【開催報告】徳島県三好市「次世代の森づくりシンポジウム」

三好市シンポジウム風景

先日お知らせしておりました、徳島県三好市における三者協定(九州大学・ヤマハ発動機・三好市)を背景とした「次世代の森づくりシンポジウム」が、2月20日(金)に開催されました。

当日は80名を超える参加があり、事前申込者に加え、一般参加の市民の方々にも多数ご来場いただきました。また、三好市長、副市長、各部長をはじめ、担当外の職員の皆さまも参加され、庁内外において森林ビジョンおよび三者協定の認知が大きく高まる機会となりました。

今回は、弊社代表・古川は、パネルディスカッションのコーディネーターとして登壇しました。


世界の潮流と三好市の挑戦

三好市シンポジウム風景(馬奈木先生講演)

基調講演では、九州大学の馬奈木俊介先生より、ネイチャーポジティブ、カーボンクレジット、自然資本の可視化といった世界的潮流について、具体的な手法とともにお話をいただきました。

中でも印象的だったのは、国連での生物多様性報告書の取りまとめや、時には各国から建設的な批判を受けながらも評価を得ていくプロセス。世界のルールづくりは、常に議論と検証の積み重ねの上にあるということ。そして、カーボンクレジットは今なお拡大を続けており、今後さらに広がる可能性があるという現実です。

また、三好市の面積の9割を有する森林を、国際的にも科学的にも認められた方法で評価・活用すること。そのために、既存の衛星データや計測技術を活用し、CO₂吸収量を推計することで「今ある情報から、将来の価値を見出していく。」という段階にあることから、今後の期待感も膨らむ講演となりました。


森林サービスから“まちづくり”へ

三好市シンポジウム風景(パネルディスカッション)

シンポジウムの後半には、馬奈木先生に加え、ヤマハ発動機㈱の吉田城治氏、三好西部森林組合の中川重秋組合長、三好林業イノベーションセンターの田中剛氏、三好市農林政策課の松本泰卓氏をパネラーに、弊社代表古川がコーディネーターを務めるパネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションでは、森林サービス(遊びの創出)と地域材活用を掛け合わせ、森林からまちづくりへと接続する方向性を議論しました。ヤマハ発動機の吉田氏からは、「DXとはデジタル化ではなく、やり方を変えること」として、これまで存在しなかった森林データを取得し、それを活かすために業務フローや合意形成の方法そのものを変えていくという考え方の提示がされ、田中氏からは、境界確認・進捗管理・販売まで含めたマニュアル化の重要性、中川氏からは、組合の役割について参加者の皆さんに共有する場となりました。

人づくりがすべての基盤

締めくくりのテーマとして出てきたのは「人づくり」というキーワードです。人口が減ることは避けられない事実としながら、AIの進展により一人当たりの生産性は高まることを踏まえ、新しいものを生み出す人材をどう育てるかというところに焦点が集まりました。最後の質疑応答の場面では、一般参加の高校生家族から「好き」なことや自身の職種と「林業」がどのように繋がってくるのか問われた際に、馬奈木先生からは「分野は繋がる。最初から林業(特定の分野)にこだわらず、自由度をもって考えると良い。私はこれまで森林について興味をもって育ってはおらず、応用数学ができたことから、人が取っていないデータを取るのが得意であり、強みである。それを分析できる人とタッグを組むことで活かされ、森林・林業と繋ぐことができている」と世界で活躍する先生から貴重な言葉をいただきました。これには、きっと質問されたご家族だけではなく、会場内の参加者皆様にとっても心に響いた瞬間だったのではないかとと思います。このような対話が生まれる場づくりもまた、人づくりの1つではないかと感じる瞬間でした。


体験から学ぶ

三好市シンポジウム風景(VRTRAIL)

会場では、VRトレイルやモビリティの実演も行われ、参加者が実際に体験することができました。ヤマハの担当者からは、アウトドア市場は日本ではまだ伸びしろがあり、森で遊ぶ場所をつくることは、林業の枠を超えた地域活性化につながるというお話もありました。また他にも最近三好市で開発・製作された防災ベッドなどの展示などもあり、改めて林業においては、木を伐って植えてのサイクルだけではなく、周辺産業(近接異業種)との繋がりをもって活かすことで「森づくり・人づくり・街づくり」を体現することができることを実感できる展示コーナーになって用に想います。


おわりに~世界と地域をつなぐ“実装の入り口”~

今回のシンポジウムは、国連レベルで議論される自然資本・カーボンクレジットの話題と、三好市の高校生や市民の暮らしが、同じ空間で結び直された一日でもあり、世界の潮流が「遠い話」ではなく、地域の選択肢として提示されたこととしても大きな意味を持つ会となりました。また、庁内での森林・林業に関する取組の認知向上にも繋がり、既に今後も定期的に開催されるイベントにしたいという声もあり、今後の展開につながる確かな土台が築かれた1日となりました。

弊社はこれまで、ビジョン策定から実行支援までを一貫して地域と向き合ってきました。これからも、構想を描くだけでなく、設計し、実装し、検証し、継続的に伴走してまいります。