令和6年9月26日(木)、奈良県川上村にて地域おこし協力隊(集落支援員)の起業に向けた支援業務として『地域ビジネス起業マーケティング講座』第2回を実施いたしました。
当日は川上村に住んでいる協力隊員と集落支援員、合わせて10名の方にご参加いただき、経営をしていくために必要な事業計画やお金の話についてお話しさせていただきました。
前半戦:自分とビジネスを理解する
自らの原点を振り返る
まずは、裏プロフィール、5つの価値観、林業白書についてなど、前回講義の“振り返り“を行いました。
「なぜ自分は川上村にいるのか」
「自分にとっての好きはいつ頃から始まったのか」
といった情熱を問うような質問から始まった今回の研修。
「自分の好き×憤りはどこにあるのか」
という問いに対して、
「表現することが好きだから」
「社会に対する憤りはあまりないかもしれない」
など、改めて自分たちの原点を見つめ直すところからスタートしました。
事業を行う上で大切にしていく”想い”
続いて、自分が持つ想いを“ビジョン”や“ミッション”などに理念設計することについてのお話ししました。
ビジネスを立ち上げ、続けていくためには、一目で覚えてもらえるような社名、屋号やメッセージが必要です。
また、それだけでなく、「拠り所」「軸」となる”ビジョン”や”ミッション”などを明確にしておくことは、ビジネスをしていくうえで重要なことでもあります。
「メッセージにはリズムも必要 (5・7・5など)」
「メッセージがあるロゴを作るだけで、一目で何をしているかわかる」
コーポレートメッセージと屋号を考える上で重要なポイントを話した後に、実際に協力隊員の皆様にも考えていただきました。
10分間、真剣に黙々と考える協力隊員の皆さん。
「バイクで持ち運べる、原体験を。」
「暮らしにひとつ、無垢の木を。」
「グラフィックなこと、つみあげたい」
個性溢れるコーポレートメッセージや屋号がたくさん出てきました。
この機会に自分たちが伝えたいメッセージを考えることで、軸を明確にするとともに、自分の「好き」や「やりたいこと」を改めて明らかにすることができたかと思います。
自分たちが活躍する地域について知る
自分の中にある情熱がどこにあるかを明確化した後に、協力隊員がその情熱を実践する舞台である“川上村”についてのレクチャーに移りました。
「川上村にある吉野杉とは」
「川上宣言などの水源地の村づくりとは」
そんな川上村が持つ魅力を古川の視点から解説しましたが、協力隊員の皆様も知らないことがあり、事業を行っていく上での新たなヒントとして取り込んでいるようでした。
事業の『位置づけと役割』を可視化する
続いては、“商品サービスを作る考え方”と“4つの事業ポートフォリオ”についてお話ししました。
仕事を作っていくときには「これをやりたい」という妄想をした後に、「この形で動いていこう」と、具体的に事業を作っていく過程が必要です。
しかし、会社の中では事業を作ることがゴールではないことはご存知でしょうか。
実は、事業を作った後に商材・商売といった”商品に変えていき、売れる仕組みを作ること”がまず初めのゴールなのです。
その仕組みを作ることで、様々な事業が生まれていく第一歩になる、そのような“商品サービスを作る考え方”についてレクチャーさせていただきました。
こうやって事業化していくと、収益が十分出ている事業、楽しいけれど収益にはつながらない事業、始めたばかりでこれから育てていきたい事業、儲からないけど理念として継続していきたい事業…さまざま出てきます。
儲からないから辞める?収益が上げられるものだけに特化する?
