身ということが判明した、株式会社エネキコリ代表 久米歩氏にもシークレットゲストでオンライン登場していただきました。

原体験の共通性、地域での取り組みと心構え、シークレットな話も?!
古川とも昔馴染みの気心知れた戦友、また新たなステージへとステップアップした久米氏とのトークに、笑いあり刺激ありのひとときとなりました。
懇親会も研究会の一部
4時間の研究会終了後は、懇親会!
地域・会社での取り組み、これからやってみたいことなど、話題は尽きません。

研究会でインプットした内容を、自分自身の現場へどう持ち帰るか。
こうした本編後の対話から、新しいつながりや事業の種が生まれることも、この研究会の創造性の1つです。
今回も大盛り上がりの懇親会でした。
(盛り上がりすぎて、写真を撮りそこねてしまいました…↑写真は締めの挨拶ですが、懇親会中は自分の声が聞こえないくらいの賑わいでした!)
最後に
今回の研究会では、「複業」という言葉からスタートしながら、単なる働き方の話を越えて、
自分は何を問い続けているのか。
企業は人をどう生かすのか。
地域で事業を続けるために、何を組み合わせるのか。
という、個人・企業・地域それぞれの経営につながるテーマを考える時間となりました。
また、いつもの研究会からは少し変化球ともいえるユニークな回でもありました。
ビジネスや研究に展開するその前の、想像を創造に昇華させていくプリミティブな感覚の重要性を訴えるものでもあったと感じています。
AIが一般的平均からマニアック領域平均まで、組み合わせによっては独自性を感じるものまで生成するようになる中、俯瞰した視野でありつつ偏愛でもある、人間ならではのオリジナリティこそが有機的な創造をこれからも生み出していく根っこになるという示唆もいただいたと思います。
ビジネスでも地域づくりでも、結局まずは自分の中から見いだして発していくものだ、という感覚を刺激された方も多かったようです。
一見すると異なる仕事や経験も、自分自身の「情熱」「原体験」「問い」を辿っていけば、一本につながっているかもしれません。
そして企業側も、人材を一つの肩書きや職務に閉じ込めるのではなく、その可能性を信じ、外へ送り出すことで、新しい事業や地域との接点を生み出せるかもしれない。

答えを持ち帰るというより、それぞれが自分の現場で考え続けたくなる創造的「問い」を持ち帰る研究会となったのではないでしょうか。
ご登壇いただいた山下恭平様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
参加者の声(一部抜粋)
本業を大切にしながら、その周辺にある地域資源や人とのつながりを活かして事業を広げていく考え方が参考になりました。弊社でも住宅新築事業を核に、宿泊や不動産、地域連携など新しい取り組みを進めているため、理念と利益の両方を意識した持続可能な経営を改めて考える機会になりました。
おすそ分けエピソードだったり、地域の歴史文化の紹介だったり、森林・林業・木材産業だけでない地域への視点は古川総研イズムだなと感じた。深浦町のビジョンの推進にも注目していきたいです。
山下さんの経験含め、内容、型にはまらない資料やお話がとても面白くかったです。知識と経験を活かした突き抜けたこだわりや働き方、生き方はとてもためになりましたし、自分自身ももっと本を読むなど知識をつけることや、自分の生き方を言語化ができるようにならないといけないなと思いました。
個人の得意分野や興味を社外でも活かし、それが結果として所属企業のブランドや新しい仕事につながっている点が印象に残りました。弊社でも、社員それぞれの得意分野や外部とのつながりを活かすことで、住宅だけにとどまらない新しい事業や地域との接点を生み出せる可能性があると感じました。
「計画的偶発性」なんとなく肌感覚では感じていたが、論理的な説明を初めて聞いて、腑に落ちることができた。 計画的偶発性を高めるために、まず「こうありたい」を明確にし、そのために今何ができるのか、社内でも話し合いたいと思った。
古川さんがホワイトボードで図解した人体に例えた経営9フレーム、とても考えさせられました。
単に事業を増やすのではなく、それぞれが本業につながり、相乗効果を生む形で多角化していくことが重要だと感じました。
山下さんは5年前会った時も変わった人だと感じていたが今回は圧倒された。「何を語れる男であるのか」自分のことを改めて棚卸ししないと感じた。
峠について、店の内装や外観の印象から、研究会に参加されたり、林業や建築関係などとの出会いや人とのつながりが生まれる場所になっていることが素晴らしいですし、店舗を持つ私たちもやっていかないといけないことだと改めて思いました。
12/26(土)望年会&研究会 ぜひご参加ください!
【年末回】
12/26(土)13:00~18:00@新大阪(予定)
毎年恒例の森林ビジネス研究会&望年会!!
ご新規様参加も毎年何名もいらっしゃいますので、お気軽にご参加ください。
開催詳細が決まりましたら、改めてこちらのブログでお知らせいたします。
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昨年開催の様子
https://chiikino.jp/chiikino-blog/20251220/
※今年は午前中の部(出版記念セミナー)について現在予定しておりません。
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森林ビジネス研究会は、森林・林業・木材業界の方はもちろん、地域ビジネス、地域づくり、異業種の方にもご参加いただいています。
今後も、森林・地域・経営を行き来しながら、新しいビジネスの可能性を皆さまと一緒に探ってまいります。








