コンビニの商品棚に注目!

 

この6月、コンビニエンスストア最大手のセブンイレブンの商品棚で、ある変化があったことにお気付きでしょうか?それは、紙パック飲料の裏面での出来事でした。お茶やジュース等プライベートブランド1000mlの紙パック全てに、森林認証PEFCのロゴが入ることとなったのです。他にも、「キリングループがすべての紙製の包装容器を2020年までにFSC認証紙に切り替え」の方針を示すなど、CSRを重視する世界的企業を中心として、森林認証紙の導入が徐々に広まりつつあります。市場を世界に土俵を置いた場合、「違法伐採が多発し過ぎている。」「自国の自然資源利用について法律的規則が厳しい」「エコグループ団体からの風当たりが強い」といったたような世界的企業は、マーケットアクセスプレミアム=“その市場に入るために最低限必要なチケット”として企業は認証制度に則った資源利用経営へ乗り出しています。つまりこの場合は森林認証材が市場の土俵に入るためのプレミアムとして寄与しているのです。

 

【プライベートブランド商品の裏面に注目!】

 

森林認証材利用が進まない問題

 

一方で、倫理的基準で商品を選ぶ「エシカル消費」について、一般消費者視点から見ると、その購買欲求につながる差別化要素としては、「美味しそう!」「かわいい!」「便利!」といった要素と比べて5番目か6番目と順位が下がるものでしょう。そこで今回は、「森林認証材利用が進まない問題」についてお話したいと思います。結論から言うと、

① 必要性がないから

② 費用対効果がないから

 

現場では、この2点の答えに尽きるのです。

 

森林面積シェアから認証林を読む

 

それでは、日本国内の森林認証を見てみましょう。輸出を除いて、「森林認証材利用が何故進まないか問題」解決の糸口は見つかるのでしょうか?現在、日本の森林面積のうち、森林認証林のシェアを見ると、

2015年は、約3~4%(FSC、SGECの認証林合計)

2016年は、約7~8%(FSC、SGECの認証林合計)

と、微増しており、FSC、SGECの認証林を合計すると、拠点シェア(3%)存在シェア(7%)をついに超えたところです。しかしながら市場への影響を生み出すと言われる影響シェアと言われるのは、11%。ここまで認証林を普及させるには、

 

①QCD(製造業の基本3要素)を遵守すること

 

②必要性、欲求性を満たす高付加価値商品を作ること

 

③シェアの理論で戦略を立てること

 

この3つが肝要となるのではないでしょうか。森林面積ではなく、認証材の製品シェアで戦略を立てる必要もありますね。これから何処までのシェア拡大を目指すのか、あるいは、マイノリティであり続けることで、差別化要因として森林認証を利用するのか。ここがポイントでしょう。森林認証制度は、行政主導で導入へと盛り上がり、結局のところ、審査を務める会社やコンサル会社が儲かっているだけではないかといった批判も見受けられます。

 

「認証」をニーズからウォンツへ

 

 

森林認証をどのように利用するか、この議論になれば、面白い。

 

一部の国では“それがなければ市場に参入できない”というビジネス上の厳しい法規制があれば、森林認証はマーケットアクセスプレミアムとして機能しますが、原則として既述の通り、「QCD(品質、価格、納期)の約束ができること」がなければ、そもそも話が始まりません。安定供給といった企業(事業体)の基礎力と言いますか。特に国内の場合は、QCDを満たすことで、森林認証であるか否かに関わらず、マーケットニーズプレミアム(市場に必要とされる差別化)を付けることができます。

 

このマーケットニーズプレミアムに続いて、BtoCビジネスにおいては、「その木材を使うことで、一般顧客にとって魅力を感じられる要因は何か」といった議論が進みます。特にBtoCビジネスにおいては「カッコいい」「かわいい」「美味しそう」「お得」といった欲求性が重要で、それができるとマーケットウォンツプレミアム(顧客にワクワク感を与える差別化)で付加価値が高まります。その流れがあってこそ、差別化の最後に、森林認証が倫理的消費や物語性といったマーケットストーリープレミアムとして森林認証が活躍します。

 

すなわち、使い手側に掛かっているのです。

 

①マーケットアクセスプレミアム(法律) →森林認証の土台

②マーケットニーズプレミアム(QCD)

③マーケットウォンツプレミアム(暮らしのデザイン)

④マーケットストーリープレミアム(倫理的消費)→森林認証の価値

 

 

やること、できること、まだまだ沢山ありますね。経営力の基盤づくりという視点から見て、本質的に認証を活用するには、各々の立ち位置からみた認証の価値を表す必要があります。例えば、規制や法律面からみると、「アクセスプレミアムにするにはどうしたらいいか」。BtoBの民間事業者視点でみると、「如何にしてニーズに対し安定的に応えるか」。BtoC企業からみると「一般消費者に対するウォンツをどう生み出すか」、消費者視点でみると、「倫理的消費にどのように参加するか」。これらに重きを置きながら、それぞれのプレーヤーが、それぞれの価値創造と将来に何を残していくかという本質的な豊かさの意義を見出していく必要があるのではないでしょうか。

 

 


 

代表取締役 | 代表コンサルタント 古川 大輔  Daisuke Furukawa

twitter: @daisukefurukawa

blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記

新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前支援、高野山・高野霊木プロデュース、経営実践研究会の実施等を行い、全国の林業木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山金剛峯寺境内案内人。

 


 

 

 

Posted by wpmaster on 月曜日 6月 26, 2017 Under pick up, ちいきのコラム, 未分類, 雑談
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