赤字部門の製材を辞めて仕入販売だけにするか、住宅事業に特化するかなど、たとえば木材業界でもありますよね。
ちいきのビジネスフレーム“4つの事業ポートフォリオ”
主力事業、補助事業、開発事業、刺激事業
この4つに分けて整理することで、それぞれの事業の位置づけと役割が見えてきます。
また、ビジネスとしてのバランスも俯瞰して可視化され、方向性も検討しやすくなります。
協力隊の皆様にも自身のビジネス(構想)を分類していただきました。
やっていきたいことを明確にする第一歩となったのではないかと思います
“4つの事業ポートフォリオ”は、この日最も興味を持ってくださった方が多かったフレームの1つとなりました。
後半戦:社会の仕組みを知り、ビジネスに活かす
お昼休憩を挟み、午後の部からは”お金や制度に関するお話”をさせて頂きました。
ビジネスに不可欠な要素。お金、管理会計
事業を行っていく上でその存続を決めるのは、さまざまな経営力はもちろん、利益があるかないかが重要になってきます。
「利益をどのように出せば良いのか」
「出た利益を何に使うかは経営の肝」
「100円値下げしたら、利益を取り戻すのは6倍の売上が必要?」
など、管理会計に関するレクチャーを行いました。
切っても切り離せない、保険や年金、税金に関するお話
続いては“健康保険、年金、税金”についてです。
前述の通り、ビジネスをする場合は利益を出して継続していく必要があります。
そのため、会社であっても個人であっても必ず支払う必要がある健康保険、年金、税金などの支出は、切っても切り離せません。
経営者になった場合、個人事業主の場合、会社など組織に所属した場合、それぞれにおいて、健康保険、年金、税金などの仕組みはどうなっているのか。
会社が負担してくれるお金、自分で負担する必要があるお金、会社に所属しない場合、会社に所属していても経営者と従業員で違う補償…
イラストや図解を使い、例など示しながら、わかりやすくまとめて解説させていただきました。
起業であっても、就職であっても、はたまた無職でも?
ついて回る保険、年金、税金。
今後ビジネスをしていく際にも参考にしていただければと思います。
ブロックパズルで理解する、お金の仕組み
管理会計や保険/年金に関するお金の話は、数字が多いことで毛嫌いしてしまう人もいると思います。
今回は、”ブロックパズル”を用いて解説させていただきました。
「売上と経費(変動費、固定費)」
「粗利と最終利益」
「会社として支払う義務のあるお金」
「黒字の場合、赤字の場合」
これらをブロックの積み上げで図解し、わかりやすくレクチャーさせていただいたのですが、「お金の関係は難しいと思っていたけど、自分でもできるかも」というコメントをいただくことができました。
ぜひ、管理会計をビジネスの1つの武器にしてくださいね!
最後に~気持ちで負けない経営~
継続していくために必要な「はたらくよろこび」
最後に、”今まで仕事をしていて一番嬉しかったこと、辛かったこと”について、考える時間を作りました。
仕事をしていく中での嬉しかったこと、辛かったことというのは、仕事を続けるためのモチベーションに大きく関与しています。
「お客様に褒められた時が嬉しかった」
「会社の先輩に認められたことが嬉しかった」
皆様に発表していただき、ちいきのビジネスフレーム「はたらく6つのよろこび」に整理しました。
何が自分にとって働くよろこびなのか?何がつらいことなのか?
どちらも表裏一体の関係ですが、俯瞰してバランスを見ることで、強みがわかったり、時には対策を取ることができ、モチベーション持続、ビジネス継続のヒントになる、ということをお話しさせていただきました。
さいごに、宿題として今までレクチャーさせていただいてきたことをアウトプットするワークシートを配布しました。
次回は、川上村から飛び出て、弊社が経営する新大阪「ちいきのBar 峠」にて開催予定、上記最終課題を皆様にプレゼンしていただきます!
今回も、協力隊の皆様の中にある情熱を明らかにするところから、管理会計や事業ポートフォリオといった経営に関する内容まで、10:00~15:00の5時間を走り切ることができました。
皆様お疲れさまでした、ありがとうございました!
アンケート回答より抜粋
・管理会計の話がわかりやすくて印象に残った。
・4つの事業ポートフォリオを作成して明確にしたいと思います。
・自身の事業を整理して、利益の流れやバランスを確認します。
・自分の事業が将来的に(4つの事業ポートフォリオのうち)どの事業になるか考えていければと思いました
・マーケットがどこに存在して、そこにどのようなアクションを起こしていくか?考えるきっかけになった。
・林業における原価の考え方や作業道を事業化した時にどう見積もりを作るかを考える事に落とし込みたいと思いました。
・とても勉強になりました。ありがとうございました。
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ここでの学びや気づきが、少しでも皆様のお役に立ちましたら嬉しいです。
マーケティングはもちろん、財務や人材採用など広く経営に関してや、地域づくりや森林ビジョン策定の際の考え方や手法などについても、実践を元にした講演がご好評いただいています。
ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
文章:古川ちいきの総合研究所 インターン生 富岡 瑠加